産後の骨盤矯正の方法とは?いつから、どうすればいいのかを解説

赤ちゃんが生まれていよいよ子育てが始まりますが、お産が終わったら気になるのが自分の体型という人も多いのではないでしょうか。出産のときに開いた骨盤を矯正して体型を元に戻したいと考えているでしょう。この記事では、産後の骨盤矯正について、どのような方法で行なうのか、いつから始めるのが良いのかなどをまとめてご紹介します。

骨盤とは?妊娠・出産と骨盤の関係

まず、骨盤とはどのようなものなのか、妊娠中には骨盤がどのように変化するのか、などについて知っておきましょう。

骨盤の構造

骨盤は、左右の腸骨・恥骨・座骨からなる「寛骨(かんこつ)」、その間にある「仙骨(せんこつ)」と「尾骨(びこつ)」で構成されています。

そして、これらの骨は、軟骨やじん帯によりつながっていて、骨盤低筋群などの筋肉で支えられています。骨盤はひとの身体の中心にあり、身体を支える土台としての働きを持っている重要な部分です。

また、骨盤には子宮や内臓などを包み込み保護する働きもあります。女性の骨盤は、赤ちゃんを育てられるように男性に比べると横に広く柔らかいつくりになっています。

私たちの身体を支えるため、子宮や内臓を守る重要な役割も持っている骨盤は、強い筋肉やじん帯などで補強されているため、少しのことでは骨盤が歪むことはありません。

妊娠による骨盤の変化

内臓などを守る大切な役割があるため、少しのことで歪むことがない骨盤ですが、妊娠するとその骨盤に変化が表れてきます。

妊娠すると、出産の際に赤ちゃんが産道を通りやすくするため、「リラキシン」というホルモンの分泌が増えてきます。そして、このホルモンの働きによって軟骨やじん帯を柔らかくして骨盤を緩めていきます。

このように妊娠後期になると、骨盤の安定性が低くなるのです。そうなると、身体のバランスを取ろうとして骨盤周りの筋肉に負担をかけるため、腰痛を感じることがあります。さらに、妊娠してお腹が大きくなっていくことで、お腹をかばって腰に負担をかけることも腰痛の原因となってきます。

産後に骨盤が歪む原因2つ

妊娠・出産のために、ホルモンの分泌によって骨盤が開いていくと解説しましたが、産後に骨盤が歪む原因を以下にご紹介します。

姿勢が悪くなるため

骨盤が歪む原因のひとつに、「姿勢の悪さ」があります。立つときに左右どちらかに重心をかける癖がある人がよくいます。このよう片方に重心をかけてしまうことで骨盤が傾き、身体全体がバランスを取ろうとして筋肉が分均等に固まってしまうことがあります。

また、妊娠中にお腹が大きくなってくると腰が反ってしまう「反り腰」になることが多いのも骨盤が歪む原因です。腰をそらせることで、骨盤が前に傾き歪みの原因となります。

そして、座るとき「横座り」することで、股関節がねじれてしまうのも骨盤の歪みの原因です。横座りは骨盤の片側に体重がかかります。横座りするときに片方の方向に体重をかける癖がある方は注意が必要です。

また、産後の授乳で前かがみになることも骨盤を歪ませる原因のひとつです。身体のバランスが崩れることで、骨盤に負荷をかけてしまうため、歪みが生じてしまいます。このように、妊娠中や産後の姿勢が原因で骨盤が歪むことがあるのです。

ホルモンの影響で骨盤が緩みやすくなっている

妊娠すると出産に向けて骨盤を緩めるために、リラキシンというホルモンが分泌されるようになると説明しました。このホルモンは、出産してからも6ヶ月ほど影響を与える場合があります。

そのため、出産後の半年ほどの期間は、骨盤が歪みやすい時期であると言えるのです。

産後の骨盤は戻るの?

妊娠・出産で歪んだ骨盤は、元に戻るものなのでしょうか。そして、骨盤が歪んだままだとどのような影響があるのかを解説していきます。

産後に歪んだ骨盤は自然に元に戻る

妊娠・出産により開いた骨盤は自然に戻るものなのでしょうか?「自然に戻らないので、骨盤矯正に通わなければならないのではないか」と思い込んでいる人も多いようですが、実は骨盤は時間をかけてゆっくりと元に戻ります。

ただし、骨盤が戻るのは産後3~4ヶ月かかると言われています。遅くても産後6ヶ月までには戻りますが、これには個人差があります。

産後に骨盤が戻らなかったらどうなるの?

