【医師監修】幼児がかかりやすい急性胃腸炎の原因とは?ロタウイルス感染症の特徴と対策を知ろう!

ロタウイルス

大井美恵子 先生

おなかが痛い、下痢がとまらない、子供のそんな症状が続いていると、大変心配になります。もしかしたらそれは、子供が急性胃腸炎にかかってしまっているからかもしれません。
急性胃腸炎の原因のひとつロタウイルス感染症の特徴と対策についてお伝えいたします。

ロタウイルス感染症について

赤ちゃんや小さい子供たちがかかりやすいとされているロタウイルス感染症と、それに伴って起こる急性胃腸炎、そもそもの原因はいったい何なのでしょうか。
そして、感染症の症状はいったいどのようなものなのでしょうか。
まず、基本的に知っておきたいロタウイルス感染症の原因と症状について解説します。

ロタウイルスとは?

ロタウイルスはレオウイルス科ロタウイルス属に分類されるウイルスの一種です。
ロタウイルスは感染力が強く、ウイルスのついている水や食べ物を触ったりした手で食事をしたりすると、ウイルスが口から入り感染することが多いとされています。
感染した人の便1グラムの中には1000億から1兆個ものロタウイルスが含まれているとされていて、感染した人の便や、周辺のものにウイルスがついてしまうことがあるので注意が必要です。
衛生状態が悪い国での感染が多いと言われています。
しかし、ウイルス粒子10~100個が体内に入っただけで感染してしまうくらい感染力が強いため、衛生状態のよい国でも、ウイルスが生息している場合は予防が難しいといわれています。

ロタウイルス感染症の症状

次はロタウイルスに感染したときの症状についてです。
下痢、嘔吐、発熱、腹痛と、胃腸炎ならではの症状が主になります。
それではひとつずつご説明していきます。

下痢
胃腸炎なので下痢を伴うことが多いです。
しかし、便に血液が混ざる血便や粘血便のような便が出ることはほとんどありません。
逆に暗い色の少ない、白っぽい便が出ることが特徴です。
下痢なので水っぽい場合もありますが、粘土のように形が残る場合もあります。
においはすっぱい臭いになることが多いようです。
下痢は症状が落ち着くまで長く続きます。
しかし、下痢止めを使うのは逆効果です。
なぜなら、体からウイルスが出て行くのを阻害してしまい、治るのが遅くなるためです。

嘔吐
嘔吐は突然始まります。
たいていのロタウイルス感染症はこの嘔吐から始まります。
仮に下痢のほうが先に起きていて、ロタウイルスだと診断された場合、その時点で嘔吐がなくても注意する必要があります。
吐いてしまったものを、誤って飲み込まないように注意しましょう。
また、吐いてしまったものを処理している人も感染しやすくなります。
吐しゃ物にもロタウイルスがついているので、汚れはしっかりと洗い流し、処分する汚れ物は、袋に入れてふたをしっかり閉めてください。
そうすることでウイルスの拡散を防ぐことにつながります。

発熱
38度を超える高熱が出る場合が多いです。
感染症の期間中ずっと高熱が続くとは限らず、2日程度で下がる場合がほとんどです。
しかし、乳幼児期の高熱は脳炎につながることもあります。
容態が悪化しているようであれば、病院へ連れて行きましょう。
点滴や注射などの処置を受ける場合と、飲み薬や座薬などが出される場合があります。
嘔吐がひどい場合は座薬、下痢がひどい場合は座薬のように、状態によって使い分けられます。

腹痛
一度腹痛が起きるとしばらく痛むことがほとんどです。
病院から鎮痛剤が出る場合もありますが、解熱剤などを使っている場合は飲み合わせがあるので出ないことがあります。
その代わり、整腸剤などで腸の環境を整えることで改善を待つことが可能です。

