【医師監修】授乳時のつらい乳腺炎の症状と原因、対処法について

乳腺炎

森美樹 先生

出産という大仕事を終え、ついに待望の赤ちゃんに出会えたママ。感動の余韻に浸っている暇はないほど急に始まる育児に戸惑う方も多いと思います。母乳育児が始まると一番心配されるトラブルが「乳腺炎」。母乳育児中のママは誰でも乳腺炎にかかる可能性があります。
一度かかった方は二度とかかりたくない!と思うほど心身ともにダメージが大きいものです。
そこで、快適な母乳育児をする上で、知っておきたい乳腺炎についての詳しい症状、原因、対処法をご紹介します。

授乳中のママに多い、「乳腺炎」

授乳中のママの2~10%はこの乳腺炎にかかると言われています。ただでさえ慣れない育児が始まった上に、急な胸の痛みや発熱にどうしたらいいか分からないママも多いのではないでしょうか。
まずは乳腺炎についての正しい知識を学び、今から予防をしていきましょう。

乳腺炎とは?

乳腺炎とは、乳管(母乳を運ぶ管)が炎症を起こし、母乳が詰まることで乳房がかたくなり痛みや発熱を起こすものです。様々な要因で引き起こされる乳腺炎ですが、大きく2種類あります。

  • 急性うっ滞性乳腺炎
    部分的に乳管が細かったり、乳頭に傷がついて乳管から母乳が出にくくなることで、乳腺に母乳が溜まって赤く腫れ、痛みを起こしてしまうもの。母乳育児が始まり、母乳がで始めた頃の3ヶ月目くらいまでのママに起こりやすい乳腺炎です。
  • 急性化膿性乳腺炎
    急性うっ滞性乳腺炎の状態が半日から1日以上続くと、うっ滞した乳汁が化膿して高い熱が出たり、筋肉痛や悪寒などのインフルエンザに似た症状がおこります。

こんな症状がみられたら乳腺炎かもしれません

乳腺炎の症状は様々ですので、下記の項目で少しでも当てはまった方は乳腺炎を疑い、悪化しないようできる限り早めの対処をしましょう。

  • おっぱいが痛む
  • おっぱいにしこりがある
  • おっぱいを触ると熱感がある
  • おっぱいが赤くなる
  • 赤ちゃんに吸われると痛む
  • さらっとした母乳ではなくねっとりしている
  • おっぱいが張って硬くなる
  • 全身の発熱、関節痛、頭痛などインフルエンザのような症状がある
  • 乳頭に白いニキビや水泡のようなものができる

乳腺炎の主な原因

乳腺炎には、育児環境やママの体質、生活習慣など様々な原因が考えられます。下記の項目で考えられる要因があれば改善し、未然に防ぐことも大切です。

育児環境

  • 赤ちゃんを預けるなどして、長時間授乳ができなかった
  • 抱き方が同じだったり片方だけ長時間吸わせたりなど、母乳の飲ませ方に偏りがあり母乳が残ってしまう
  • 乳頭の先端だけで吸うなど、上手に吸えていない
  • 授乳姿勢が悪い
  • 急に授乳回数を減らしてしまった
  • もともと母乳の出がとても良い
  • 乳頭に傷がある
  • ママや赤ちゃんが病気になった

 

ママの生活習慣

  • これまでにも乳腺炎になったことがある
  • 睡眠不足が続き、疲れがたまっている
  • ブラジャーがきつかったり、車のシートベルトなど、胸を締め付けている
  • 育児に追われストレスを感じやすい
  • 水分摂取が足りない
  • バランスのとれた栄養がとれていない

いかがでしょうか。一つでも当てはまるママが多いと思います。これらの原因から、どんなママでも乳腺炎を引き起こす可能性があるのです。原因が分かっていればあとは意識して予防をすることです。

乳腺炎にならない為にできること

  • できる限り休息、睡眠をとり体を休めること
  • リラックスする時間を作ること
  • 水分をこまめに飲むこと
  • 塩分や脂肪の摂取を控え、母乳に良いバランスのとれた食事を心がけること
  • 授乳用ブラジャーをつけたり、寝る体勢はうつぶせや横向きでなく意識的に仰向けになったりするなど、胸を圧迫することのないようにする
  • いろいろな角度で抱き方を変え、左右均等に授乳すること

特に乳腺炎になりかけの初期症状のうちに、上記のことを心がけ、食生活や授乳リズムを意識して生活することが大切です。

乳腺炎の対処法

今までご紹介した予防をしても、乳腺炎のような症状がでてしまう場合もあります。乳腺炎の疑いがある場合は、まずはしっかり赤ちゃんに飲んでもらっておっぱいを空にすることが大切です。ここでは、乳腺炎の症状別におすすめの対処法をご紹介いたします。それでも改善しない場合には、医師、助産師に相談してみましょう。

