派遣法改正とは?よく理解して自分に合った働き方を見つけよう

派遣社員として働いている人、また、これから派遣社員として働く予定がある人で「労働者派遣法改正」について、正しく理解している人はどのくらいいるのでしょうか。恐らく、正しく理解している人は少ないのではないかと思います。派遣法改正によって、自分たちにはどのような影響があるのか知っておくべきです。派遣の契約期間が満期になった時にどうしたらいいのか、自分はこの先どういった働き方をしたらいいのか、労働者派遣法の改正の中身を知って考えてみましょう。

「派遣法」とはどんなもの?

「派遣法」とは、正式名称を「労働者派遣法」といい、労働者派遣に関する法律です。施行されたのが1986年で、これによって一時的に労働者を雇用する事ができるようになりました。そして、労働者派遣を専門とするビジネスが誕生しました。当初は派遣期間は1年が最長でしたが、何度かの改正を経て派遣期間の延長や、対象業務の拡大が変わりました。

2015年の派遣法改正のポイント

2015年に制定された派遣法改正のポイントはどのようなものなのでしょうか。

派遣スタッフのキャリアアップ措置

派遣会社は派遣労働者のために、教育研修やカウンセリングが受けられるようにする環境を整えるよう義務付けられました。このため、派遣先の会社は派遣元の会社から依頼があった場合、派遣労働者への研修や教育の場を提供するよう協力をする必要があります。

派遣の期間制限の見直し

次に見直されたのは派遣期間についてです。今までは特定の26業務(この特定26業務とは、「専門26業種」とも言います。事務用機器操作業務が全体の4割、財務処理業務、取引文書作成業務、ファイリング業務とこの4つの業務が全体の3分の2を占めています。2012年に区分けが変更になり28業務になりましたが、「26業務」という言い方が浸透しています。)は無期限で派遣労働者を雇用することができました。

しかし、それ以外については同一の業務では原則で1年、最長3年までしか雇用することができなかったのです。2015年の改正で、この区分がなくなって全ての業務で3年間雇用することができるようになりました。そして、3年ごとに労働組合への「意見聴取」を行うことで3年以上の雇用を延長することが可能となりました。この意見聴取を行って契約を更新するのは同一の派遣労働者を雇う場合です。

もしも、同じ派遣会社から違う人を雇用する場合は意見聴取は必要ありません。同一の派遣労働者を同じ企業で3年以上雇う場合は意見聴取を行うか、違う部署での雇用となります。

労働者派遣事業はすべて許可制へ

今まで派遣に関する事業は届出制(特定労働者派遣事業)と許可制(一般労働者派遣事業)がありました。これが労働者派遣事業は全て許可制で全ての企業が厚生労働省の審査をクリアしなければならないということになったのです。これによって、派遣社員を受け入れる側や派遣労働者は安心して働くことができるようになります。基準をクリアした派遣会社のみが事業を許可されるということは、派遣労働者を守れる信頼できる会社のみが残るということになるのです。

派遣先での労働者の均等待遇を確保

これまで派遣労働者は、正社員と同等の仕事をしていても賃金や待遇に差が生じていました。しかし、労働者派遣法改正により、派遣労働者を雇用している企業には派遣労働者に対して福利厚生の利用、教育などについて配慮するよう義務が生じました。

派遣元の企業は、派遣労働者の経験や能力、職務の成果などを配慮し、自社の正社員との差異が生じないようにしなければなりません。派遣会社の方は派遣労働者から求めがあった場合には、賃金・福利厚生・教育訓練への均等推進を図る義務があり、派遣先へそれを求める必要があります。

雇用の安定措置

派遣会社は派遣の期間が満了になった者に対して、雇用の安定措置を講じることが義務付けられました。これによって派遣労働者は、3年経った時に下記のどれかを選択できるようになりました。

  • 派遣先に直接雇用を希望する
  • 派遣元企業で無期限雇用してもらい派遣元で働く
  • 派遣会社から次の派遣先を紹介してもらう

派遣会社にとっては有期雇用と無期雇用の人員のバランスを考えて運営していかなければならなくなります。

マージンなどの情報公開義務

派遣会社は自社のマージン率(派遣会社が企業から受け取る金額のうち、派遣会社の取り分)の情報公開をするように義務付けられました。また、この他に派遣労働者への教育訓練などの取り組み状況なども含め、派遣労働者がどの派遣会社へ登録するかを選択できるようになります。

派遣元事業主に新たに課せられたこと

の「雇用の安定措置」で触れましたが、派遣会社は派遣労働者の雇用を安定させるための措置をとらなければなりません。

  1. 派遣先への直接雇用を依頼
  2. 派遣労働者が派遣先での直接雇用を希望した場合、派遣元の会社は派遣先の会社へ直接雇用を依頼します。派遣先の会社から直接雇用を断られれた場合は、下記の2~4の措置を講じる必要があります。

