児童養護施設とは?職員・子どもたちの現状を知ろう!

児童養護施設

にし かすみ

離婚や経済的理由、虐待などにより保護者が養育できなくなった子どもが入所する『児童養護施設』。実際に施設で暮らす子どもたちはどのような生活をしているのでしょうか?施設の中だけではなく地域社会がその現状を知ることが大きな支援となります。子どもたちの日常と、職員や施設を取り巻く環境についてご紹介します。

児童養護施設とは?

児童養護施設は、児童福祉法によって定められた『児童福祉施設』です。保護者がいない児童や、疾病や経済的理由などにより保護者が養育するのが困難な児童、また虐待などの理由により保護者のもとで生活するのが適当でない児童が入所する施設です。

以前は『孤児院』と呼ばれていましたが、現在は親がいない孤児の割合は1割にもなりません。できるだけ家庭に近い環境で、生活・学習における指導を行い、児童の心身の成長と自立をサポートする機能を担っています。

児童養護施設の分類

児童養護施設には、その規模・形態により大舎制・中舎制・小舎制・グループホームに分類されます。

大舎制

1舎に20人以上の児童が生活をする施設です。1つの大きな建物の中に、リビングや洗面スペースといった必要な設備が配置されています。男女別・年齢別に児童の部屋があり、一部屋につき5〜8人が生活し、食事は広い食堂で皆が一緒にとります。

共同の施設の中で生活し、指導のプログラムなどを一括で管理しているため運営しやすいメリットがあります。一方で、規模が大きいため家庭的な空間・関係を築くのが難しい、一人一人のプライバシーの確保に問題があるなどのデメリットもあります。

中舎制

1舎に13〜19人の児童が生活をする施設です。大きな建物の中を区切って小さな生活空間をいくつか作り、それぞれに必要な設備が配置されています。

小舎制

1舎に12人までの児童が生活をする施設です。大舎制・中舎制と同様に、大きな建物の中を区切って小規模な生活空間を作っている場合と、敷地内にいくつかの独立した建物がある場合があります。

どちらもそれぞれに必要な設備が配置されています。十分な職員配置が困難になるなどのデメリットもありますが、小さな集団で生活をするためより家庭的な環境で児童を養育できるメリットもあります。

ユニットケア(小規模グループケア)

2004年に制度化された、原則として定員6人の施設です。小舎制に含まれますが、より家庭に近い環境で、職員との個別的な関係の構築を重視しより細やかなケアを行うことを目的としたものです。マンションや団地のようなスタイルをとります。

グループホーム(地域小規模児童養護施設)

2000年から制度化された、原則として定員6人の施設です。本来の児童養護施設からは離れ、地域の中で地域の居住施設を用いて生活をします。

より家庭に近い環境でケアを行うとともに、自立した生活力を高めるサポートを行います。地域との密接な関係を築き社会体験ができるなどのメリットもあります。

児童養護施設の運営

施設形態のありかた

現状としては前述の大舎制をとる施設が大半を占めていますが、家庭的な環境の提供と一人一人に合った細かなケアを行うため、施設の小規模化と地域分散化が推進されています。それに伴い、必要な人員の確保・育成機会の充実が必要とされています。

運営にかかる資金

施設の定員・配置する職員の種類をはじめ、児童の年齢・人数に応じた生活費・生活費以外の事業費、採暖費、修学旅行などの学校行事に必要な見学旅行費、補習費、就職支度費などが細かく定められています。

児童養護施設には、どんな子が入所するの?

入所理由

入所する児童の入所理由は時代とともに変化し、また複雑化・重層化しています。様々な背景要因や生活環境が絡み合い、その理由が本人の心身の発達にも影響を及ぼしている場合が多く、専門的なケアを必要とする児童が急増しています。

入所理由の例としては、

  • 父母との死別や行方不明
  • 父母などの保護者に遺棄された
  • 保護者からの虐待を受けた
  • 保護者の虐待歴によりその保護者のもとで生活することが適当でないと判断された
  • 保護者の疾病や入院、災害、事故、経済的状況などにより養育が困難
  • 保護者同士の不仲や離婚、養育能力の欠如

などが挙げられます。

何歳から何歳まで入所できる?

