塾講師はアルバイトじゃないとできない?正社員として働く方法と労働時間について

塾講師には「給料が高そう」「午後出社でゆっくりできそう」「有名大学じゃないと働けない?」などのイメージがあるのではないでしょうか?しかし、塾講師は授業をするために勉強をしなければいけなかったり、勉強だけではないコミュニケーション能力がとても大切だったりなど、決して楽な仕事ではありません。今回は、塾講師の仕事内容について解説いたします。

塾講師になるにはどうすればいい?

塾講師は教員免許が必要なの?

塾講師になるにあたって、教員免許が必要というわけではありません。しかし、教員免許を持っていることは面接の時に大きなアピールポイントになり、優遇される可能性は高いでしょう。塾講師は求人条件さえ満たしていれば、未経験からでも歓迎される職種でもあります。

塾講師の正社員として働く場合

塾講師の正社員として働くには、一般企業と同じく採用試験をクリアしなければいけません。また、学力を必要とする職業のため、一定レベル以上からセンター試験レベルの採用テストがある塾がほとんどです。塾により試験レベルはまちまちですが、学力試験対策は必要でしょう。

  • 大学卒業が最低条件
  • 塾講師になるには大学を卒業していることが最低条件です。有名大学を卒業していることで面接の時にアピールすることができます。しかし、有名大学を卒業していても教えることが苦手では実際に授業をこなしていくのは難しいでしょう。有名大学を卒業していなくても教えることが得意であれば塾講師になれるでしょう。

塾講師のアルバイトとして働く場合

塾講師として働くにはアルバイトから始めることも可能です。また、塾講師はアルバイトが戦力になることが多く、実績を積める職種でもあります。

  • 大学生であることが最低条件
  • アルバイトの採用条件として、大学を卒業しているか大学在学中であることを最低条件としている塾がほとんどです。また、アルバイトから実績を積み正社員として働いている塾講師も多数存在します。

資格や受験経験をあると塾講師として働くときに有利になるかも!?

  • 受験の経験
  • 自分自身が受験の経験をしておくことで、受験対策としての勉強のポイントや生徒がつまずきそうなところなどをアドバイスすることができるでしょう。中でも、有名私立高校の受験で合格している場合は採用に大きくプラスされる可能性があります。大学受験では、医学部や東大・京大など超難関校を専門にしている塾は、それぞれの合格経験があることを採用条件にしている場合もあります。

  • 学習塾講師検定
  • これは2008年から実施されている資格です。民間資格であり通称「塾検」と呼ばれおり、受験資格は満18歳以上です。塾検は3級から1級までありますが、1級は2級を取得してからではないと受験することができません。試験は全教科ではなく事前に申請した科目のみ行われます。3級はテキスト学習と筆記試験のみですが、2級・1級は模擬授業映像の提出が必要です。

    試験内容は科目の理解度、基本的なマナーなどの知識も含まれます。模擬授業映像の準備は少し大変な作業になりますが、塾検は国家検定化される動きがあり、塾講師としてキャリアアップを考えている人に注目されている資格です。28年度の合格率は3級は40%2級55%1級22%となっています。

    参考:全国学習塾協会 学習塾講師検定合格率

  • TOEIC
  • 英語の能力があることを示す資格の1つです。高いスコアのTOEICを取得していることで英語の授業ができたり、中学・高校受験のためにTOEIC取得を目指す生徒へ対策やアドバイスができたりと大きなメリットに繋がります。TOEICは内申書でも重要視されているため、中高生の取得が増加傾向にあります。

    TOEICホームページ

  • 実用数学技能検定(数検)
  • 文部科学省が後援している技能試験です。「数学検定」は1級から5級まであり、「算数検定」はかず・かたち検定で6級から11級まであります。数学・算数検定は実用的な計算や作図、測定、表現、整理、統計、証明を記述式で行う全国レベルの実力・絶対評価システムになっています。現在では東南アジアやアメリカでも実施され、高い評価を得ています。受験資格に制限はなく、年齢など気にせずどの級からでも受験することが可能です。

    数学検定には、1次の計算技能検定と2次の数理技能検定があります。2つとも同日に行いますが、算数検定(かず・かたち検定)は1次や2次と分かれていません。原則として、同じ検定日に複数の級を志願することはできません。算数検定の一部では併願受験が可能です。1級は団体での受験をすることはできません。

    数検には英語版もあり、年に2回受験することが可能です。しかし、英語版は団体・個人ともに1級から8級のみです。中高受験の入学優遇資格に指定されていたり、単位として認められている大学もあります。団体受験はほぼ毎月行われていますが、個人受験は年に3回ほどです。合格証明書を発行してもらえることで資格取得をアピールすることができ、これから検定を受験する生徒たちへ対策や指導アドバイスもできることから、取得していると有利になる資格と言えるでしょう。