  3. 新しい派遣先の提案
  4. 派遣労働者へ新しい派遣先を紹介するということですが、今まで働いていた派遣先と同様の条件(給与や勤務時間など)ではないといけない、というわけではありません。

  5. 派遣労働者を派遣元での無期雇用
  6. 派遣元会社が無期限雇用して雇用の機会の確保、提供をするというものです。無期雇用であれば正社員ではなくてもよいとされています。

  7. その他の安定した雇用の継続措置
  8. 紹介予定派遣や有給での研修や教育の場を提供することです。

意見聴取手続きとは

派遣先の企業は3年の派遣可能期間を延長したい場合、その事業所の過半数労働組合または労働者の過半数代表者から意見を聞かなければなりません。過半数労働組合等から異議がなければ、その事業所で派遣労働者を3年超えて受け入れることができます。もしも過半数労働組合から異議があった場合、今後の対応方針などを説明する義務があります。

2018年問題とは

2018年問題とは労働契約法と派遣法の2つの法改正によって起こる雇用形態・雇用期間の問題のことです。2018年には雇用する方も労働者のほうも大きな転換期を迎える年になっているため、「2018年問題」と言われています。

2018年問題に関する2つの法改正について

2018年問題に関わる2つの法改正とは、2012年の労働契約法改正と、2015年の労働者派遣法改正のことです。

≪2012年の労働契約法改正≫
2012年の労働契約法改正では、5年以上の有期雇用契約者は無期雇用契約への転換を申し入れすることができます。これは労働者の申込みが必要となり、もし該当期間中に申込みをしなかったら、次の更新の時に申し込みをすることが出来ます。その権利のことを「無期転換申込権」と言います。この無期転換申込権には、以下の条件を全て満たしていることが必須です。

  • 使用する事業主が同一か
  • 使用する事業主が同じであれば、満了や期間の途中で働く事業所は変わっても契約期間に計上することができます。

  • 契約の更新回数が1回以上ある
  • 最低でも1回以上契約の更新をしていること。

  • 有期労働契約の通算期間が5年超えている
  • 通算の契約期間が5年を超えていなければいけません。

2013年4月1日以降に有期労働契約を結んだり更新をした場合は、労働者は5年後の2018年4月1日から有期契約から無期契約への転換を申し込むことができるのです。

≪2015年の労働者派遣法改正≫
2015年の労働者派遣法改正で、派遣労働者の派遣期間の制限が見直されました。派遣労働者の同一の組織単位で働けるのが3年までになったので、その最初の期限が来るのが2018年の9月末となるのです。派遣先が3年の契約期間を延長したい場合は、派遣先の事業所の過半数労働組内等に意見を聞くことが必要となりました。ちなみに、以下の5つの場合は3年の制限はありません。

  • 派遣会社に無期雇用されている派遣労働者を派遣する場合
  • 年齢が60歳以上の派遣労働者を派遣する場合
  • 期限が決まっているプロジェクトに派遣する場合
  • 1ヶ月の勤務日数が10日以下という日数が決まった業務への派遣の場合
  • 産前産後、育児、介護で休業している労働者の業務に派遣する場合

2018年問題によって派遣社員はどうなるの?

2018年問題によって、派遣社員の働き方はどうなるのでしょうか。例えば「無期転換ルール」については、有期契約で働いている側からすると、契約更新の時期が来るたびに契約が更新されないのではないかという不安から解放されるという利点があります。そのため、正社員以外の雇用形態で働く人の職業の安定に繋がるので良さそうに思えますが、果たして本当にそうなのでしょうか。

企業側から見たら、経営状態や派遣労働者の能力などを考えて希望者の全てを無期雇用にするのは難しいこともあるでしょう。また、2015年労働派遣法改正によって、「正社員」と「派遣労働者」の待遇の差異をなくしていくよう措置をとることが求められるようになりました。

賃金だけでなく、福利厚生などの面も待遇を見直す必要が出てきました。そうなった場合、企業側は2018年になる前に有期契約で雇用している人達を『今のうちに契約終了にしておこう』と考えるケースも出てくることが予想されます。

派遣労働者からすると、労働派遣法改正によって、雇い止めに怯えなくてよくなったり、キャリアアップの研修などを受ける機会が出てきたりと、安心して働けるようになっています。しかし、この改正法を受けて企業側が、今のうちに時給の見直しや人員の見直しをする可能性も出てきていますので、これからどうするかをよく見極める必要があります。今後推進されるキャリアアップの教育の場を上手に利用して自分のスキルを上げて、次のステップへ進むというのもいいでしょう。

派遣法改正を良く知って自分に合った働き方を決めよう

労働者派遣法の改正について、ご理解いただけたでしょうか。派遣労働者にとってどのようなメリットやデメリットがあるのかを知って、今後自分はどうしたらいいのかを考えるきっかけになったと思います。派遣社員として色々な企業で働き、様々な仕事を経験したいという方は多いと思います。派遣社員としての働き方を改正法も踏まえ、一度見直してみるのもいいのではないでしょうか。

参考元:厚生労働省

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