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音楽療法士は音楽で人を元気にするスペシャリスト!気になる資格や仕事内容・求人について

ゆったりとした音楽を聴いて心がリラックスしたり、明るい曲を歌って元気が出たりした経験は、誰でも一度はあるのではないでしょうか。音楽療法士は、そんな音楽の力を最大限に活用して、人の心をケアする専門家です。音楽療法士の仕事内容や求人、気になる資格について詳しく説明していきます。

2018年03月16日更新

MOMOKO (ホプラス編集部)

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[1]音楽療法士の仕事について

音楽療法士の役割

音楽療法士とは、音楽の力を活用して、病気や障害を抱える人などに対するサポートを行なう人のことを言います。具体的な対象者は幅広く、発達に遅れのある子どもや高齢者、心身に何らかの障害を抱える人などが挙げられます。音楽療法を実践することで、他人とコミュニケーションする力を育てたり、認知症の症状を緩和させるなど、対象者が社会でより良く生活できるように手助けをしていくのが、音楽療法士の役割になります。

音楽療法の種類と効果について

音楽療法には大きく分けて、「能動的音楽療法」と「受動的音楽療法」という2つの種類があります。その時の対象者の気分・感情に合った音楽に触れる方が、治療的効果が得られやすいとされています。そのため、音楽療法士は、対象者の心の状態をよく観察し、この2つの音楽療法を適切に使い分けてケアを行なっていきます。

  • 対象者が自発的に音楽と触れ合う「能動的音楽療法」
  • 能動的音楽療法とは、楽器を演奏したり、歌を歌ったりするなど、対象者が自ら音楽に触れていく療法のことです。例えば、みんなで集まってカラオケ大会をするといったことも、立派な能動的音楽療法になります。

    音楽を楽しむことで、心を安定した状態に導くことができます。たとえ楽器や歌が苦手だとしても、音を出すことで、ストレスを軽減させたり気分転換を図ることができるでしょう。他の対象者と一緒に合唱したり、役割分担して楽器演奏を行なうことで、社会性を高める効果も期待できます。また、体に対しても良い効果があります。例えば、歌を歌うことは、肺活量を増進させたり記憶力を向上させることに役立つとされています。

  • 音楽を『聴く』ことに重きを置く「受動的音楽療法」
  • 受動的音楽療法は、能動的音楽療法とは違って、音楽を「聴く」ことがメインの療法です。リラックス効果のあるクラシック音楽や、対象者の好きな曲、幼い頃に聞いていた曲などを使って、精神的なケアを行なっていきます。

    対象者の体や心をリラックスさせることで、ストレスや不安を解消したり、痛みを緩和させる効果が期待できます。

  • 音楽療法を考える上で重要な「心身相関」について
  • 私たちの心と体はお互いに深く関わり合っており、心の状態が体に、体の状態が心に影響を与えています。これを「心身相関」といい、音楽療法を語る上では欠かすことのできないものです。心身相関の例として、不安や緊張を感じている時に体がこわばってしまう、空腹時にイライラする、適度な運動の後に気分がスッキリするといったことが挙げられます。このようなことは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。

    クラシック音楽などを聴いて心をリラックスさせることで、体の緊張がほぐれたり、みんなで一緒に楽器を演奏することで、心が前向きになれるなどの効果は、この心身相関の仕組みによるものです。音楽療法はあくまで補助的な療法であり、病気を治すなどの直接的な治療効果は見込めないものの、音楽には心や体の状態を変化させ得る力があると言えるのです。

音楽療法士の活躍の場と仕事内容

音楽療法士の活躍の場は、病院や学校、介護施設、障害者福祉施設など様々です。子育て支援センターなどの行政分野で音楽療法を実践する機会もあります。

音楽療法士の仕事内容としては、まず、対象者がどのような状態であるのかをヒアリングし、治療計画を作成します。その治療計画をもとに音楽療法を実践し、対象者にどのような効果を与えているのかを注意深く観察します。音楽療法士は、医師や看護師、施設スタッフなどとも連携しながら、音楽療法を行なっていきます。必要であれば治療法の改善や変更を行ない、音楽療法の観点から対象者の心をケアしていきます。

[2]音楽療法士になるにはどうすればいい?

音楽療法士は「国家資格」ではなく「民間資格」

音楽療法士には国家資格がなく、民間資格のみとなります。そのため、資格が無くても音楽療法はできます。しかし、音楽療法士は高い専門性が求められる仕事であり、病院や施設でも資格保有者を求めることが多いため、民間資格の取得を目指すのが一般的となっています。

代表的な民間資格とその取得方法について

日本における音楽療法士の民間資格については、日本音楽療法学会が認定している「学会認定音楽療法士」と、全国音楽療法士養成協議会が認定している「音楽療法士」の2つが代表的な資格として挙げられます。それぞれの資格の取得方法を説明していきます。

