社会福祉士は福祉サービスに関する相談・援助の専門家!気になる国家資格の取得方法や就職先について

「社会福祉士」と聞いて、どんな仕事をしているのかよく分からない人も多いのではないでしょうか。一言で説明するのが難しいほど、社会福祉士の仕事内容は幅広く奥深いのです。そんな社会福祉士の仕事内容や活躍の場、国家資格の取得方法についてご説明していきます。

社会福祉士とはどんな仕事?

社会福祉士は「福祉サービスの専門家」

社会福祉士は、専門的な知識・技術をもって、社会福祉に関する相談援助業務全般を担う専門家です。「ソーシャルワーカー」とも呼ばれます。「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づき誕生した、社会福祉専門の国家資格となります。介護福祉士、精神保健福祉士とあわせて、「三福祉士」と呼ばれています。
社会福祉士の仕事については「社会福祉士及び介護福祉士法」で定められています。主に、以下のような業務に携わります。

  • 日常生活に課題を抱える人からの相談を受ける
  • 身体や精神に障害のある人や高齢者など、日常生活に何らかの支障がある人からの相談を受けます。経済的困難な事情がある人なども、社会福祉士に相談することができます。

  • 助言・指導・援助を行なう
  • 対象者の課題を解決し自立に導いていくために、的確な助言や援助を行ないます。どのような福祉サービスが利用できるかについての情報提供なども行ないます。

  • 医療機関や行政機関などの関連機関との連携・調整を行なう
  • 相談内容に応じて、医師や看護師、児童相談所や介護サービス事業者などといった関連機関と連携を取り、適切な支援を行なっていきます。

社会福祉士は、自分の持っている知識や技術を駆使して、対象者がより良い生活を送れるようにサポートしていきます。しかし、さまざまな生活スタイルがある現代においては、相談内容も多種多様です。そのため、ときに「何でも屋」だと思われることがあるほど、社会福祉士の実際の仕事内容は多岐に渡ります。
そこが、社会福祉士としての仕事の難しさでもあり、面白さでもあると言えます。また、課題が解決した時の対象者の笑顔や、少しでも良い生活を送れるようになった姿を見られることが大きなやりがいに繋がる仕事です。

社会福祉士に向いているのはこんな人!

  • 聞き上手な人
  • 社会福祉士の仕事は、社会的に弱い立場にある人の相談を受けることから始まります。そのため、まずは相手の話にしっかりと耳を傾けることが重要となります。相手の気持ちを理解し、今どのような状況に置かれているのかを的確に判断しなければなりません。自分の考え方や意見を押し付けたりせず、対象者と真剣に向き合い、丁寧に話を聞くよう心がけましょう。そうすることで、相手との信頼関係も築くことができます。対象者との信頼関係の構築は、問題解決のための大きな一歩となるでしょう。

  • 誠実な対応ができる人
  • 社会福祉士に相談に来る人は、人には言いづらい悩みや事情を抱えている場合が多いです。相手の立場や意見を尊重し、親身になって相談に乗る姿勢が求められます。
    また、相談内容を関係のない第三者に漏らさないなど、モラルがしっかりしていることも非常に重要です。

  • 周りと協力して物事を進めることが好きな人
  • 社会福祉士は、対象者に適切な支援をしていくために、行政機関や医療機関といった関連機関との連携・調整を行ないます。そのため、精神保健福祉士や介護福祉士、医師や保健師といったさまざまな職種の人たちと協力しながら仕事を進めていくことになります。「周囲と協力して物事を進めるのが得意」というのは、社会福祉士に求められる大事な素質の一つと言えるでしょう。

社会福祉士になるには国家試験の受験が必須!

社会福祉士は「名称独占資格」です。つまり、国家資格を持っていないと、「社会福祉士」と名乗ることはできません。一応、資格がなくても相談援助業務を行うことはできます。しかし、「社会福祉士」として仕事をする場合は、国家資格の取得が必須となります。
国家資格を取得することで、社会福祉に関する高い専門知識を持っていることが証明できます。相談援助業務を行なうにあたり、信頼も得やすくなるでしょう。

この資格を取得するには、「社会福祉士国家試験」に合格しなければなりません。国家試験の受験には、法律で定められた受験資格が必要となります。どのような受験資格が必要なのか、詳しく見ていきましょう。

国家試験の受験資格を得るにはどうしたらいい?