児童福祉法では、おおむね2歳から18歳までの幼児・少年少女が入所し、事情によっては20歳まで延長できるとされています。

1歳未満の乳児に関してはまず乳児院に入所するのが通常となります。これに加え、2016年3月に閣議決定された法律案において、被虐待児に対する自立支援の強化のため大学就学中の入所者について22歳の年度末まで支援を受けることができると新たに盛り込まれました。

児童養護施設の現状

在所者数

厚生労働省による『児童養護施設入所児童等調査』によると、2013年2月1日現在、入所している児童は29,979人です。平均年齢は11.2歳であり、学齢期にあたる10代の割合が高くなっています。

また入所時点での平均年齢は6.2歳です。男女比はほぼ同等ですが、男子のほうがやや多くなっています。

在所期間

同調査によると、児童養護施設の平均在所期間は4.9年となっており、1年未満の割合が15.4%ともっとも高くなっています。

児童養護施設の子どもたちの生活

ごはんはどうしているの?

食事メニュー

基本的に児童養護施設を含む児童福祉施設には、発達段階・年齢に応じた栄養バランスに配慮した食事メニューを考案するために管理栄養士・栄養士が配置されています。

あらかじめ考案されたメニューにそって厨房のスタッフが調理します。施設によっては管理栄養士・栄養士の配置がされていなかったり、調理職員の勤務形態の関係により朝食はその他のスタッフが調理したり、提供状況に差があるのも現状です。

食事を楽しむための関係形成

食事はただ単に栄養をとるだけではなく、職員と児童、児童と児童のコミュニケーションの場としても非常に重要です。

人と一緒に食事をとることを楽しむ気持ちを育てる貴重な時間となります。また、基本的な食習慣が形成される大切な場でもあり、食事器具の使い方や姿勢などのマナーも必要に応じて指導していきます。

配慮が必要な児童の食事

体調不良の児童や食物アレルギーのある児童、嚥下機能などに障害を持つ児童に対しては、嘱託医やかかりつけ医とも連携・協力し、メニュー・調理方法の工夫を行います。

年齢や生活リズムにも対応し、部活などで帰宅が遅くなる学齢期の児童に対しても、温かいご飯を温かく食べられるよう提供時間・形態を個別に対応しています。

学習に関すること

児童養護施設に入所してくる児童は、不安定な家庭・居住環境の中生活し、学習環境が十分に確保されていなかった子どもが多くいます。

また入所までの保護の段階では学校に通うことができず、入所時点ですでに学習面において大きなハンデを抱えているのが現状です。

施設の職員が、食事などの生活面とともに宿題などの学習面も支援するのが基本ではありますが、職員配置が追いついていない施設も多くあり、生活面の支援で手一杯で学習面の支援が十分でない施設もあります。

これを解消するためにボランティアの募集を行うなどの対策をとっている場合もあります。資金面では、塾に通う場合や進学にかかる資金として『補習費』が設けられています。学習・進学の選択肢を狭めてしまわないような仕組みの構築がすすめられています。

その他行事や地域との関わり

地域との関わり

児童は施設の中だけで生活するのではなく、地域の学校に通い、地域のお店や商業施設を利用するなど、地域の中で生活しています。

地域社会の児童養護施設や入所児童への理解を深め、相互に生きやすい環境を目指すため、地域に開かれた施設であることが求められます。

地域のボランティア活動やお祭りなどの行事への参加を支援するほか、施設が地域の町内会や子ども会などと連絡をとり、施設の行事に地域の方々を招待するなどの関わりを推進しています。

施設内の行事

施設の中でも、入所児童・職員との交流の機会として年中行事が設けられています。入園・入学式などの年度の節目の行事や、七夕や運動会、クリスマス会など季節ごとの行事を行う施設も多くあります。

いじめの実際

特に大舎制などのように多くの児童が同じ部屋で生活している環境においては、入所児童間のいじめが行われることがしばしばあります。

宿直や夜勤などで職員が常に施設にいますが、手薄になる夜間の時間帯に発生することが多いとされています。力の強い児童が年齢や体格が下の児童にいじわるをするその背景には、入所までの生活で自己の存在を否定された、十分な愛情を感じられなかったなどの過去があります。

信頼できる人が周りにおらず孤独を感じて生きてきた子どもたちにとって、なんとかして大人や他の子どもに振り向いてもたいたい、存在を認めてもらいたいという願望がいじめという形で出てきてしまうこともあるのです。

そのためいじめそのものへの対処ももちろんですが、児童ひとりひとりの背景を理解し、信頼関係を築き心身のケアを丁寧に行なっていく必要があります。

児童養護施設の職員

配置される職員の種類

児童福祉施設に配置される主な職種には以下のものがあります。

  • 医師
  • 嘱託医(常勤でない場合が多い)
  • 看護師
  • 管理栄養士、栄養士
  • 調理員
  • 保育士
  • 児童指導員
  • 個別対応職員
  • 心理療法担当職員
  • 家庭支援専門相談員