  • 日本音楽療法学会が認定している「学会認定音楽療法士」
  • 日本音楽療法学会認定の音楽療法士資格を取得するためには、まずは音楽療法士(補)試験を受ける必要があります。音楽療法士(補)試験とは、音楽療法に関する幅広い知識を問うもので、受験生の基本的な知識・能力、音楽療法士としての適性を確認する目的で実施される試験です。この試験の受験資格を得るには、以下の2つの方法があります。

  1. 学会が認定する学校に入学し、音楽療法を体系的に学ぶ
  2. 全国各地にある資格試験受験認定校へ入学し、必要なカリキュラムを学んで必要単位を修得します。認定校卒業見込み時に音楽療法士(補)試験の受験資格が得られます。

  3. 学会が主催する資格取得のための制度に参加する
  4. 働きながら資格取得を目指す場合など、認定校へ進学することが困難な人を対象としたコースになります。必修講習会と呼ばれる講習会を全て受講すると学会認定音楽療法士(補)試験の受験資格が得られます。ただし、コース参加申請に必要な条件、学会認定音楽療法士(補)試験受験に必要な条件を全て満たさなければなりません。コースの流れと条件の詳細については、日本音楽療法学会の認定規則を確認してください。

    音楽療法士(補)試験に合格すると、学会認定音楽療法(補)資格が取得できます。この資格を取得すると、認定音楽療法士資格審査(面接試験)を受けることができ、審査に合格すると正式に音楽療法士として認定されます。

参考:日本音楽療法学会

  • 全国音楽療法士養成協議会が認定している「音楽療法士」
  • 全国音楽療法士養成協議会が認定している音楽療法士には、専修・1種・2種という種類があり、以下のような違いがあります。

■音楽療法士(専修)
修士レベルとされており、協議会の定める養成課程を91単位以上履修して大学院などを修了した人に付与されます。

■音楽療法士(1種)
学士レベルとされており、協議会の定める養成課程を95単位以上履修して大学などを卒業した人に付与されます。

■音楽療法士(2種)
短期大学士レベルとされており、協議会の定める養成課程を53単位以上履修して短期大学などを卒業した人に付与されます。

協議会認定の養成課程がある大学院・大学・短期大学に入学し、必要な単位数を修めて卒業すると、上記の称号を授与することができます。

参考:全国音楽療法士養成協議会

音楽療法を学べる学校とは?大学・専門学校どちらを選べばいいのか?

音楽療法を学べる学校には、大きく分けて「大学」と「専門学校」の2種類があります。いずれも、音楽学(実技含む)や心理学、医学、社会福祉学など、音楽療法士として必要な知識・技能をしっかりと学べるカリキュラムが組まれています。

■大学
4年制大学や短期大学の場合、音楽学部や福祉学部などに、音楽療法士の養成課程が設けられています。大学や短期大学では、領域をまたいだ幅広い学びができることが特徴であると言えます。音楽療法の専門科目の他に教養科目も学んでいきますが、カリキュラムは学校によってそれぞれ特色があるため、音楽療法士になるための勉強の他に、どんなことを学んでいきたいのかを考えた上で学校選びをするとよいでしょう。

また、学校によっては、日本音楽療法学会認定の音楽療法士(補)の受験資格と、全国音楽療法士養成協議会認定の音楽療法士の両方を取得できる場合もあります。詳しくは、各大学・短期大学に確認してみてください。

■専門学校
専門学校の場合、多くは2~3年制となっており、音楽療法に特化した学校もあれば、福祉系専門学校の様々なコースの一つとして音楽療法士養成課程を設けている学校もあります。音楽療法士に必要とされる専門的な知識・技能を短期間で学べるカリキュラムとなっています。

高齢者施設、障害者施設などでの実習も充実しているため、現場で役立つスキルを幅広く身に付けられるのも魅力の一つであると言えるでしょう。また、学校が独自に認定している音楽療法士資格を取得できたり、社会福祉系の資格を同時に目指せる場合もあります。

通信講座で学ぶことも可能

音楽療法を学べる学校は通学制である場合が多いですが、中には通信制のコースを設けている学校もあります。通信制の場合、DVDなどを使用した自宅学習が中心となりますが、実技や実習など、自宅で学習できない部分に関してはスクーリングで学んでいくことになります。仕事をしていて学校に通えない人などは、通信制コースのある学校を検討してみてもいいかもしれません。

通学制の場合でも通信制の場合でも、学校で音楽療法を学ぶとすると2~4年程度の在学期間が必要になります。より短期間で音楽療法を学びたい人は、民間の企業や団体などが提供している通信講座を活用する方法もあります。このような通信講座の場合、半年ほどの学習期間で音楽療法を学べる講座もあります。

[3]音楽療法士の求人募集と給料について

決して多くはない音楽療法士としての求人募集

音楽療法士の社会的な認知度は徐々に高まってきていますが、音楽療法士としての求人は全国的に見ても少ないのが現状です。音楽療法に力を入れている特別養護老人ホームや、大手の病院などから求人募集が出る場合もありますが、その数は決して多くはありません。それに加えて、常勤職員としての求人募集より、非常勤職員や契約社員、アルバイトとしての求人募集の方が多いようです。

