板前の修業は5段階に分けられている!たくさんの女性が活躍しているお店もご紹介

日本料理(和食)は食べ物の旬や素材そのものを生かした日本の食文化です。ユネスコ無形文化遺産に登録されており、世界からも注目を集めています。その日本料理を、高い技術と巧みな技で提供する人のことを「板前」と言います。高い技術を習得するためにはどんな修行が必要になってくるのでしょうか?板前の主な仕事内容と5段階ある修行について、また女性の板前がいる話題のお店についてご紹介します。

板前の世界を知ろう!

板前になるにはどうしたらいい?気になる修行内容の紹介
日本料理は素材の味を利用し、旬の食べ物を使って季節感を出しています。板前の仕事は、刺身や焼き物・揚げ物、煮物、魚料理、肉料理など、素材を生かした料理をお客様に提供します。
板前の世界では、まだ師弟制度が残っていて修行することが必須です。どの店で修行したのか、誰に師事したのかで将来が決められます。

主な仕事内容とは

板前仕事は、早朝から仕入れや仕込みをすることから始まります。すぐに帰られるというわけではなく、夜遅くまで調理をします。調理は、刺身などの生もの担当、味付け担当、焼き方・揚げ物担当、盛り付け担当など、各技術を習得した人がそれぞれ担当していきます。
お客様の前に立って料理をする人のことを「板前」と呼びます。板前はすべての技術を習得して実力のある人だけがなれる仕事です。まだ修行途中の人のことを「裏方」と呼んでいます。
板前になるためには、まず見習いの下働きから始めます。板前で一人前になるまでには修業期間が必要であり、最低でも5年、長い人になると10年~15年と修業を続けることもあります。

板前の地位別で違う呼び名

板前は技術の習得別に明確な地位が分かれます。代表的な地位を上位から紹介していきます。

  • 板前と呼ばれる地位
  • ■花板(はないた)
    板場を仕切る最上位者の料理長を花板といいます。立板(たていた)、板長(いたちょう)とも呼ばれることがあります。
    ■次板(つぎいた)
    副料理長のことを次板といいます。脇板(わきいた)、二番とも呼ばれることがあります。

以上の二者はカウンターに立ちお客様の前に出る事ができます。料亭によっては、三番板前という上から三番目の地位である人がいるところもあります。

■椀方(わんかた)
お吸い物などを作る人です。
■煮方(にかた)
煮物を作る人です。

  • 裏方の地位別で違う呼び名
  • ■焼方(やきかた)
    焼き魚などの焼き物を作る人です。
    ■揚場(あげば)
    天ぷらなどの揚げ物を作る人です。
    ■追い回し
    料理を作ることはほとんどなく、掃除や買い出しなどを担当します。板前を目指す修行は追い回しからスタートします。

板前の気になる給料はどのぐらい?

板前になるにはどうしたらいい?気になる修行内容の紹介
板前の給料は、能力や経験、勤める店によって大きく変わってきます。調理師という職業分類で見ると、月給が約25万円程、年収にすると約330万円程度が一般的です。長年経験を積んだ板前や一流と言われる店に勤めている場合は待遇面もよくなり、年収は500万以上になることが多いようです。また、独立して自分の店を持つ場合は、その店が繁盛すれば売上も上がり収入も増えるでしょう。

修行中の給料は、住み込みの場合は月に数万程度、住み込みでない場合は約15万ほどになるところが多いです。

板前に向いている人4つ

  • 強い覚悟を持つ人
  • 板前になるためには、相当の覚悟が必要になります。下働きでは怒られたり厳しく言われることも多いので、怒られたことを気にして落ち込んでいたら、修業を続けることができなくなります。タフな精神力と長時間動き回り立ち続ける体力とともに、どんなにつらくても修行を続けるという強い覚悟が最も求められるでしょう。

  • 手先の器用な人
  • 修業を積むことである程度は上達していきますが、もともと手先が器用で細かい作業が得意という人が板前に向いているでしょう。

  • 美的センスのある人
  • 盛り付けは日本料理の大事な要素の一つです。料理を目で楽しむという言葉があるように、よりおいしそうに盛り付けを考えるには美的センスも必要になります。盛り付けは、技術だけでまかなうことができないこともあるため、豊かな感性を持っている人が板前に向いていると言えます。

  • 人を喜ばせることが好きな人
  • どんなに料理の味が素晴らしくても、お客さまに喜んでもらわなくては意味がありません。おもてなしの心を持ち、気持ちを込めて丁寧な調理を行うことは、接客をするうえで大事なことです。お客さまを喜ばせたいと思う気持ちは必ず伝わります。料理を提供することで人を喜ばせたい、という思いが強い人は、板前に向いているでしょう。

板前になるにはどうしたらいい?気になる修行内容の紹介

板前の修業は5段階!

