【医師監修】りんご病の感染経路や症状は?治療方法やかかってしまった場合に注意するべきこと

ほっぺたが赤くなって完熟りんごのようになってしまうことが特徴のりんご病ですが、子供たちはいったいどこからこの病気をもらってくるのでしょうか。ここでは、よく知られているりんご病の症状だけではなく、りんご病の原因や感染経路についても説明していきます。

りんご病とはどんな病気なの?


りんご病は通称で、本来の病名は、「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」といいます。パルボウイルスB19というウイルスによる感染症です。

パルボウイルスというのは、パルボウイルス科に属するウイルスです。このパルボウイルスは種類ごとに特定の動物とのつながりが深く、頭に感染する動物の名前がついていることが多いです。

イヌやオオカミが感染する種類のものは「犬パルボウイルス」、牛だけが感染するウイルスは「牛パルボウイルス」という名前で呼ばれます。

その中でもヒトにしか感染しないのが、パルボウィルスB19で通称「ヒトパルボウイルス」と呼ばれるウイルスが病気の原因となっています。

りんご病の症状は?

見た目

ほっぺたがりんごのように赤くなります。りんご病の名前の由来の通りです。顔の中でもほっぺたから眉の下くらいの広範囲で赤くなることがありますが、額まで赤くなることは、めったにないです。

他には、太ももや腕などの皮膚に、赤いレース網状の皮疹がでてくることもあります。

発疹や紅斑は、大きなぶつぶつより、ざらざらした硬いものに皮膚を押し付けていたらついてしまった跡や、りんごの皮の表面の色合いを想像したほうがしっくりくるかもしれません。

発症から数日すると、皮膚の赤い発疹は、ストーブにあたりすぎた時のような、赤い網目状の模様に変わってきます。

そして、赤い色や発疹は痕を残すことなくなくなります。この発疹はかゆみを伴うこともあります。

その他の症状

子供の場合発疹以外の症状はほどんどなく、全身状態も良く熱などが出ることも少ないです。発疹が出現する7−10日前に咳や鼻水がでるなどという風邪の用な症状が出ることもおよそ半数の人にあります。

大人が感染した場合は、発熱、手関節や膝の関節痛、筋肉痛、倦怠感などの症状が出てくることがあります。ただ中には不顕性感染といって、感染していても何も症状がでない方もい ます。

合併症

合併症のリスクはきわめて低いとされていますが、、注意をしなければいけない方たちがいま す。もともと溶血性貧血と診断されている人、妊娠を望んでいるもしくは妊娠中の人、白血 病や癌などで免疫状態が著しく低い人です。

もともと遺伝性球状赤血球症のような溶血性貧血と診断されている人がリンゴ病にかかると 貧血が急速に進む可能性があるため、もし接触が疑われる場合は主治医にすぐに相談すると 良いでしょう。

免疫不全や白血病などの病気があってりんご病になると、ウィルスが体に残り持続感染を引 き起こし重篤な貧血を起こしうるので注意が必要です。

妊娠を望んでいる人、もしくは妊娠中の人は、妊娠初期にリンゴ病にかかると胎盤を介して ウィルスが赤ちゃんに移行します。

そうすると胎児にむくみが生じたり、心不全を起こしたり、貧血を起こすことがおよそ2割くらいの子に起こります。

すると流産や死産を起こしたり、無事に生まれたとしても生後すぐに治療を開始しないといけない状態になることもあります。

日本人の妊婦さんの半数以上がリンゴ病の抗体をもっていないというデータもあるので、妊活中、もしくは妊娠初期は感染をしないよう注意が必要です。

ただ妊娠後期に感染した場合は前述したような症状が赤ちゃんにでにくいとされています。

りんご病の感染経路と潜伏期間、流行

感染経路

感染経路は主に「飛沫感染」と「母子感染」の2つです。飛沫感染は、病気にかかっている人が咳やくしゃみなどで吐き出したウイルスが、それを吸い込んだ人の粘膜に付着することで感染します。そのウィルスがついている唾液を介しても 感染します。

りんご病の場合、感染力が弱いのと、ウィルスが多く排泄されている風邪症状が先行し目に見える症状(発疹)が出たときには、その風邪がリンゴ病の原因であるパルボウィルスが原因であったと気づくのが難しいため、予防するのが難しいと考えられます。