脱水症状
脱水症状はロタウイルスが直接原因になるわけではありません。
ウイルスに感染した影響で起こっている嘔吐や下痢で、体からたくさんの水分がなくなっていくことで引き起こされることが多いです。
水が飲める状態であれば、経口補助液やスポーツドリンクで水分を補うようにして対策を行う必要があります。
スプーン一杯ずつでもかまわないので、こまめに水分補給をするようにしましょう。
口から水分を補給できない場合は、病院に連れて行き、点滴で対処してもらう必要があるでしょう。

ロタウイルス感染症の感染経路

ロタウイルス感染症の感染経路のほとんどが糞口感染で、まれに空気感染が疑われることもあります。
糞口感染は、感染した人の便についたウイルスが、別の形で口に入ってしまうと起こります。例えば、感染した子供が手を洗う前に触ったトイレのノブや、水道の蛇口などに触って、そのウイルスが手についた状態になってしまい、その状態のまま食べ物に触れてしまったりすると起こります。
手洗いを充分にして、しっかり洗い流したつもりでも、少しでもウイルスが残っていると感染力が強いのでかかってしまいます。
また、アルコール消毒に効果がないので、アルコール消毒をしたからと油断してはいけません。

ロタウイルス感染症の潜伏期間

ロタウイルスの潜伏期間は1日から3日間と言われています。
潜伏期間が短く、感染するとすぐ症状が出るのがポイントです。
しかし、体調が改善しても、免疫ができにくいため再度感染する可能性があります。
家族で感染する人が出てきたら注意しましょう。

ロタウイルス感染症の合併症

ロタウイルス感染症を発症した場合に起こりうる合併症についてご説明します。
合併症の中には重いものもたくさんありますので、重症化する前に病院で処置をしてもらう必要があります。

脱水
ロタウイルス感染症で一番気をつけなければいけないのが脱水です。
脱水症状は他のさまざまな病気を引き起こす原因になります。
下痢や嘔吐は水だけではなく塩分なども体からなくなってしまうので、経口補助液やスポーツドリンクを積極的にとる必要があります。
ロタウイルス感染症で一番気をつけな
嘔吐がひどい場合は口から摂取できないので、病院で点滴などを受ける必要があります。
水だけを与えてしまうと、水中毒になる危険性もありますので、注意しましょう。

腎前性腎不全
腎前性腎不全は脱水症状によって引き起こされる病気です。
腎臓自体の機能には問題はありませんが、血圧が急に下がって、心筋梗塞や、ショック死などを起こす危険性があります。

高尿酸血症
肥満になったり、プリン体を多くとるとなってしまう、生活習慣病として有名な病気です。
血液の中の尿酸の濃度が高くなってしまう病気です。
痛風の原因になる病気としても知られています。
痛風は、脱水症状によって尿酸値が高くなると、尿酸塩として結晶になって関節にくっついてしまい、痛みが出るようになります。
痛風以外にも更なる合併症につながるため、生活習慣の改善が求められる場合があります。

尿酸結石、腎後性腎不全
尿酸結石による腎後性腎不全を発症することがあります。
この結石は、酸性尿酸アンモニウム結石という、尿酸とアンモニウムが結合した結晶です。
ロタウイルスに感染して脱水症状になると、尿の中のアンモニアが増えたり、尿酸値が高くなるため、それらが結合しやすい状況になってしまうのが原因です。
結晶ができた結果、尿の通り道がふさがれて、尿が出なくなる、腎後性腎不全という病気になるのです。

ロタウイルス脳炎・脳症
ロタウイルスが原因の高熱が出ることによって脳炎や脳症を引き起こすことがあります。
特に小脳に症状が出て、後遺症が残ってしまう例が、近年増えています。
ちなみに、脳症になるリスクは女児より男児のほうが4倍近く多いと言われています。

赤ちゃんはロタウイルスにかかりやすい

ロタウイルスは世界中の子供が感染している病気です。
生後6カ月から2歳くらいまでが一番多くかかるとされています。
赤ちゃんのうちは、自分で症状を訴えることが難しいため、保護者が注意してみている必要があります。

ロタウイルス感染症の治療法

ロタウイルス感染症にかかった際に、入院になれば病院で処置が行われますが、家で様子を見てくださいという判断になる場合もあります。
家で過ごす場合も、病院に入院することになっても、不安は尽きないと思います。
ここでは、ロタウイルス感染症の治療法や注意点をご説明いたします。

疑わしい症状が出たらまずは病院へ

ロタウイルス感染症は、重症化すると重い後遺症が残ったり、症状がひどければ最悪な場合は亡くなったりすることがあります。日本は多くの医療機関が対応してくれるので、きちんと見てもらえば大事に至ることはまれです。病院では便を検査する診断法が用いられ、本当にロタウイルスが原因なのかを確認してから処置を行います。

治療の方法は?

