和裁士の求人募集は少ない?必須資格や学校・見習い期間の給料について

最近、観光地で着物をレンタルして街を歩くのが流行っています。普段なかなか着ることがない着物を楽しめる良い機会ですよね。着物は「和服」とも呼ばれますが、和服は日本古来の民族服とも言える昔から日本人が着ていた服です。今回はこの和服を作る【和裁士】の仕事について詳しく解説していきます。

和裁士の仕事を知ろう

和裁士の仕事内容

和服を作る時、反物という一枚の長い布を裁断して手縫いで縫っていきます。基本的にはミシンは使わず、人の手で丁寧に縫って完成させていきます。この和服を作る人のことを「和裁士」と言います。和裁士は反物の柄が合うように柄合わせをして裁断し、縫いしろを決めて印をつけて縫っていきます。オーダーメイドの場合、お客様の身体に合わせて採寸して身体の大きさに合わせて反物を裁断します。

また、和服を作る仕事以外には「直し」の仕事もあります。古くなった和服の修理や体型の変化に合わせた直しなどの仕事です。縫い目のほころびや生地のたるみを直す仕事もあり、専門的な知識と技術が必要な仕事です。
実際に和服を縫ったり直したりする以外には、専門学校やカルチャーセンターなどで和裁を教える講師として働いている和裁士もいます。

和裁士の収入・平均年収は?

和裁所で働く場合、見習いのときは勉強させてもらいながら働きます。少しずつ浴衣などが縫えるようになったら、自分が縫った分を給料としてもらう事が多いようです。最初のうちは仕立て代が安い和服を縫って経験を積んでいきます。そのため、給料はそれほど高くないのですが、和裁の勉強をさせてもらっていると思って働いている人がほとんどです。

正社員になるためには1級、2級和裁技能士資格を取得することが有利になる場合があります。正社員になれば福利厚生や交通費などが支給されることがほとんどです。和裁所の資格を持っている正社員の平均月収は約18万円~20万円程です。資格を持っていない場合は14万円~15万円程度になります。

フリーランスで和裁士として活躍するのはとても難しく、年収は150万円以下とされています。和服を着る人が減っていることで受注自体が少ないのです。フリーランスとして収入を増やすには、ファッションに関する他の資格を取得するのも一つの方法です。

和裁士に向いている人の特徴とは

  • 長時間の作業が苦ではない
  • 和裁士の仕事は細かい作業を一日中続けなければなりません。反物を丁寧に扱い、細かい目で生地を縫っていくのです。間違いがないように布を組み合わせて、ひたすら縫っていく作業が好きな人に向いている仕事です。

  • 黙々と一人でやる作業が好き
  • 和裁士の収入は縫った和服の枚数によって変わってきます。ですから、なるべく早く丁寧に縫うために長時間誰とも会話もせずに縫っていかなければなりません。細かい作業ですので、集中して作業に取り組むことが必要です。一人で黙々と作業する人には和裁士は向いていると言えます。

  • 責任感を持っている
  • お客様から和服を縫って欲しいと依頼されたら、反物を裁断して着物を縫います。お直しの着物を預かることもありますが、思い出が詰まった大切なものかもしれません。同じものは二度と作れない大事な着物を丁寧に扱い、納期に間に合わうように仕事をしなければなりません。仕事に誇りを持って責任感があることが重要なのです。

  • 和裁が好きである
  • 和裁技能士は国家資格でありますが、収入はさほど高くないのです。正社員で働いている人でも月収は18万円程で決して高いとは言えません。仕事は神経を使う細かい作業で、割に合わないと感じてしまうことがあるかもしれません。しかし、和裁が好き、着物が出来上がっていく過程が楽しいと思えて、やりがいを感じながら仕事が出来る人は和裁士に向いています。

和裁士になるための勉強方法

服飾関係学科がある大学で勉強する

和裁を学べる大学は全国にいくつかあります。京都府石川県は伝統工業産業が盛んで、和裁専門コースを設置している学校が存在します。大学では、技術だけではなく和服に関する歴史や背景についても深く知り、和服を身近に感じながら学ぶことができます。卒業後、和裁所で働くか講師としてスクールなどで教えるか迷っている人は、大学に進学することをおすすめします。大学卒業の学歴を持っていることで、選択の幅が広がることが多いためです。

和裁専門コースがある専門学校で勉強する

大学にある和裁の専門コースは、服飾関係の学科の中にあるのに対して専門学校は和裁専門の和服に特化した学校が多いのが特徴です。専門学校では講師になるのを目指している人向けのコースもあり、目的に沿った学び方ができます。また、1級または2級の和裁技能士検定試験合格を目指している学校もあるので、資格取得を考えている人にはおすすめです。

和裁士の通信講座で学ぶ

一部の服飾専門学校では、和裁士の技術を学ぶための通信教育講座があります。配布されるテキストを見て課題をこなす方法を取っているところが多く、課題を縫って提出して講師がそれをチェックします。通信講座の良い点は自分のライフスタイルに合わせて時間を作り学べるところです。子育て中やパートをしながら学ぶこともできるのはメリットといえます。

一方、デメリットとして挙げられるのは、講師や他の人が作った作品を実際に見ることができないところです。テキストを見ながら学ぶのと、実際に人が縫ったものを見るのとはやはり得るものが違います。また、自分で時間をやりくりしなければならないので、時間配分が苦手な人には向いていないのではないでしょうか。

和裁士は独学でなれる?

