介護事務の仕事は専門知識を活かした長く働ける仕事として注目を集めています。今後も高齢化が進み、介護施設などが増えることで、ますます介護事務のニーズが高まることが予測できます。そこで今回は介護事務の仕事内容やオススメの資格を紹介します。
介護事務の仕事とは?
介護事務の求人状況や将来性は?
人口の4人に1人が65歳以上という超高齢化社会の日本では、今後も介護を受ける人が増えると考えられます。
介護事務の仕事は介護保険やサービス利用料に精通し、介護事業所を運営するために欠かせない介護報酬請求業務を行う仕事です。そのため介護の現場を影で支える重要な役割を担っています。また医療機関でも介護保険の知識や介護報酬請求業務などのスキルが要求されているため、今後更に活躍の場が増えると予測できます。
介護事務の仕事内容
- 受付・案内・会計業務
- 介護報酬請求業務(レセプト作成)
- 業務の管理・サポート
介護事業所での電話対応や来客対応・サービス内容や手続きの説明などの受付業務、利用者から料金を受け取るための会計業務を行います。
介護保険サービス利用料の内1~2割は利用者の自己負担ですが、残りの8~9割は国や県が負担します。そのため老人ホームや訪問介護事業所は介護報酬のルールに従って介護給付費明細書(レセプト)を書き、各都道府県の国民健康保険の連合会へ請求業務を行います。
勤務先によってはスタッフのスケジュール管理や備品の管理など、事業所の運営が円滑に進めるためのサポート業務を行います。そのため事業所によって業務範囲が異なります。
給与や年収は?
平成28年の財団法人介護労働安定センターの調査によると、アルバイト・派遣社員の場合時給が800~1,200円。正社員の場合は手取りで16~20万円です。年収に換算すると325万円~390万円。
勤務年数でみた場合、勤続3年以上で290万円前後、勤続10年未満では360万円前後でした。また事業所によっては資格手当がでるケースもあり、相場は1ヶ月5,000円~30,000円です。他の業界に比べると決して高いとは言えませんが、リーダー職や管理職になることで昇給も可能です。
介護事務と医療事務の違い
介護事務は介護サービスの事業所・介護保険施設で働き、医療事務は主に病院で働くというように行う業務は似ていますが、働く場所が異なります。
介護事務の資格って必要?
介護事務の資格は民間資格のため色々な資格が存在しています。しかしどの資格であっても習得できる内容にさほど差はありません。また介護事務をするために必須の資格もないため、スキルに自信があれば資格を取得しなくても充分に仕事ができます。
介護事務の資格取得のメリット
- 転職活動の時に有利に働く
- 介護保険について学ぶことができる
資格がなくても仕事ができますが、資格を取得することで介護保険に関する基本的な知識や介護請求業務に関するスキルがあることを証明できるため、就職活動の時に有利に働きます。
また資格取得講座の中には資格取得後のフォローとして就職支援を行う講座もあるため、未経験から介護事務への転職を考えるなら資格取得をしておくといいでしょう。
介護保険は40歳になると必ず加入しなければいけません。またみんなに家族の誰かが介護サービスを受ける可能性はあります。介護保険の資格を取得することはこれらの知識を幅広く学ぶため、もしもの時に自分や家族を守ることにつながります。
介護事務の資格の勉強方法は?独学で取得できる?