症状が出ている間、脱水症状を起こさないようにしたり、栄養失調にならないよう、栄養を取りながら回復を待つことになります。
口からものが食べられない場合は点滴を受けるなど、医療機関で治療してもらう必要があります。自宅で対応できない場合は数日、入院になることもあります。

薬はあるの?

ロタウイルスに直接効果のある治療薬はありません。
治療薬に関しては、臨床段階で研究しているところはありますが、日本で使用が認められている薬はないというのが正しいかもしれません。
熱を下げるために解熱剤を利用したり、嘔吐がひどい場合に薬が処方されたりすることはあります。逆に回復が遅くなるので、下痢止めなどは使わないように気をつけましょう。

食事の注意

嘔吐しているときに無理に飲食をさせると、かえって危険です。
数時間様子を見て、少しずつ口に入れるようにしてください。
最初は経口保水液を薄めたものなどからはじめるといいでしょう。
食べ物や食器にウイルスがついている状態だと、本人だけではなく、家族もウイルスを口に入れてしまうことになります。
吐しゃ物にもウイルスは付着していますので、食べてすぐ吐き出してしまった場合は、食器を洗浄し、そこに入っていた飲み物や食べ物も処分する必要があります。
また、貝や井戸水にいるウイルスなので、このようなものを口に入れると、症状が改善しない可能性があります。

ロタウイルス感染症の予防接種

ロタウイルス感染症は、予防接種をすることが推奨されています。
世界中、どこにいてもかかる可能性のある病気ですから、もしかかってしまっても軽症ですむよう、早めの摂取が大切です。
ここでは、ロタウイルスワクチンと、ワクチンの種類や費用についてご説明します。

ロタウイルスワクチンとは

ロタウイルスワクチンとは、ロタウイルスの感染を予防するためのワクチンです。
予防のワクチンなので、感染してから摂取して、治療に使うというものではありません。
乳幼児が感染すると重症になりやすいため、世界保健機構でも、各国での予防接種を推奨しています。

ロタウイルスワクチンの費用は?

日本では主に2種類のワクチンが利用されます。
「ロタリックス(Rotarix)」「ロタテック(RotaTeq)」です。
ロタリックスは1回あたりだいたい10000円、ロタテックは1回あたりだいたい5800円になります。ほとんどが注射ではなく、飲むことで摂取するワクチンとなっています。

ロタウイルスワクチンの効果

過去に使われていたワクチンでは、腸重積症のリスクの高いものが利用されていましたが、
現在は違うワクチンが利用されています。
ワクチンを接種すると、免疫ができるため、流行時に感染しなかったり、感染しても軽症ですむことが多いとされています。
ワクチンを摂取することで、重い下痢や脱水症状によって亡くなる乳幼児が減っているとされています。

ロタウイルスの予防接種後どうなるの?

ロタウイルスの予防接種を行った後は、インフルエンザのワクチン接種と同様に、軽いロタウイルス感染症の状態になります。
そのため、摂取してから1週間程度、便からロタウイルスが出てくるようになります。
予防接種のときに使われるワクチンのウイルスは感染力が低いものですが、便などを処理している人が、ロタウイルスに感染しないよう、処理した人も手洗いなどを徹底する必要があります。
また、反応が強く出てしまった子供は嘔吐する場合があります。
その場合も、感染したときと同じように処理するのが望ましいでしょう。
予防接種で嘔吐をした場合や、下痢がひどい場合には、予防接種を受けた医療機関に相談してください。