産後に骨盤が戻らないと、身体に不調をきたすことがあります。骨盤は身体の中心にあり、内臓や子宮を包んで守っています。その骨盤が歪んでいたら、身体を支えることができなくなって骨盤周りの筋肉に負担がかかり、筋肉が凝り固まって血流が悪くなってしまうのです。血流が悪くなると、身体が冷えて冷え性や腰痛や肩こりの原因になることがあります。

また、血流が悪いとむくみや、生理痛が重くなるなど婦人科系のトラブルを引き起こすこともあるのです。さらに、内臓が正しい位置におさまっていないことで、水分代謝が悪くなって便秘を引き起こす可能性もあります。

骨盤を元の位置に戻すことで、本来の身体の機能を取り戻すことができ、内臓への負担が減ります。さらに、血管やリンパの流れが良くなることで冷え性やむくみが改善され、ひどい生理痛が起きにくくなるのです。

また、骨盤が戻らないと筋肉の動きが低下してしまうため、脂肪燃焼がうまくされません。そうなると、エネルギー消費が減るため体重が増えてしまうことがあります。さらに、内臓が元の位置に戻っていないと下腹部がぽっこりして見えるなど、身体のラインにも影響を及ぼしてしまいます。

産後の骨盤矯正について

次にご紹介するのは、産後の骨盤矯正についてです。通常の骨盤矯正との違いや効果、いつから始めたら良いのかについて詳しくご紹介します。

通常の骨盤矯正と産後の骨盤矯正の違い

骨盤矯正には、通常の骨盤矯正と産後の骨盤矯正があります。通常の骨盤矯正は、姿勢の悪さや運動不足、身体の癖などからくる骨盤の歪みを矯正するものです。

一方、産後の骨盤矯正は妊娠・出産によって開いた骨盤をもとに戻すのが目的です。妊娠で子宮が大きくなると、骨盤の内側に圧力がかかって骨盤の上の方が少しずつ開いていきます。そして、陣痛が始まると赤ちゃんが産道を通りやすいように胎盤のじん帯が緩み、骨盤が大きく広がります。このように、お産で開いた骨盤を矯正するのが産後の骨盤矯正です。

産後の骨盤矯正による効果

では、産後に骨盤矯正をすることで、身体にどのような効果が出るのでしょうか。

産後のトラブルを改善する

産後に骨盤が歪んだままでいると、身体のバランスが悪く正しく筋肉を使うことができません。そのため、そのまま生活していると様々なトラブルが起きてしまいます。

身体のバランスが悪いことで起きるのは、腰痛や肩こり、恥骨痛、関節痛などです。また、骨盤が歪んでいると内臓が子宮を正しい位置にないので、血行不良などを引き起こすことがあります。内臓がうまく機能しないと便秘になることがあり、血行が悪くなると冷え性になってしまいます。

骨盤矯正で骨盤の位置を正常な位置に戻すことで、身体の様々なトラブルを改善することができるのです。

体型を戻してダイエット効果が期待できる

骨盤が歪んでいると、身体のバランスが悪くなっているため筋肉を正しく使うことができません。しかし、骨盤を正しい位置に戻すことで、筋肉をしっかりと動かすことができるため
身体を動かしやすくなります。

その結果、全身に血が巡るようになることで代謝が良くなりカロリー消費がアップします。骨盤矯正は、消費カロリーが上げ、痩せやすい身体にしてダイエット効果が期待できるのです。

また、血流が良くなると全身に酸素や栄養が運ばれるため、母乳に栄養が行き渡ります。骨盤矯正はお母さんの身体だけでなく、赤ちゃんにも良い影響を与えるのですね。

産後の骨盤矯正はいつから始めればいい?