この中でも、『児童指導員』と『個別対応職員』についてご紹介します。

児童指導員

食事や入浴、通学支援など日常生活における支援全般を行います。日々の学習支援や進学・就職相談はもちろんのこと、入所までの経験から適切な自己表現が難しい児童や他者と上手く関わることができない児童と信頼関係を築き、心身のケアを行います。家庭における『親』となる存在です。

個別対応職員

入所前に被虐待経験があったり、十分な愛情を感じられずに育ったりと複雑な背景や心の傷を抱えた児童に対する個別的なケアを行う職員です。主に心理面のケアが必要な児童がいる施設に配置されます。

業務内容

朝食を準備し、子どもたちを起こすところから職員の1日は始まります。食事の配膳・片付けを一緒に行い、通学の準備・送り出しと、まさしく親代わりの役割です。

子どもたちがいない時間帯に日報を作成したり掃除をしたり、学校で必要なものを作る・買うなどの業務も生じます。
子どもたちが帰宅すれば、翌日の予定・準備物の確認を一緒に行い、おやつを出したり宿題を教えたりします。

帰宅時間に合わせ夕食を整え、入浴・就寝まで支援します。24時間同じ職員が毎日勤務するわけにはいかないので、入れ替わりの際の引き継ぎも重要です。日々変化する心身の状態を共有し、適切なケアができるようにします。

給料などの待遇

4年制大学卒、専門学校卒などの経歴によって多少異なりますが、月収18〜24万円が平均的と言われ、業務の負担を考えると手厚いとは言えないのが現状です。

基本給のほかに通勤手当・扶養手当・住居手当などの各種手当があるほか、雇用保険や健康保険といった社会保険には基本的に入ることができます。施設によっては退職金制度があることもあります。

夜間を含み拘束時間が特殊であることや、急な準備物や児童同士のトラブルが生じれば定時で帰れないことも多くあり、家庭との両立は難しいと考える人が多くいます。

ただ施設によって仕組みが様々なので、一概に働きやすさを測ることはできかねます。また背景が複雑な児童と日々関わることは大きなストレスともなります。職員が一人で抱え込まないよう、チームで情報共有・サポートをしていく環境が必要です。

ボランティアや実習生の受け入れ

配置されている職員だけでは生活・学習面において十分に支援しきれていない施設も多くあり、ボランティアの受け入れがすすめられています。

無資格でも応募可能なことがほとんどで、簡単な宿題の手伝いや、幼児と遊びを通して関わるボランティアもあります。また、保育士や社会福祉士の資格取得を目指す学生の実習の受け入れ先ともなっています。

職員と同じように生活の支援をしたり児童と遊んだりすることで児童養護施設の実態や働き方を学びます。

子どもたちの未来

入所した子どもの引き取り

入所中の子どもを引き取りたいという場合には、まず親権を取得していることが条件となります。その上で児童相談所との交渉になり、面会・外出・外泊での交流と段階を踏んで関係を築き協議していくことになります。

子ども自身の意思も尊重されます。また、引き取って子どもを適切に養育する能力があるかが問われます。強い意思で引き取ったものの、生活が苦しく再度虐待に繋がってしまう例もあります。子にとっても親にとっても、幸せな生活を営める環境を時間をかけて築いていく必要があります。

施設からの卒業、その後

高校卒業または大学進学と同時に一人暮らしをはじめる児童が多くいます。経済的な問題や生活スキルの低さから、やりくりに苦労する児童も多くいます。

それ以上に、心の支えであった存在から切り離されるのは、恐怖ともなりえます。そのため、施設からのアフターケアが非常に重要です。

相談支援が主になり、児童養護施設の職員が実施する場合もありますが、手が回らない施設も多くあるため、民間事業によりサポートが実施されている地域もあります。

また、就職を希望する児童に対し、分園型自活訓練事業など、施設から離れた場所で生活しながら、社会人として自立して生きていくために必要な生活スキル・社会スキルを身につけるための支援も行われています。

児童養護施設の今とこれから

児童養護施設を必要とする子どもたちは慢性的に存在し、生活の大半を過ごす環境として施設の設備・職員・地域のサポートの充実が求められています。

だれもが「生まれてきてよかった」と思えるよう、愛情をもって知り、関わっていく必要があります。施設にいるからといって今とこれからの可能性を制限されることがないよう、周囲が働きかけ、地域で養育していける環境を整えていきましょう。

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