ロタウイルスとノロウイルスとの違い

ここでは、ロタウイルスとノロウイルスとの違いについて説明します。
名前も症状も似ていますが、実は違うところもたくさんありますので比較していきます。

ノロウイルスとは

ノロウイルスは、カリシウイルス科ノロウイルス属のウイルスです。
感染した人の便や吐しゃ物などのほかに、貝の食中毒でも知られています。
そのため、施設の調理を行う人は、規則でカキなどをはじめとした、ノロウイルスの元仁になるものを、日ごろから食べることを禁止しているところもあるくらいです。
ロタウイルスと名前や感染した際の症状が似ているので、間違われやすいです。
ちなみに、この二つは、ウイルスの分類でも違うところに属しています。
例えば、ロタウイルスは二本鎖RNAウイルスに分類され、ノロウイルスは一本鎖RNAウイルスに分類されます。
実は感染した後の症状は似ているけれども、分類の違うウイルスなのです。

ロタウイルスとノロウイルスの感染力の違い

ロタウイルスもノロウイルスも、ウイルス粒子10~100個が体内に入っただけで感染すると言われています。
しかし、ロタウイルスは便に含まれるウイルスの量が、ノロウイルスと比較して100万倍です。
ロタウイルスは、食べ物、便や吐しゃ物による感染に気をつければいいですが、ノロウイルスは、食べ物、便や吐しゃ物に加え、ウイルスの混ざったものが乾燥したものを、埃などと一緒に吸い込んでしまうことでも感染してしまいます。
感染力やウイルスの生命力が違いますが、どちらも塩素系には弱いので、塩素系の洗剤などで消毒を行うと効果的です。
ロタウイルスは予防ワクチンがありますが、ノロウイルスにワクチンはありません。
予防ワクチンのあるロタウイルスもノロウイルスも、感染してしまってからのウイルスに対する薬はありません。

ロタウイルスとノロウイルスの発症年齢の違い

ロタウイルスは乳幼児が多くかかります。
ほとんどの子供が5歳くらいまでに一度は経験していて、大人になってからは、免疫があるため軽症ですむ傾向があります。
また、乳幼児は重症になりやすいです。
一方のノロウイルスは、どの年齢でもかかる可能性があります。
感染した時の症状は、大人も子供も変わらないのが特徴です。
ロタウイルスよりは軽症ですが、感染中はかなり体力を消耗します。

ロタウイルスとノロウイルスの潜伏期間の違い

ロタウイルスは1日から3日間、ノロウイルスは1日から2日間くらいと言われています。
流行時期にも違いがあり、ロタウイルスは冬から春にかけて、ノロウイルスは秋から冬にかけてがピークになります。

ロタウイルスとノロウイルスの症状の違い

ロタウイルスは子供がかかりやすく、重症になることが多いです。
ノロウイルスは重症にはならないものの、症状に応じて入院になることもあります。
ロタウイルスは高熱と下痢と嘔吐がセットになることが多いです。
特に下痢は長引く傾向が強いです。
ノロウイルスは下痢や嘔吐はあるもの、高熱が出ることはほとんどありません。
便の色が白いのもロタウイルスだけです。
ロタウイルスの検査は全年令で保険適応となっていますが、ノロウイルスの検査の保険適応は3才未満と65才以上のみ保険適応で検査を受けることが可能です。
乳児を保育園に預けていて、ノロウイルスが気になる場合は、保険適応なので、医療機関に相談してみるといいでしょう。

まとめ

ロタウイルス感染症は急性胃腸炎の一種ですが、独特な症状が出ます。
特に乳幼児は感染すると、嘔吐、発熱、下痢などに襲われます。
感染に対する治療方法は自然治癒になりますが、乳幼児は特に重症化する可能性もありますので病院にいくことをおすすめします。
病院では、症状を改善したり、脱水症状を予防するための処置をしてくれます。
また、事前に予防接種をしておくと、かかったときも症状が軽くなるので速めに受けて起きましょう。看病している保護者も感染しないように気をつけましょう。

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