受験資格を取得する方法には、「大学などで指定科目を履修するルート」「短期養成施設を卒業するルート」「一般養成施設を卒業するルート」があります。

大学などで指定科目を履修するルート

■4年制福祉系大学の場合
指定科目を修めて卒業することで受験資格が得られます。

■福祉系短期大学の場合
指定科目を履修して卒業後、1~2年実務経験をすることで受験資格が得られます。
3年制短期大学の場合は1年間の実務経験、2年制短期大学の場合は2年間の実務経験を積むこととされています。

学習期間が6か月以上である「短期養成施設」を卒業するルート

以下に該当する場合は、短期養成施設で6か月以上勉強し、卒業することで受験資格が得られます。

■福祉系大学などで基礎科目を履修し卒業した場合
■福祉系短期大学で基礎科目を履修し、卒業後実務を1~2年経験した場合(3年制の場合は実務経験1年、2年制の場合は実務経験2年)
■社会福祉主事養成機関で2年以上勉強し、卒業後、2年実務経験した場合
■児童福祉司や査察指導員など、相談援助業務の実務経験として認められる職種を4年以上経験した場合

学習期間が1年以上である「一般養成施設」を卒業するルート

以下に該当する場合は、一般養成施設で1年以上勉強し、卒業することで受験資格が得られます。

■一般の大学を卒業した場合
■一般の短期大学を卒業後、1~2年実務経験した場合(3年制の場合は実務経験1年、2年制の場合は実務経験2年)
■相談援助を4年以上実務経験した場合

上記の通り、社会福祉士の受験資格を取得するためのルートは複雑で、改正も頻繁に行われています。そのため、最新情報と詳細については、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのサイトを確認するようにしてください。

気になる国家試験の内容と合格率について

全問題マークシート方式で出題!正しい選択肢を選ぶ知識を身に付けよう

社会福祉士国家試験は、「人体の構造と機能及び疾病」や「心理学理論と心理的支援」、「社会理論と社会システム」などをはじめとする全18科目群から幅広く出題されます。ただし、精神保健福祉士の資格を持っている場合は、受験申込時に申請すれば一部科目が免除されます。

試験は基本的に、5つの選択肢から正しいものを選んで回答するマークシート方式となっています。正しい選択肢を選ぶ知識をしっかりと身に付けておきましょう。

試験時間は240分、出題数は150問で、配点は1問につき1点です。全科目において1点以上、全体で6割程度得点することが合格目安とされています。平成28年度の試験では、約46,000人の受験者数に対し、合格率は25.8%となっています。合格率はそこまで高くはありませんが、数ある国家試験の中では、普通レベルの難易度であると言われています。

社会福祉士国家試験の受験料は、15,440円です。ただし、精神保健福祉士と同時受験の場合は、28,140円となります(社会福祉士13,980円+精神保健福祉士14,160円)。科目免除で受験する場合の受験料は、13,020円になります。

試験合格のためには通信講座などを活用するという方法もある

国家試験に合格するためには、約300時間の勉強時間が必要であると言われています。働きながら資格取得を目指す場合などは、通信講座を利用して効率的に学習するのも一つの方法です。受験のチャンスは年に1回のみです。資格取得を急いでいたり、まとまった学習時間を取ることが難しい人は、通信講座の活用も検討してみましょう。

社会福祉士の求人はどれくらいあるの?活躍の場は?

社会福祉士の活躍の場は多種多様

社会福祉士の働く場所は、非常に多岐に渡ります。主な活躍の場としては、「行政機関」「保健・医療機関」「障害者福祉施設」「高齢者福祉施設」「児童・家庭福祉施設」「民間企業」が挙げられます。どの分野で働くかによって、相談内容は随分違います。
なお、「社会福祉士」というのは法律上の名称であり、働く場所によって「生活相談員」や「ケースワーカー」「児童福祉司」などさまざまな名称で呼ばれることが多いです。
社会福祉士の働き方について、いくつか具体例をご紹介していきます。

  • 社会福祉協議会で働く場合
  • 社会福祉協議会などに配置されている社会福祉士は、「コミュニティソーシャルワーカー」と呼ばれることがあります。
    コミュニティソーシャルワーカーが主に対象とするのは、地域住民です。介護や失業などの生活上の悩みを抱える住民に対して、早期に課題を発見し、関連機関によるサービスを受けられるようにするなどの支援を行ないます。また、行政機関と地域団体との連携を強化し、地域において福祉の課題を解決できるよう、体制作りも行なっていきます。住民一人ひとりに対する相談・支援だけでなく、地域全体の福祉力を向上させることも、コミュニティソーシャルワーカーに期待されている役割なのです。

  • 学校に派遣されて働く場合
  • 教育委員会に配置され、学校におけるいじめや不登校などの問題や、子どもの家庭環境の問題解決にあたります。このような社会福祉士を、「スクールソーシャルワーカー」といいます。
    子どもやその家族の気持ちを尊重し、教員や児童相談所、市役所や福祉サービスなどと連携を取りながら、問題解決に向けて支援していきます。