乳腺炎で熱がでたときの対処法

熱の持っている部分に冷却ジェルや濡れたタオルなどで冷やします。ただ、冷やしすぎないように注意してください。

乳腺炎でしこりが痛いときの対処法

まずは何よりもこまめに赤ちゃんによく飲んでもらいましょう。いろんな角度から飲んでもらうよう抱き方を変えたり(縦抱きやフットボール抱きなどがおすすめ)、乳頭部分だけでなく大きなお口で乳輪まで覆ってしっかり吸ってもらうことが第一優先です。
また、しこりのある部分を軽く圧迫しながら搾乳すると、しこりが柔らかくなるということもあります。
そのほか、搾乳器で搾乳することも効果的です。
自分ではどうにもならない場合は、早めに産婦人科や助産師のマッサージを受けてみましょう。プロの正しいマッサージですっと軽くなることもあります。

乳腺炎で白斑ができたときの対処法

白斑とは、乳頭部分にできるニキビや水泡のようなもの。乳腺が詰まって炎症を起こし、母乳が外に出ないことによって引き起こされる症状です。これができると、赤ちゃんが吸うたびに痛みが伴うので、悪化する前に早く治したいですね。
ただ、やはりこれも一番の対処法は、赤ちゃんにしっかり飲んでもらうことです。はじめは痛いですが、角度を変えて飲み続けているとだんだんと痛みが和らいでくることもあります。

乳腺炎かもしれないと思ったら、まずはしっかり授乳、良くならなければ早めに病院へ

バタバタと育児に追われていると、ママの体に異変があっても後回しにしてしまうもの。ただ乳腺炎になってしまうと、ママにとって授乳が辛いものになり赤ちゃんにも自然にそれが伝わってしまいます。今までご紹介したように乳腺炎は様々な症状があります。まずは赤ちゃんに良く飲んでもらい、それでも良くならなければ、その症状に合った適切な対処をしてもらう為に早めのタイミングで病院に行くことがおすすめです。

乳腺炎は、何科を受診したらいいの?

特に何科と決まっているわけではありません。事前にネットやママ友の口コミなどで情報収集しておくと安心ですね。特に、実際に治療されたママからここの病院が良かったという口コミがあればよりいいでしょう。
病院を調べる際に、あくまでも目安として以下の病院にご相談してみてください。

  • ご自身が出産した病院
  • 最寄りの婦人科・産婦人科
  • 「母乳外来」のある病院
  • 乳腺外科のある病院

その中でも「母乳外来」のある病院は、母乳やおっぱいの専門として様々な悩みを解決に導いてくれます。乳腺炎の対処法だけでなく、授乳指導、卒乳指導、搾乳指導、母乳の良い栄養指導、おっぱいマッサージの指導など母乳育児のママにとってはとてもありがたい病院ですね。

乳腺炎の治療方法は?

様々な症状に合わせて適切な治療法があります。まずは問診と触診で、現段階の症状を確認します。急性うっ滞性乳腺炎など初期段階での軽度な乳腺炎であれば、乳房を温めながらゆっくりとマッサージをし授乳を続けます。腫れや熱があれば冷やして炎症を落ち着かせた後にマッサージをし、詰まっている母乳を外に出します。解熱鎮痛剤を処方されることもあります。
細菌感染である急性化膿性乳腺炎の場合は、抗生物質や解熱鎮静剤による治療を行います。
また、急性化膿性乳腺炎が悪化すると、乳腺内に膿ができる「乳房膿瘍」になってしまうことがあります。膿の溜まった袋になってしまい赤く腫れあがり、痛みを伴います。
その場合、局所麻酔をかけ皮膚を切開して膿を出すといった治療も必要になります。

絶対に切開しないといけないの?

切開をする処置になる場合は、本当に最悪の状況です。乳腺内に膿ができてしまうとそれが母乳に移行され、母乳の味がまずくなってしまうこともあります。
母乳の味が変わると赤ちゃんも拒否反応を示し、飲まなくなると更に母乳もたまり…と悪循環ですね。医師から切開が必要と判断された場合には、通常の授乳に戻れるよう赤ちゃんの為にも早めに決断した方がいいでしょう。通常は切開しながらでも授乳を続けることは問題ありません。

乳腺炎を悪化させないために

いかがでしたでしょうか。乳腺炎になってしまうと、おっぱいが硬く痛く本当に辛い状況が続きます。赤ちゃんのお腹が空いているのに痛くて授乳できない、それが続くと母乳がたまってますます悪化し、それが原因でママの育児ストレスや産後うつを引き起こしてしまう…かなり深刻な問題です。
あれ、いつもと違うなと感じたら初期段階で食い止めるのが何よりも大切です。しっかり赤ちゃんに飲んでもらい、よくならないようであれば病院でみてもらい、症状に合わせた処置をしてもらうこと、日頃から母乳に良いとされる食事を見直すこと、授乳の仕方を変えること、たまには息抜きをして育児を楽しむこと。
母乳育児はママだけでなく、赤ちゃんと二人三脚の共同作業です。ママだけの体ではなく、赤ちゃんに直接関わることだと認識して、おっぱいの変化にいち早く気づけるよう心がけたいですね。
パパにも乳腺炎という病気があることを知ってもらうのもいいでしょう。
母乳の時期は本当にあっという間で、ママと赤ちゃんのかけがえのない愛おしい時間です。乳腺炎をしっかり予防して、この貴重な時を心から楽しめますよう願っています。

 

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