妊娠中に分泌されていた「リラキシン」は、産後2日~3日で分泌が止まります。しかし、骨盤の戻りには個人差がありますが、遅くても産後6ヶ月までには自然に戻ると言われています。

言い換えれば、この骨盤が緩んでいる時期にこそ、骨盤矯正しやすいということです。そのため、骨盤矯正はできるだけ早めに始めたいところですが、産後すぐに始めるのはおすすめできません。

なぜなら、産後1ヶ月までは出産の疲れなどが残っているため、身体を回復させる大切な時期です。この時期に身体を休めておかないと、体調を崩す原因になってしまいます。この時期に骨盤矯正を始めるのは控えましょう。

産後の骨盤矯正を始める時期は、1ヶ月健診で何の問題もなかった場合、産後2ヶ月頃からが良いでしょう。そして、自然に骨盤が戻る6ヶ月までに行なうのがおすすめです。ただし、産後6ヶ月を過ぎたからといって骨盤が元に戻らないことはありませんから、体調と相談しながら始めるようにしましょう。

産後の骨盤矯正の方法3つ

次にご紹介するのは、産後の骨盤矯正の方法です。どのようなやり方があるのかを詳しくご紹介します。

骨盤ベルトやガードルを使う

産後の骨盤矯正で手軽にできる方法は、市販の骨盤ベルトやガードルを着用する方法です。出産で開いた骨盤は自然に元に戻っていきますが、骨盤が正常の位置にないことで、腰痛などを引き起こす場合があります。

産後は赤ちゃんを抱いて授乳をするなど、腰に負担をかけることが多いため、ベルトやガードルで骨盤の戻りをサポートすると良いでしょう。

ただし、この産後ベルトやガードルは、正しい方法で着用しないと、かえって骨盤を緩める原因になることがあります。使用方法について必ず確認して正しく着用しましょう。

骨盤体操などを実践する

骨盤を元に戻すための方法の2つ目は、産後にできる骨盤体操です。骨盤が歪んだままでいると、様々な筋肉に負担をかけ、筋肉が固く凝り固まってしまうおそれがあります。そうなると、関節が動かしにくくなるなどの弊害が出てきてしまいます。

骨盤体操は家でできるため、赤ちゃんが寝ているときなどに行なえます。ストレッチをすることで、身体を柔らかくして関節を動かしやすくし、筋肉をほぐすこともできます。身体を動かすことはストレス解消にもなるため、お母さんの気分転換のためにもおすすめですよ。

以下に、自宅で簡単にできる骨盤体操をご紹介します。無理のない範囲で試してみてくださいね。

腰を回して歪みをチェックする

この体操は、骨盤の歪みがチェックできます。腰を回したとき、左右で回しやすさが異なる場合、骨盤のバランスが悪くなっていると考えられます。回すときは勢いをつけず、ゆっくり回しましょう。

1.足を肩幅の広さに開き、正面を向いて真っすぐ立つ
2.腰に手を当てて、右にゆっくり2回~3回ほど大きく回す
3.同じように左に大きくゆっくり2回~3回ほど回す

座った状態で腰をひねる

こちらの体操も骨盤が歪んでいないかを確認するものです。上記の体操と一緒に行って骨盤の歪みをチェックしましょう。

1.両足を開いて座る
2.お尻の後ろに右手を置いて、左手を開いた足の間に置く
3.ゆっくりと身体を右にひねる
4.ひねったまま左手を右手の上に置く
5.ゆっくり息を吸いながら身体を元の状態に戻す
6.反対側も同じように行なう

上体をひねり骨盤周りを柔らかくする

骨盤の歪みを感じたら、立った状態で腰をひねって骨盤周りを柔らかくしましょう。

1.足を肩幅に開いて背中を伸ばし、真っすぐ立つ
2.腰に手を当てる
3.骨盤が正面を向いていることを意識して上半身をゆっくり左右にひねる

骨盤周りの筋肉を伸ばす

寝たままできるストレッチですから、赤ちゃんを寝かしつけながら行えます。ゆっくりした動きで両肩を床から離さないようにするのがコツです。

1.仰向けになり、がに股になるように足の裏同士を合わせる
2.右膝をゆっくり真っすぐ立て、両手は床に置く
3.右のお尻をゆっくり持ち上げる
4.骨盤周りの筋肉を伸ばすのを意識する
5.左も同様に行う