  • 保健医療機関で働く場合
  • 保健・医療機関で働く社会福祉士を、「メディカルソーシャルワーカー」と言います。対象とするのは、患者やその家族です。
    患者や家族からの相談に応じ、入院の調整や退院時の援助を行なったり、退院後の社会復帰の支援を行なったりします。医療費や生活費のことなど、経済的な問題を抱えている場合は、関連機関と連携しつつ保険制度や福祉のサポートなどを利用することで、解決に向けて支援していきます。

  • 介護施設で働く場合
  • 特別養護老人ホームなどの介護施設で働く社会福祉士は、「生活相談員」と呼ばれることが多いです。
    利用者やその家族と面談を行なって、相手のニーズや生活上困っていることを把握したり、援助計画を立てます。ケアマネジャーや介護職員、主治医などとの連絡・調整も行ない、利用者とその家族を支援していきます。このほか、利用者受け入れ時の契約手続きといった窓口業務を行なったり、施設によっては現場の介護業務も行なうことがあります。

社会福祉士の求人について

近年では、相談援助に携わる職種の採用条件として、「社会福祉士の資格を持っていること」が掲げられることが多くなっています。地域包括支援センターでは、社会福祉士の資格取得者を必ず置くこととされています。また、メディカルソーシャルワーカーの採用に関しては、ほとんどの医療機関で社会福祉士資格を所有していることが条件となっています。
さまざまな分野で社会福祉士が求められているため、求人が安定している仕事だと言えます。

就職先を選ぶ際には「仕事内容」をよく確かめて!

社会福祉士として就職する際には、仕事内容をよく確かめるようにしましょう。就職先によっては、相談援助業務に加えて、他の仕事を兼務する場合もあるからです。
上記でも説明しましたが、介護施設などに就職した場合は、相談員としての仕事だけでなく現場で介護の仕事を行なうことが多々あります。そのため、相談援助業務に専念できず、勤務時間内に本来やるべき仕事が終わらないなどといった支障が生じる場合があるのです。

就職先を選ぶ際には、自分が社会福祉士として何がしたいのかをよく考えましょう。その上で、募集職種の具体的な仕事内容などをよく確かめ、自分のやりたいことと照らし合わせてみることをおすすめします。

気になる社会福祉士の給料とは

社会福祉士の年収は約300~480万円ほどで、平均約380万円となっています。月給は、初任給の場合で約17~20万円ほどです。資格手当が付く場合もあり、平均額は約11,000円となっています。社会福祉士の給料・待遇は、就職先や職種によって大きく異なりますが、福祉業界では比較的高い水準にあると言われています。実際、平均年収で比べてみると、介護福祉士は約260万円、精神保健福祉士は約350万円となっています。三福祉士の中では、社会福祉士が最も高い給料水準となっているのです。

また、求人が多いわけではありませんが、公務員として自治体の生活保護課や福祉課などで働く場合は、より安定した給料・待遇が期待できます。基本的に解雇の心配などがなく、生涯働き続けることが可能で、ボーナスも支給されます。

参考元:社会福祉士・介護福祉士就労状況調査結果の実施概要

社会福祉士の需要は年々高まっている

近年では、相談援助業務を行なう職種に、社会福祉士の資格を持っている人を求める傾向が強まってきました。また、介護業界においては、高齢化の進行に伴い、介護・福祉関連の仕事に就く人を大量に必要としている状況です。現場で働く介護職員だけでなく、社会福祉士の需要も今後さらに増えていくことが考えられます。多様化・複雑化していく福祉制度を上手に活用していくためにも、専門知識を持った社会福祉士のサポートがますます必要となるでしょう。

また、社会福祉士は、福祉分野でのキャリアアップを目指す人にも最適な資格として知られています。社会福祉法人においては、社会福祉士の資格を持っている人が、介護部長や施設長に昇進する場合が非常に多いのです。一方で、社会福祉士として独立し、事務所を構える人もいます。「独立型社会福祉士」と呼ばれ、個人で相談援助業務や成年後見人代行などを行ないます。組織で働く社会福祉士と違って経営面についても考えなければいけませんが、「自分の信念を大事にしながらやりたい仕事を存分にできる」というメリットがあります。まだまだ数自体は少ないですが、社会福祉士の新しい働き方として、注目されています。
常に向上心を持って業務にあたり、自分の信念に基づくサポート・働き方を実現できるように努力する姿勢が、社会福祉士には求められていると言えるでしょう。

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