店によって修行の仕方に若干違いはありますが、板前の世界に飛び込み一人前になるための過程に、それほど大差はありません。修行で一つずつ技術を習得し、腕をあげながら地位を変えて板前になっていきます。
日本料理の板前が一人前と呼ばれるようになるには、和食調理の五法である「生・煮る・焼く・揚げる・蒸す」を修行現場で学ぶことです。一通りの技術を習得するまで修行を積み板前を目指します。

日本料理の世界には「下積み三年」という言葉があり、長く月日がかかるイメージがありますせんか?現在では、下積みに3年もかかっているところは少なくなってきているのです。1〜2年のうちに下積みを抜け、次の段階に進むことが一般的になってきています。その後は四季の料理を各地位で経験し、1年毎にスキルアップをしていくことが理想的とされています。次は、代表的な修業の流れをお伝えしていきます。

新人は「追い回し・下積み」からスタート

  • 追い回し・下積みの主な仕事
  • 修行の最初は「追い回し」と呼ばれる地位からスタートします。主な業務は、先輩から言い渡される雑用、掃除や洗い物になります。それ以外にも、野菜の下処理や器の用意やといった下準備やまかないを担当します。野菜の下処理に慣れてくると、包丁の使い方を先輩に見てもらい勉強していきます。そこでは大根の桂剥きや、薬味ネギを切ることなど、包丁さばきを見てもらいます。

  • 追い回しとして重要なこと2つ
  • ■現場の流れを理解していくこと

    追い回しの下積み時代に重要なことは、現場の流れを理解していくことです。最初は店全体の1日の流れを確認して動きを覚え、次に年間を通しての季節ごとの流れを覚えていきます。一緒に各地位の先輩たちの担当業務などを把握することも大切です。

    ■段取りよく料理を提供すること

    料理で大切なのは技術ももちろんですが、段取り良く料理を作りお客さまに提供していくことです。そのためには、手順良く進められるようしっかりと段取りを組むことが重要になってきます。現場の流れを覚えていけば段取りよくこなせることができるようになります。まかない作りや皿洗いなどから段取りよく仕事をこなせるようになると、先輩から認められるでしょう。

器に盛りつけ作業を担当する「先付け・八寸場」

板前になるにはどうしたらいい?気になる修行内容の紹介

  • 先付け・八寸場の主な仕事内容

先付けとは、飲み物が運ばれてきた時に最初に出てくる料理のことをいいます。八寸とは、海山の食材を使用して盛り合わせた料理のことをいいます。焼き場担当や煮方担当が仕込んだ料理を、器に盛り付ける作業は、先付け・八寸場が担当しているのです。
このレベルではまだ正式に包丁を扱う作業は担当できません。しかし、先付け・八寸で出す料理を作ったり、お漬物を同じ大きさに切りわけたりなど、簡単作業から包丁を持たせてもらいます。

  • 盛り付けで学ぶこと必要なことは?

料理長や先輩の盛り付けの手本に従い、盛り付けで必要になる基礎的な感覚を修得していきます。盛り付けは料理の見た目を決める技術とセンスを学びます。お客様の食べる速さに合わせながら、ちょうどいい頃あいでお料理を提供できるように配慮します。他の持ち場の担当のタイミングを見て、素早く盛り付けていくことが必要です。 

  • 求められるチームワーク

料理の味付けなど調理に直接関わることはできませんが、料理過程である最後の盛り付け担当なので、チームワークで作業をすることが求められるでしょう。

加熱調理担当の「焼き場・揚げ場」

  • 焼き場・揚げ場の主な仕事

この地位あたりから、下積みを抜けたという意識に変わってきます。てんぷらなどの揚げ物、炭火や焼き台を使った焼き物など、加熱調理を担当することが主な仕事になります。
焼き物は、火で食材を炙るという単純な調理作業のように感じますが、魚の焼き物を見ただけで担当した板前の腕前がわかってしまうと言われるほど、調理する人の感性が出てしまう重要なポジションなのです。焼き物を仕上げるには単純に見えますが、細心の注意が必要とされています。

味付けを担当する「煮物・蒸し方」

  • 煮方・蒸し場の主な仕事内容

料理の味付け、チェックをすることが主な仕事になります。この地位は、店の味を守ることになるので重要なポジションとされています。
出汁を取り、お吸い物や煮物の味を決め、茶碗蒸しを蒸すなどを行います。また、先付け(お通しより格上のもの)の料理も味付けをして用意し、盛り付けにまわします。
店全体を見る立場になるので、調理場の業務進行を取り仕切ることになります。また、下積みの若手を育てるために指導を行うのも煮方・蒸し方の仕事です。

  • 煮方・蒸し方の高いプロ意識

店の味を守り、一定の品質を保ちながら味付けをしなければなりません。そのため、味覚を大切にするために体調管理は欠かせません。味覚に影響が出るような食べ物、例えば味の濃いものや香辛料がたくさん入った料理などは、普段から控えるなど高いプロ意識を持って仕事をすることになります。