母子感染は、妊婦が感染した時に胎児に感染してしまうことです。この場合、妊婦となったお母さんが気をつけなければなりません。

子供のころに一度かかったことのある人のほとんどが免疫を持っていると考えられていますので、かかったことがあれば一般的にはかかりにくいとされていますが、自分がかかったかどうかわからない方が多くいらっしゃいます。

ブライダルチェックなどで妊娠を望む前に検 査をして抗体の有無を確認するか、妊娠初期には風邪症状のある人となるべく接しないようにし手洗いうがいを励行し気をつけることです。

潜伏期間

7日から10日の潜伏期間があるとされています。りんご病は潜伏期間のほうが発症した後よりも、感染力が強いです。

流行

日本ではだいたい、5年周期で流行するといわれています。ニュースなどで、今年は流行の兆し、などとアナウンスしている場合もありますので、そのような年は注意したほうがいいでしょう。春に流行することが多いですが、年間通じて感染する可能性はあります。

りんご病の治療方法

続いて、りんご病の治療方法です。りんご病はウィルス感染症であり自分の中で免疫を作り自然に治る病気のため、りんご病のための治療薬というものはありません。

潜伏期間1週間を経て、発疹などの症状が出てから1週間くらいで自然に回復していきます。病院で薬を処方される場合は、りんご病を治療する薬ではなく、リンゴ病によって出てきた症状にあわせたものになります。

例えば、かゆみがひどい場合には、抗ヒスタミン薬と呼ばれるかゆみ止めの飲み薬や塗り薬が出されます。

これはりんご病によって起こるかゆみを抑える薬です。また、大人などがかかった際に、発熱や関節痛を伴う場合があります。

こちらの場合は関節痛や頭痛に対して鎮痛剤が処方されたり、必要に応じて解熱剤が処方されたりすることがあります。

りんご病の予防方法

実は特別な予防方法はとくにありません。飛沫感染を受けないために、日ごろからマスクなどを使うようにしたり、うがいや手洗いをきちんとすることで感染リスクが下がります。主に幼稚園や保育園、小学校で集団感染が起こります。

そのため上の子が知らないうちに感染していることがあるので、妊娠中は子供との食器の共有、飲み物の共有は避けた方が良いでしょう。

なお、ヒトパルボウイルスに関してはワクチンが存在していないため、予防接種をすることはできません。

りんご病の時に気をつけること

次はりんご病のときに気をつけることです。基本的には、かゆいからといって、ひっかいてしまって傷を作らないようにすることが大切です。

また保冷剤などで冷やしてあげるとかゆみが収まることがあります。

生活

りんご病は、学校感染症第三種に分類されている病気です。しかし、ほっぺたが赤くなったり、皮膚が赤くなっている状況で、は感染力は低く、子供が元気であれば保育園、幼稚園への登園やお出かけは可能です。周囲にうつす心配はありません。

しかし子供がだるい、疲れやすい、かゆみがひどい、熱を出したなどの場合は、無理をせずお休みするほうがいいでしょう。そしてもう一度、病院に連れて行きましょう。

食べ物

普通の食事で問題ありません。子供の食欲に合わせて、普段どおりの食事を食べさせることができます。

運動

運動をすることによって症状が悪化することはありません。普通に運動をすることはできます。ただし、運動をすることによって、体温が上がったり、汗をかいたり、日光に長く当たったりすると、かゆみが強くなったり、赤みが長引いたりする原因となります。

汗をかいた場合は、汗を拭き、服を着替えるようにしましょう。また、プールなど、水に入ることによって感染することはありませんので、プールに入ることも可能です。

お風呂

りんご病の間も、お風呂に入ることはできます。水中での感染はありませんので、シャワーだけではなく、家族と同じ浴槽につかることも可能です。また、公共浴場などの利用も制限はされていません。

特に浴槽につかる場合は、体を温めすぎると、赤みが強くなったり、かゆみが強くなったりします。そのため、長時間お風呂に入ることはおすすめできません。シャンプーなどを利用する場合は、刺激が強いものを利用するとかゆみが強くなることがありますので注意しましょう。

りんご病と間違えられやすい病気

次はりんご病と間違えられやすい病気についてご紹介します。りんご病だと思っていたら実は違う病気だった、ということがまれにあるようです。間違えられやすい病気と、どのようなところが似ているのかをあわせてご説明します。