ヨガやピラティスで戻す

骨盤をはじめ、骨を上手に動かすためには筋肉が働きます。そのため、良い動きをするためには、筋肉をバランスよく鍛えることが重要です。筋肉を左右均等につけることで、骨盤を正しく動かし、正しい位置に戻すことができるのです。

そして、骨盤を正しく機能させるために必要なのは「インナーマッスル」という身体の中心に近い筋肉です。深層筋と呼ばれることもあるインナーマッスルを鍛えることで、姿勢が良くなり代謝も良くなる効果が期待できます。

このインナーマッスルを鍛えるのにおすすめなのが、ヨガやピラティスです。最近では、産後ヨガやピラティスが、骨盤矯正にも役立つとして注目されています。また、ヨガやピラティスは呼吸を整えながら行なうため、リラックス効果がありストレス軽減にも効果が期待できます。

骨盤矯正のほかにも、抱っこで疲れた肩や背中をほぐすメニューもあります。産後ヨガは赤ちゃんが寝ている間にできるメニューも多いので取り入れてみてはいかがでしょうか。

プロの手を借りる

整骨院などでプロの手を借りる方法もおすすめです。産後の骨盤矯正で整骨院に通う場合は、1ヶ月健診で聞いてみてからにしてくださいね。

骨盤矯正は1回の施術ではなく、定期的に通う必要があります。病院によってはキッズスペースにベビーベッドが置かれているとこもあるので、確認してみると良いでしょう。

普段から姿勢を良くする

産後の骨盤矯正で大切なことは、普段から意識して姿勢を良くすることです。体操やヨガなどを頑張っても、普段の姿勢が悪かったら骨盤が元に戻りません。

授乳のときに前かがみにならない、座るときに足を組まないなど、自分で意識して骨盤が歪まないようにしましょう。

産後の骨盤矯正で注意する点

出産で歪んでしまった骨盤を戻すために、様々な方法をご紹介しましたが、産後の骨盤矯正で気をつけなければならない点を知っておきましょう。

早く始めすぎない

骨盤矯正は早く始めすぎないことが大切です。出産を終えたばかりの頃は、身体を休めて回復させなければなりません。骨盤矯正は産後1ヶ月の健診で、医師に相談してからにしましょう。

また、産後ベルトやガードルに関しては、出産してすぐに使えるとされていますが、入院中に医師に確認してから使うようにすると安心です。

重いものを持たない

産後1ヶ月はできるだけ育児に集中し、無理のない範囲で家事を始めると良いとされています。昔は産後1ヶ月寝て過ごすようにと言われていたほど、出産は大変なエネルギーを使うことです。

そのため、産後1ヶ月は安静にして身体の回復に努め、骨盤にも負荷がかからないように気をつけましょう。そして、産後は骨盤が緩んだ状態ですから、激しい運動をしたり重いものを持ったりするのを避けなければなりません。

上の子供を抱くときは座った状態でするなどして、骨盤に力がかからないように注意してくださいね。

痛みがあるときは医師に相談する

産後、前かがみになったときや足を上げると強い痛みを感じる場合は医師に相談するのをおすすめします。

普通は出産の後、自然に戻る骨盤ですが、なかには骨や関節に支障をきたしてしまっている場合があります。痛みを感じるときは、骨盤体操を無理に行なわず、骨盤ベルトなどの使用は控えましょう。

歩くときに強い痛みがある、寝返りできないくらい痛いというときは我慢しないで病院へ行きましょう。

産後の骨盤矯正は体調を優先しよう!

産後の骨盤矯正は、腰痛や冷え性などを予防するとともに、体型を戻すためにも効果があることです。しかし、ご紹介したように骨盤矯正は産後すぐに始めることはせず、まずは身体を回復させるのを優先しましょう。

そして、骨盤矯正を始めるときは医師に相談し、普段の姿勢を良くするように意識するのも重要です。赤ちゃんとの生活を楽しみながら、無理なく骨盤矯正を行ってくださいね。

<参照>
はり・きゅう治療院ぶんのいち「ぶんのいち通信」:https://bunnoichi-kyoudo.com/bunnoichitsushin/産後の骨盤矯正が必要な理由

0