そのため、音楽療法の仕事に携わりたい場合は、音楽療法士としての求人を探すより、まずは音楽療法を実践できる病院や施設などの求人を探した方がいいかもしれません。実際、介護職員や看護師など別の職種として働きながら、その業務の中で必要に応じて音楽療法を行なっている人が多いようです。

音楽療法士の給料・年収

音楽療法士の給料は勤務先によって大きく異なるのが実情です。特別養護老人ホームなどで介護職員として働きながら音楽療法を行なっているケースも多く、その場合、月給は平均約15~17万円、年収にすると250~400万円ほどになります(介護福祉士資格を持っている場合)。また、音楽療法を積極的に取り入れている介護施設や療育施設では、募集職種は介護職員や療育スタッフでも、音楽療法士の資格を持っていれば資格手当が付く場合もあるようです。

[4]音楽療法士に向いている人

音楽が好きな人

音楽療法士を目指す上で、音楽が好きであること、音楽の力を信じていることは大前提と言えます。歌や楽器で得意なものがあるとなお良いでしょう。

音楽療法は、直接的な施術を行なう治療とは異なり、すぐに対象者へ良い効果をもたらすとは限りません。しかし、音楽には心をリラックスさせる効果や、人を元気づける効果があることは確かです。音楽療法士として仕事をしていく上で、このような音楽の持つ特性や効果を理解するとともに、まずは自分自身が音楽を愛し、音楽を楽しめることがとても大切なのです。

音楽で人の役に立ちたいという気持ちがある人

音楽療法を受ける人達は、心身に何かしらの困難を抱えています。対象者によって抱える問題は様々ですが、音楽療法士には、一人ひとりの悩みや不安に親身になって寄り添い、その気持ちを理解しようとする姿勢が求められます。自分の好きな音楽を最大限に活かして、困っている人の力になりたいという強い気持ちを持っている人は、音楽療法士として大いに活躍できるでしょう。

思いやりの心を持ち臨機応変に対応できる人

音楽療法士は、日々変化する対象者の心の状態をよく観察し、その状態に適した音楽療法を実践する必要があります。例えば、前回は積極的に歌っていたのに、今日は一変してずっと暗い顔をしているといった場合、計画していた音楽療法の内容を変更しなければならないこともあります。そのため、音楽療法士には、対象者の気持ちを汲み取ることができる繊細さや、その場の状況に合わせて臨機応変に対応できる柔軟性が求められるのです。

[5]音楽療法士のやりがい・大変なこと

音楽の力で様々な人の役に立てることがやりがいに繋がる

音楽療法士は、高齢者や障害を抱える人、発達に遅れのある子どもや、心に不安を抱える人など、様々な人を相手にします。対象者が違えば、抱えている問題や悩みもそれぞれ異なるため、一見似たようなケースでも同じ方法が適用できるとは限りません。

人の心と向き合っていく仕事であるため、思うようにいかないことも多いですが、対象者が笑顔で音楽を楽しんでいる様子や、心の状態が少しずつ良い方向に変化していく様子を間近で見られるのは、この仕事をしていく上での大きなやりがいであると言えるでしょう。

認知度が低いため専業にするのは難しい

音楽療法は、もともとアメリカで発展してきました。日本でも、近年では心の問題に対する社会的関心が高まっていることもあり、徐々に音楽療法が取り入れられることも増えてきました。しかし、日本での音楽療法士の認知度はまだまだ低く、音楽療法士を専業としている人はほとんどいないのが現状です。先ほども説明した通り、看護師や心理カウンセラーといった他の職種として働きながら音楽療法を実践している人が多いようです。

専門知識を学んでも、音楽療法士一本では待遇の良い求人がなかなか見つからないということが、音楽療法士として働く上での課題になると言えるでしょう。

[6]音楽療法士を目指す人へ

現在のところ、音楽療法士は国家資格でないということもあり、日本における労働環境や給与・待遇面などはまだまだ厳しい状況であると言わざるを得ません。

しかしながら、高齢化の進行や、心の病気が増えてきている現代においては、音楽療法士の必要性が今後さらに高まっていく可能性が考えられます。また、発達障害が社会的に広く知られるようになり、小さいうちから発達障害の診断を受ける子どもも増えてきています。発達障害を持つ子ども達が将来自立して社会生活を送れるよう、治療と教育を行なうことを「療育」と呼びますが、音楽療法はこの療育にも取り入れられ評価を得ています。このような発達支援分野においても、音楽療法士のニーズの増加が予想されるとともに、音楽療法のさらなる発展が期待されています。

音楽療法士を取り巻く環境が急に変わるとは考えにくいですが、音楽療法士の社会的認知が高まっていくことで、より良い環境・待遇で音楽療法を実践できるようになったり、活躍の場がさらに広がっていく可能性があります。音楽が好きで、音楽の力で人を元気にしたいという気持ちがある人は、ぜひ音楽療法士という道も検討してみてはいかがでしょうか。

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