麻疹

まずは麻疹(はしか)です。はしかとりんご病の共通点、まずは初期症状です。くしゃみや鼻水など、風邪の諸症状にも似たものが最初にあらわれます。また、発疹が顔から全体に出てくるようになります。

違う点はリンゴ病は熱はほとんど出ませんが、はしかは高熱が出て、肺炎などの合併症を引き起こしやすい点です。また、麻疹でできた発疹は、色素沈着をすることが多い点も異なっています。リンゴ病の発 疹は痕をのこしません。

はしかはワクチンの予防接種を受けると、免疫ができて一生かからないと言われています。かかってしまうと症状が大変重く、肺炎以外にも、気管支炎、脳炎、中耳炎などの合併症を起こす危険性があります。1歳と年長さんになったら、早めにワクチンの接種を受けるようにしましょう。

風疹

「三日ばしか」とも呼ばれる風疹です。はしかに症状が似ているので、はしかとりんご病の共通点とも類似しています。風疹では、発疹が全身にあらわれます。発疹の色や形がりんご病の皮膚に現れる症状と大変よく似ています。

また、風疹でできた発疹は、りんご病同様に、引っかいたりしなければ、残ることなくきれいに消えてしまいます。

違う点は、発疹と高熱が同時に起こる点です。りんご病では高熱が出ることはほとんどありません。症状がはしかに似ている病気ですが、発疹も熱も三日ほどでおさまります。また風疹の場合 リンパ節が腫れることがあります。

妊婦がかかった場合は、子供が先天性風疹症候群になってしまうことがありますので注意しましょう。風疹ワクチンは通常麻しんワクチンと混合ワクチンになっていますので、はしかと同様予防接種を受けるのが有効な予防法です。

エンテロウィルスによる発疹症

エンテロウィルスは手足口病の原因になることがあるウイルスです。全身に赤い発疹ができる部分は似ています。エンテロウィルスでできる発疹は形がまちまちなので、りんご病のように赤い網目模様のようなものが全身にできたりすることがあります。

似たような形の発疹の場合は区別が難しいですが、違う場合も多くあります。まず、発疹が蕁麻疹のようなものだったり、水泡のような大きなものの場合は、おそらくりんご病とは間違えられないでしょう。りんご病の発疹が水泡のように、大きく盛り上がったものになることは少ないためです。

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデスは、特定疾患の難病に指定されている病気です。りんご病と症状の似ている点は顔の、特にほっぺたがとても赤くなることが多いところです。この頬を中心に赤くなる症状は「蝶形紅斑」と呼ばれています。

りんご病と違う点は、好発年齢と性差、またエリトマトーデス では発疹だけでなく日光過敏や脱毛、関節炎や腎臓の障害、神経や心臓肺など他の臓器に症状が見られる点です。 全身性エリトマトーデスの場合、好発年齢は15-40歳であり、ほぼ女性に発症します。

リンゴ病は幼児期に多く見られ、男女問わず見られます。全身性エリトマトーデスでは全身の様々な臓器に症状がでることがあります。経過が明らかに異なるため、顔の発疹以外に共通点はありません。

感染が疑われるときは病院へ行って診察してもらいましょう

りんご病は幼少期の集団生活で感染しやすい病気です。りんご病に感染したときの症状は、りんごのような真っ赤なほっぺたと、皮膚にできる赤いまだらな、時にかゆみをともなう発疹です。

りんご病になってしまっても、熱を出すことは少なく子供は元気なので、日常生活には特に影響はありません。発疹をかゆがるときは冷やしてあげましょう。

発疹が出ている時点では感染力が低く保育園や幼稚園に登園することも可能ですし、いつの間にか治ってしまうことが多いです。

ただ他の病気の可能性もあるため、感染が疑われるときは病院へ行って、本当にりんご病なのかどうか、診察してもらいましょう。 妊活中の方、妊娠初期の方がリンゴ病にかかってしまうと流産や死産などを引き起こす可能性があります。

ウィルスが多く排泄されているリンゴ病の潜伏期は、風邪症状と同じで一般 的な風邪との区別がつかないため、妊娠中は手洗いうがいを励行し、子供たちと接する機会 があるときは食器や飲み物の共有をしないように気をつけましょう。

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