    数学検定・算数検定ホームページ

  • 日本漢字能力検定(漢検)
  • 1992年から日本漢字能力検定協会が主催している検定資格です。検定では「読む」「書く」だけではなく、漢字の意味を理解し文書の中で適切に使える能力を測ります。受験資格に制限はなく何歳からでも受験することが可能です。

    受験方法は「個人受験」「団体受験」「漢検CBT」があります。漢検CBTとは2級から7級のみ会場のコンピューターを使って受験するシステムです。ペーパー検定と同じく、合格すると資格を取得することができ、検定日を特定しなくても受験することが可能です。

    10級から1級、準2級と準1級と12階級あり、小学校1年生レベルから大学生レベルまでの幅広い範囲で受験することができます。実施期間も2月・6月・10月の年に3回あり、中高受験や大学受験でも評価基準として取り入れている学校も多くあります。そのことから、漢字検定に関する知識や経験を持っていることは塾講師として有利になるでしょう。

日本漢字能力検定ホームページ

塾講師の仕事内容

塾講師の仕事とは、主に中学校・高校・大学の受験対策と学校で学ぶ勉強の予習や復習です。それぞれ学習指導をすることに変わりはありませんが、指導方法や学習計画などは全く異なります。また、生徒一人ひとりの性格やモチベーションによっても指導方法を考えなければいけません。

塾講師には2種類の働き方がある

質問に答えたりわからないことを教えることが仕事の一つですが、授業の仕方には2種類あります。授業の展開や準備などが大きく異なるため、どちらか一方を専門に行う講師がほとんどです。

  • 個別授業
  • 生徒と1対1または1対2などとても少ない人数で行う授業です。生徒の様子を伺いながら、指示や指導をします。一人ひとりの生徒に合わせて進行することができますが、生徒が最後までしっかり理解をするまで根気よく指導することが必要です。授業前の準備は生徒のレベルにあった準備をします。

  • 集団授業
  • 集団授業とは学校と同じ形で、塾講師が黒板やホワイトボードを使って授業を行います。集団授業は人数が多い分、綿密な授業計画が求められるため準備にも時間がかかります。また、目配りも必要であり生徒たちの指導も行うことが必要となります。

生徒とのコミュニケーションを取る

生徒とのコミュニケーションを取ることもとても大切な仕事です。学習意欲がない生徒や結果が思うように出ない生徒など、さまざまな生徒がいます。熱心に学習指導しても生徒のやる気がなければ十分な勉強効果を得ることはできません。学習面以外でのコミュニケーションを取ることで、生徒と信頼関係を築きモチベーションをあげることも塾講師の仕事の一つなのです。生徒の意識が変化することで、学習に向かう姿勢も180度変化することもあります。

受験を控えた生徒には緊張や不安などで追い込まれすぎないように、士気を高めるためにも学習指導以外のコミュニケーションを取ることを大切にしています。生徒と上手に向き合うことで、停滞していた成績が目を見張るほど上がることもあるのです。

保護者との面談

学習指導以外でも保護者との面談は必要になります。塾での様子や家庭での学習方法など、保護者と情報を共有することは、生徒の成績向上や学習効果を高めるために必要不可欠なのです。

塾講師の働きかた

  • 始業時間は午後から
  • 授業は午後からのことが多いため午前中は自由に使えます。学校が休みの日や受験対策教室などは朝から授業が入る場合もあります。出社してからは、講師同士で生徒や保護者の情報共有、配布物や連絡事項などのミーティングを行います。担当生徒や担当授業の指導計画の予習やプリント、小テストなど生徒へ配る印刷物の用意などもしなければいけません。

    授業をする上で必要不可欠な学習の準備や教材研究を行うために、午前中を返上して行う講師も多いのが現状です。また、会議や研修が勤務時間外の午前中に行われる塾も珍しくありません。

  • 定時に終わることは少ない
  • 授業が終了しても、個別に質問してくる生徒の対応や補習授業など行うこともあります。終わり次第、授業での出来事や生徒の様子などその日にあったことを他の講師たちと共有するためミーティングを行います。必要に応じて保護者に連絡をするなどの対応をする場合もあります。

    翌日の学習準備を終えてから退社する講師も多いですが、授業以外の仕事もたくさんあるため、帰りは終電近くになることも珍しくないようです。「定時だから」といって対応を途中にし帰ることができない職業です。そのため、講師の善意による勤務時間超過となり残業代が計上されないことも少なくありません。このように残業の定義が曖昧なのも、塾や教育業界全般にいえることなのです。

  • 塾講師は休日出勤が多い
  • 塾講師にとって土日の連休はほぼ存在しません。土日に授業を行ったり、自習室を開放していたりすることが多いため、塾講師の週に1度の休日は平日になることもあります。土日祝日の出勤は休日手当がつくこともほとんどなく通常出勤とされます。しかし、ゴールデンウィークやお盆、お正月などは特別手当を付与する塾が多くみられます。塾の繁忙期である夏休みや冬休みに行われる講習は、連続勤務になることが多く、休みを取るのが難しくなります。