和裁は独学で覚えるのは難しいでしょう。専門的な知識を必要とする和裁は、自分が着る浴衣を縫うくらいなら、本やネットで学べるかもしれませんが、それを仕事にするためには学校などで学ぶことが必要です。祖母や母親が専門的な知識を持っていて和裁士をやっている、やっていたという場合に指導してもらうことで和裁を身につけることはできますが、独学で和裁士になるには難しいと言えるでしょう。

和裁士の資格とは

和裁技能士国家資格

  • 資格の種類と受験資格
  • 和裁に関する国家資格は、和裁に関する技能を一定の基準として検定するもので、国が証明する検定制度です。「和裁技能検定」は、和裁に関するただ一つの国家資格です。検定は、以下のものがあります。

    3級:1年目で取得できます。合格すると「3級和裁技能士」の称号が与えられます。
    2級:2年以上の実務経験がある、または3級に合格してから翌年以降取得可能です。合格すると「2級和裁技能士」の称号が与えられます。
    1級:7年以上の実務経験がある、または2級に合格してから2年後から取得が可能です。合格すると「1級和裁技能士」の称号が与えられます。

  • 和裁士国家試験の難易度
  • 和裁技能検定の国家試験は受験者自体がとても少なく、2016年に実施された試験は3級が35人で2級受験者は13人、1級受験者は18人でした。3級は長襦袢を縫う試験があり、時間が長く設定されているので技術されあれば合格しやすい試験で、2016年の合格率は57.1%でした。2級は女子用袷長着で、縫う時間も短めな設定になっています。合格率は低くなり2016年の合格率は30.8%でした。1級の試験は仕立てる量が増えて、部分縫いもあるため難関になります。2016年の合格率は50.0%でした。2級と1級は縫う速さも必要になってくるため、取得が難しくなっています。

東京商工会議所の和裁検定

  • 検定の種類と受験資格
  • 東京商工会議所の和裁検定の受験資格は、1級受験者以外は学歴・性別・年齢・国籍に制限がなく誰でも受験することができます。一番難易度が高い1級を受験する場合は、東京商工会議所の和裁検定2級または国家検定の2級を取得している者であることが受験資格です。検定の種類は以下の通りです。

    1級:一番難易度が高く、職業として高度な実技と理論全般について精通しているレベル。
    2級:職業としての実技と理論を修得しているレベル
    3級:基本的な実技と理論を修得しているレベル
    4級:初歩的な実技と理論を修得しているレベル

  • 和裁検定の難易度
  • 平成29年9月に実施した検定の合格率は、4級は76.0%、3級は57.6%、2級は29.4%、1級は40.0%でした。合格基準は100点満点中70点以上であることです。実技の場合、完成しなかった場合は不採点となります。

和裁士の就職場所と求人募集

和裁所

和裁所とは、呉服店などからの依頼で和服を作ったり直したりする仕事をするところです。全国各地にある和紙所では求人がありますが、国家資格を持っている人は持っていない人よりも給料が高い場合があります。

もしも資格を持っていなくても、和裁の知識と確かな技術があれば正社員として採用されることもあります。和裁所でパートを募集していることもあります。パートとして雇われた場合は、和服を一人で仕上げることはほとんどなく、お直しや部分的なところを縫う仕事を任されることがほとんどです。

フリーランスで働く

和裁所で経験を積んで技術を磨いてから、「仕立て屋」として独立する和裁士もいます。仕立て屋は和裁所が呉服店や個人のお客様から頼まれた仕事を、下請けとしてもらって収入を得て居る所が多いです。仕立て屋は仕事がないと収入がないということなので、収入が安定しないのはデメリットと言えます。

しかし、丁寧に仕事をして期日をしっかり守るようにして、和裁所から信頼を得ることができれば仕事を回してもらえる可能性が高くなりますので、常に努力して技術を磨いていくことが重要です。

和裁士の将来性

現在、普段の生活で着物を着る人はほとんどいないため、和裁所の経営は厳しくなっていっています。しかし、全く仕事がないわけではなく、習い事や仕事で和装する人のために仕事はあるので、なくなることはないでしょう。着物が縫えるだけではなく、着付けの資格を取ったりして着物に関わる副業を持つのも生き残るためには有効でしょう。

また、最近はインターネットを使った商売が盛んになっています。和服を仕立てるとなると、身体のサイズを測ったりしなければならないため、インターネットでは難しいでしょうが、お直しくらいでしたらネットで受注することが可能です。このように、時代の流れに乗った作戦も考えながら和服の良さを伝えつつ、仕事していくこともできるのではないでしょうか。

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