- 通信講座
- 通学講座
- 独学
通信講座は通学に時間を取られることもなく、自分のペースで勉強できるため少しでも費用を抑えたいなら通信講座を活用するといいでしょう。
通信講座の受講期間は約3ヶ月~半年程度で、費用も3万円前後で学べます。また介護事務の場合はどの資格も合格率が60%前後でテキストや教材の持ち込みが許可されている場合が多いため、通信講座のテキストをしっかり抑えて基本を身に付ければ、未経験者でも資格取得は可能です。
資格取得の講座の受講期間は1週間で取得できるコースもあれば、土日に集中して学ぶコースなどいろいろなパターンがあります。介護資格にもいくつか種類があり、講座によって取得できる資格が異なるため、事前に自分がどの資格を取得したいか決めておく必要があります。費用は4万円~7万円くらいです。
介護事務の資格を取得する場合、一番注意すべき点が受験資格です。介護事務の資格は年齢や学歴などの制限はありません。しかし資格の多くが主催団体の指定講座を修了しなければ受験資格を得られないため、介護事務の資格取得のための参考書やテキストはほとんど出回っていません。古本で見つけたとしても、介護保険に関する法律や制度は一定期間ごとに改定されているため、役に立たないケースが高いです。
また未経験者の場合、介護保険点数表をしっかりと理解し使いこなせるレベルまで独学で持っていくのは難しいです。未経験者の場合は、通信講座や通学講座で勉強する方がいいでしょう。
転職・就職時に役に立つ!未経験者からエキスパートまで介護事務の資格
- ケアクラーク
- 介護事務管理士(R)
- 介護保険事務士
- 介護保険事務管理士
- 介事管理専門秘書検定
- 介護報酬請求事務技能検定試験
一般財団法人日本医療教育財団実施のケアクラーク技能認定試験を受験し、合格することで取得できます。出題範囲は介護保険に関する知識と技能だけでなく、コミュニケーションや老人・障害者の心理などです。
試験は年に6回、偶数月に各都道府県の公共施設で実施されます。また他の資格に比べて幅広い分野を学ぶ必要があります。ケアクラークはこれから介護の仕事をしたいと思っている人や、介護のエキスパートを目指している人に向いてる資格です。
株式会社技能認定振興協会が実施している介護事務の資格です。介護事務の資格の中でも知名度が高いため、就職の時に有利に働く可能性があります。出題範囲は介護施設での受付や会計、レセプトの作成などです。資格を取得することで介護事務に必要な知識やスキルがあることを証明できます。試験は奇数月の第4土曜日に実施されています。
つしま医療福祉研究財団(旧老齢健康科学研究財団)が認定する資格です。介護事務のエキスパートを育てるための資格で、介護給付費請求事務や給付管理に関する事務をしっかりと知識として理解する必要があります。
受験資格は団体が指定する学校での介護保険事務士関連の科目を修了していることです。そのため指定校で開催されている講座を受講しなければいけません。講座を全て受講した時点で試験を受けるため試験日は学校によって異なります。
日本病院管理教育協会が実施し、認定する介護資格です。介護事務の主な業務である介護給付請求事務とレセプト作成に関する内容が中心です。協会指定の学校で学ぶことが受験資格のため通信講座では取得できません。
日本能力開発推進協会(JADP)が認定している介護事務の資格です。
試験範囲はレセプトの作成、介護報酬請求などの事務管理だけでなく、介護福祉制度の理解や、ケアマネジャーのサポートなどです。取得することで事業所の運営で必要な幅広い知識やスキルを身に付けていることを証明できます。受験資格は一定のカリキュラムを受講した人です。通信講座でもカリキュラムを受講でき、在宅でも受験可能です。
日本医療事務協会が実施する介護事務の資格です。出題範囲は介護報酬請求事務をするために必要な知識やスキルです。合格することで介護報酬業務や利用者やご家族へのサービス案内、入所手続き、費用に関する問い合わせ対応に必要な知識やスキルがあることを証明することができます。
受験するためには日本医療事務協会認定の介護事務講座を修了する必要があります。認定講座は通学、通信どちらもあります。通学講座は3日間(各6時間)、通信は最短で1ヶ月のため短期間で知識やスキルを身につけたい方にオススメです。
介護事務の資格以外に取得しておきたい役に立つ資格
- 簿記検定
- MOS
- 医療事務
- 介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)
業務の中で経理業務を行うケースもあるため取得しておくと転職の時に有利です。もし転職のために取得するなら最低でも2級以上は取得しておきましょう。