女性塾講師は保護者・子どもから人気

女性塾講師を求める保護者や塾は多く、期待されていると言ってもいいでしょう。人を育てることは女性特有の生まれ持った能力の一つなので塾講師として役立てるとされています。特に女子生徒からの支持が高く、女性塾講師は必要不可欠です。

  • 人気のその理由とは
  • 女性は客観的判断力があり全体を見ることができます。また細かいところに気付き、気を配れることや母性を持った包容力があります。また、女子生徒は女性塾講師を希望することが多く、男性に苦手意識を持っている生徒は少なくありません。特に多感な時期である女子生徒への指導は女性塾講師は必要であると言えるでしょう。
    文系科目はもちろんのこと、男性講師が多い理系科目に関しては、女性塾講師が特に重宝されます。

  • 需要はあるが将来を考えると働きにくい?
  • 塾において女性塾講師の需要は高いですが、長期で働く場合は弊害も多いのが現状です。勤務時間が深夜になることが多いため、結婚や出産を控えた女性にとっては両立させることが困難になるでしょう。また、休日も決まっていないため、家族の理解と協力が必要です。そのため、離職していく女性塾講師は珍しくありません。

    しかし、正社員ではなくパートタイムや非常勤講師として働くことで家庭や育児と両立できる方法もあります。収入は大きく減ってしまいますが、仕事が深夜に及ぶこともなくなり、希望した休日の確保や働き方を選べるので塾講師として続けることが可能です。塾側にとっても、経験のある女性塾講師を失うことは大きな損失になるので、フルタイムではなくても継続して勤務してもらうことを望む場合が多いです。

塾講師の年収について

正社員の場合

塾講師の年収は350万円からスタートするところが多いでしょう。月収が約20~25万円で、年に2回ボーナスがあります。初任給は比較的高めに設定してありますが、その後はなだらかに上がる傾向にあります。勤続年数や塾の規模により異なりますが、全体的な平均年収は425~450万円が相場でしょう。月収にして27~29万円です。塾内でキャリアアップすることで年収も上がります。管理職である塾長クラスになると700~1,000万円になることも可能です。

塾によって待遇にも違いはあります。社会保険完備や退職金制度完備など比較的整っている塾が多いですが、就職する際は確認することが大切です。

アルバイトの場合

アルバイトや非常勤講師の場合、1コマでの時給換算になります。平均時給は1,500~2,000円ほどですが、経験や実力次第で3,000円近くまで上がることもあります。時給が高額ではありますが、授業する上で準備などに時間をさく必要があるため、大学生でアルバイトをするには、多忙になることは間違いないでしょう。アルバイトであっても生徒にとって先生には代わりはないので、正社員と同じくらいの責任が必要とされます。

塾講師の求人状況

塾講師はインターネットなどさまざまな媒体で募集していることが多いため、たくさんの情報を比較的簡単に得ることができます。全国的に募集も多く希望の地域で勤務することが可能な職業です。

塾講師に転職するには

塾講師は中途採用も多く転職者が活躍できる職種です。

  • 年齢制限に注意!
  • 中途採用が多い中、40歳前後までと年齢制限が設けられている塾がほとんどです。塾講師として転職するにはなるべく早めに決断をすることをおすすめします。

  • 未経験からでも大丈夫
  • 未経験でも塾講師になることが可能です。一般企業でリーダーシップをとっていた人やコミュニケーション能力がある人は、塾側にとっても高いスキルがあるとみなされ採用に繋がるでしょう。

  • アルバイトから経験を積む
  • 塾講師の求人の中で最も多いのが、アルバイトなどの非正規雇用です。年収は大幅にダウンしてしまいますが、アルバイトで経験を積み正社員へと目指す方法も一つの手段です。塾講師は掛け持ちをすることも可能なので、楽な仕事ではありませんが、収入の面をカバーすることもできるでしょう。

塾講師は生徒と苦楽を共にする中で成長し喜びを感じる仕事

塾講師にとって生徒のやる気を出させることが大切です。勉強に対する熱量が違うと、結果を出すことはできません。学習に真剣に取り組むようにと生徒に対して無理強いをしてしまうと、逆に反抗的になってしまい意思疎通を取ることが不可能になってしまいます。

勉強に取り組む以前に、生徒とのコミュニケーションや信頼関係・尊敬される先生になることが重要と言えるでしょう。さまざまな苦労や悩みを生徒と共有することで、自分自身の成長にもつながります。生徒が志望校に合格したときや、成績が上がったときは、塾講師をしていて良かったと喜びを感じやりがいを見出せる瞬間でしょう。

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