お刺身担当の「板場」

板前になるにはどうしたらいい?気になる修行内容の紹介
板場の主な仕事

和食料理の現場では最重要な地位であり、刺身を担当することが主な仕事になります。また、カウンターがある店では、お客様の前に出ることも多いので、接客スキルも必要です。刺身を切るという一見簡素な作業に見えますが、実力の違いがハッキリ分かれてしまう仕事であり、高い技術と集中力が必須です。また、いつも使う包丁も常に最高の状態にしておかなくてはならないため、毎日包丁を研いで手入れをすることは欠かせません。

  • 板場に求められる人間力

お客様の前で刺身を切り提供することは、直接プロの技を見ることができるため、その振る舞いの美しさにエンターテイメント性があるため喜ばれます。しかし、それだけでなくお客様を喜ばせる会話なども求められます。技術だけではない、繊細で柔軟な対応ができる人間力も必要です。

板前になるためのいくつかの方法

板前になるには、学歴も資格も必要ありません。調理師学校に入学すると、調理師免許を取得することがありますが、調理師免許をもっているからといって、採用で優遇されることはありません。
何よりも日本料理に対しての強い興味を持つことが大切です。長時間立ち作業であるため体力と忍耐、そして手先の器用さが要求されます。
板前になるにはどうしたらいい?気になる修行内容の紹介

中卒、高卒から修行に入る

中学校や高校を卒業後、日本料理店などで修業を始めることができます。店によっては、若いうちに入った方が、正しい味覚や繊細な手先の感覚などを良く吸収すると考えているところもあります。憧れの店や修行したい店、師事したい板前がはっきりしている場合は、学校を卒業してすぐに修行に入るといいでしょう。

食物調理科がある高校に通う

高校の食物調理科に通うと、高校卒業の学歴と同時に調理師免許を取得することも目指せます。また、調理の基本も学ぶとができるので、店に修行に入ったときも先輩の言っている専門用語が理解できたり、段取りがすぐに理解できたりするでしょう。

調理師専門学校に通う

高校卒業後に調理の専門学校へ進学修業を始めることもできます。一流の現役の調理師に習うことができ、実習時間も多いカリキュラムが特徴になっています。また、調理師免許を取得すること可能な授業内容でもあり実践的に学べます。

女性は板前になれる?

板前と聞いたとき想像するのは男性ではないでしょうか。板前だけでなく、コックやシェフなどの料理人は、一般的に女性よりも男性のほうが多く活躍しているようです。しかし、最近では女性が板前や料理長として活躍する店が増えてきています。
板前になるためには、厳しい修業期間が必要になるので、敬遠されてきたところがあるかもしれません。しかし本当にやりたい気持ちがあれば、性別は一切関係なく板前への道を歩むことが可能なのです。
板前になるにはどうしたらいい?気になる修行内容の紹介

女性が板前になるメリット

女性が板前になるメリットは、女性ならではのセンスや繊細な彩りなどを考えて調理できることです。また体に優しい料理の追求など、男性とは違った感性や考え方ができるところもメリットの一つでしょう。

女性が板前である店の雰囲気

日本料理の割烹などは敷居が高いイメージがありますが、女性の板前がいるだけで店の雰囲気が変わり柔らかいものになります。お客様も肩肘はらずにリラックスすることができ、一流の日本料理を楽しむことができるでしょう。また、女性同士のお客様が入りやすくなり、気になった料理のことは気軽に質問をすることができるので、会話も楽しむことができるでしょう。

板前が全員女性!話題のお店ご紹介

板前が全員女性という話題の店「つるとかめ」が銀座にあります。店内は大きめのカウンターが14席あります。目の前で板前の職人技を見ることができ、会話も楽しむことができます。

さらに奥には大きなテーブル席が一つ(4席)、個室が3部屋(一部屋6席)あります。料理のコースは季節に合わせたおまかせコース10,000円と16,000円があります。
女性ならでの心温まる接客に心がほっこりすると評判になっています。接待から女子会まで様々な用途で利用できそうです。

銀座「つるとかめ」の公式ホームページはこちら

板前は人を喜ばせる仕事

板前になるにはどうしたらいい?気になる修行内容の紹介
板前の世界で一人前になるためには厳しい修業が必須です。またそれは、決して短期間で習得できるものではありません。しかし、高い目標を持ち、夢に向かって地道に頑張り続けていける人にとっては、意義のある修行時代を過ごすことができるでしょう。

実際に板前になれたとしてもそれで終わりではありません。長年経験を積んだ板前でも、さらなる高みを目指して技術を磨いたり、料理についての研究を続けることになります。板前とは生涯を通じて日本料理を習熟し続けることができる仕事であり、料理を通して多くのお客様を喜ばせることができるやりがいのある仕事なのです。

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