レセプトの作成などパソコンスキルは仕事をする上で欠かせません。ワードやエクセルなど業務を行う上で必要なパソコンスキルがあることを証明するために、取得しておくのもいいでしょう。
求人案件にも歓迎資格として医療事務の資格が入っていることが多くあります。最近は医療と介護の連携が進んでいます。それにより医療機関でも介護保険の知識や介護報酬業務のスキルが要求されるケースが増えています。両方の資格を持っていると就職のチャンスが広がるでしょう。
介護に関する基礎知識が学べる資格です。取得しておくことで同じ事業所で働くスタッフの仕事内容を理解できます。また、時給がプラスされることもあるため、余裕があれば取得しておくといいでしょう。
介護事務の仕事に求められるスキル
コミュニケーション能力
介護事務の仕事で重要なスキルの一つがコミュニケーション能力です。介護施設には体の不自由な方や認知症を患っている方、そのご家族など色々な人がやってます。施設にやってくる方を最初に対応するのが受付です。受付の時の対応で施設に対する印象や信頼が決まると言っても過言ではありません。
また多くの利用者は初めて施設を利用する時は不安を感じていることが多いです。その不安を取り除き、安心して介護を受けれるようにするのも受付を担当する介護事務の役割です。また介護事務は施設の運営を影で支える役目を担っているため、施設内の介護職員など多くのスタッフと連携して業務を行う必要があります。
このように介護事務の仕事をする上でコミュニケーション能力は欠かせないスキルです。
面倒見の良さ
介護業界は人手不足のため、施設によっては介護事務員は施設が運営できるようにスタッフのスケジュール管理や備品の管理など多くの業務を任されるケースが多々あります。時には介護事務の仕事とは関係ない業務をすることも。そのため面倒見の良さがないと嫌になることもあるでしょう。
高い事務処理能力
介護報酬を請求するためには毎月10日までに請求明細書(レセプト)を作成し、審査支払い機関へ提出しなければいけません。介護報酬は施設の収入の大半を占めます。もしレセプトの内容が間違っていると、支払いが遅れてしまったり、減額することもあるためミスが許されません。そのため締め切りに遅れず正確に作業する高い事務処理能力が欠かせません。
電話応対のスキル
施設にかかってくる電話の応対は基本的には介護事務職員が行います。その電話の多くは高齢の利用者からのものが多いです。利用者からの電話対応は独りよがりの会話で延々と話されたりすることも。また突然泣き出したり怒り出したりすることもあるため、思っている以上に対応が難しいケースが多いです。そのため電話応対のスキルがあるとよりスムーズに業務が進みます。
介護事務は忙しい?魅力や大変なこと
介護事務の魅力
- 専門性を活かして長く働くことができる
- 仕事とプライベートのバランスが取りやすい
- 介護の現場を影から支えることができる
介護保険制度の専門的知識やスキルを活かして働けます。また他の介護の職種に比べると、土日休みで規則的な勤務体系のケースが多いため、体力的にも長く働ける仕事です。
介護の仕事は不規則で残業も多い仕事が多いですが、その中でも介護事務の仕事は規則的な日中の勤務のことが多く、休みを取りやすい職種です。また請求業務を行うために月初は忙しく残業することもありますが、それ以外の時は比較的残業せずに早く帰宅することもできます。そのため、他の介護の仕事に比べると仕事とプライベートのバランスが取りやすいといえます。
介護事務の仕事は請求業務が主な仕事のため、施設の売上や経営に大きく関わります。また請求書や領収書の発行、電話応対、備品の発注、業者とのやりとりなどなど施設が円滑に運営されるために必要な業務を行うことで、介護の現場を影から支えます。
介護事務の大変なこと
- 給与が上がりにくい
- 施設によって業務の範囲が異なる
事業所が増えることで介護事務の需要は増えていますが、他の介護の職種と同様に他の業種と比べると給料が高いとはいえません。大幅な昇給が望めないため稼ぎたい人にとっては不満に感じることも多いでしょう。
人手不足の職場の場合は介護報酬の計算や請求書作成などの本来の業務以外にも、ケアマネジャーのサポートや介護の手伝いをすることもあります。また介護事務職員は事務所内で施設全体の状況を見ているため、いろいろな部署のスタッフから質問を受けたり、仕事を依頼されることも多いです。そのため人によってはキャパオーバーでツラいと感じる人も多いでしょう。
介護の現場で長く働きたいなら介護事務の仕事を目指しませんか?
介護事務の仕事は今後も需要が増える仕事の一つです。また他の介護の仕事に比べると規則的に勤務することでき、休日も固定で取ることができます。そのため介護の仕事を長く続けたいと考えているなら、介護事務の仕事へと転職を選択するのもいいでしょう。