【医師監修】赤ちゃんに影響はある?恐ろしい妊娠中のクラミジア。症状や感染経路、治療方法について

クラミジアは、自覚症状がなく発見しにくい病気です。また、感染しても人に相談することや、病院へいくにも躊躇してしまいます。でもクラミジアは放っておくと恐ろしい病気です。クラミジアの感染経路や症状、治療方法について詳しくみていくことにしましょう。

クラミジアとは?


クラミジアとは、クラミジア・トラコマチスいう細菌に感染することで発症する性病や性感染症のことをいいます。クラミジアの病原体であるクラミジア・トラコマチスは真菌とは異なります。クラミジア・トラコマチスは、細胞の中に入り込まなければ生きていけない、非常に生命力の弱い菌です。

クラミジアになるとどんな症状がでるの?

女性の場合

女性がクラミジアに感染した場合、感染して2~3週間くらいで自覚症状が出始めます。最初に感染する場所は、膣の奥、子宮の入り口にあたる子宮頚管(粘膜)の部分です。クラミジジアに感染することで、水っぽいおりものの増加、性器のかゆみ、においがきつくなる、性行為をすると痛みを感じるなどの症状が出ます。治療をせずに放置してしまうと、クラミジアの菌が体の奥へと進んでいってしまい、子宮、卵管、卵巣の順番で子宮内膜炎、卵管炎、腹膜炎につながります。

一般的な症状

おりものなどの変化はわずかなので、自覚症状がないことがほとんどです。そのためクラミジアに感染したと気が付くのは難しく、女性の8割が無症状と言われています。

妊婦さんがクラミジアにかかるとどんな症状がでるの?

妊婦さんがクラミジアにかかると、排尿時に痛みが出る他、白いクリームのようなおりものがでます。性器のかゆみや、臭いがきつくなるなどの症状がでます。

男性の場合

男性がクラミジアに感染した場合、感染して1~2週間くらいで自覚症状が出ます。まずおしっこを排出する尿道に炎症が起こります。おしっこをするときに痛みを感じる、おしっこがしみる、熱い感覚がする、尿道にかゆみや不快感を感じます。膿がでてもおしっこに混じって出てくるため、気がつかない方がほとんどです。膿は透明か白っぽく、粘り気はなくサラサラしています。そのまま1週間以上放置してしまうと、尿道から前立腺へ、前立腺から睾丸へ、体の奥へ奥へと菌が進んでいってしまいます。

クラミジアの感染経路と原因

クラミジアの感染原因は粘膜同士の直接接触が基本です。粘膜とは唇や舌、口の中、のど、鼻の中、耳の中、まぶたの裏、亀頭や膣、肛門の中が挙げられます。また、精液、膣分泌液が体内に入ることでも感染します。精液からも感染しますが、射精したかどうかではなく粘膜同士の接触があったかどうかが重要です。

クラミジアが原因でかかる病気や疾患

女性の場合

一般的な女性の場合

女性がクラミジアに感染しても初期は自覚症状がない方も多く、知らずに放置しているというケースも少なくありません。クラミジアは妊娠を望んでいる場合、不妊や流産の原因になるだけでなく、子宮外妊娠の原因になるともいわれています。クラミジアの治療はさほど難しいものではありませんが、治療をしても後遺症が残る場合があります。それが「不妊」です。クラミジアの進行が進むと、卵管周囲の癒着が進み、次第に卵管が変形したり塞がったりします。よって排卵しても卵子を取り込めなくなるのです。実は、卵管に通過障害が起きる原因のうち8割がクラミジア感染だという説もあります。

妊婦さんの場合はこんなリスクが。胎児や産まれた赤ちゃんにも影響が?

妊婦さんがクラミジアにかかると、流産や早産を引き起こす可能性もあるため、妊娠初期から注意が必要です。まず子宮の入り口に菌が繁殖し、妊娠することによってできる羊膜まで菌が徐々に侵入していきます。菌が羊膜に到達すると、破水を引き起こしてしまう可能性があります。陣痛の前に破水が起こると胎児が流産してしまう危険性があり、特に妊娠初期ほど破水を起こしやすいとされます。
しかし、妊娠初期だけでなく、出産時にもリスクがあります。クラミジアに感染した妊婦さんが出産すると約10%の割合で産道感染が起こると報告されています。クラミジアに感染していると、出産時、赤ちゃんが産道を通り抜ける際にクラミジアに感染してしまうのです。さらに無事産まれても、赤ちゃんがクラミジアに感染すると、約25〜50%の割合で新生児結膜炎を発症し、約10〜20%の割合で新生児肺炎を発症するといわれています。

男性の場合

男性は女性に比べて症状が出ても比較的軽症で済むケースがほとんどです。ですが軽症だからといって軽く考えてはいけません。排尿痛、膿が出るなどの尿道炎は初期の場合にも起こります。またクラミジアの菌が尿道から精管、精管から精巣上体へと進むことで、精巣上体炎を引き起こします。精巣上体炎は陰嚢内の精巣上体の一部の軽い痛みから始まり、徐々に陰嚢全体に痛みが広がり、陰嚢が硬くはれあがり、赤みを帯びてきます。精巣上体にクラミジアが入り込むことで徐々に鼠経部や足の付け根、下腹部に痛みを感じ、圧迫すると強い痛みを感じます。また炎症によって精子の通路が塞がることがあります。片側だけなら問題ありませんが、両側の陰嚢で起きると不妊症につながる可能性もあります。

クラミジアの検査方法と費用

病院

全国の泌尿器科、産婦人科、小児科、皮膚科などがある病院や診療所で検査することができます。病院で検査をする場合、診察代や初診料がかかります。性病によって症状がない場合には保険が適用にならないケースもあります。保険が適用にならない場合には、検査キットを購入して自分で検査する方が安くなることもあります。病院で検査をする場合、待ち時間が長いなど、病院内で知人に会うなどのリスクがあります。治療開始すればその病院へ通院することになりますから、病院の立地や評判など確認しておくと良いでしょう。

おすすめのクリニック

■新宿さくらクリニック(関東)
クラミジアをはじめとした感染症の症例数、日本一を誇るクリニックです。

■麻布十番まなみウィメンズクリニック(関東)
医師やスタッフが全員女性のため相談しやすい環境が整っています。婦人科専門医のいるクリニックです。

■早川クリニック(関西)
書籍「この病気にこの名医」でクラミジアの名医として取りあげられています。

保健所

全国の保健所や自治体の施設でもクラミジアの検査を受けることができます。検査は原則無料で、検査を行う際に他の人と会うことがないように配慮されています。さらに自分の名前を申告する必要もありません。検査結果については面談で行われます。しかし保健所の検査は主にHIV、梅毒、クラミジア、淋菌のなど限られた検査しかできず検査は採血と採尿で行われるため、喉に感染しているクラミジアの検査は行うことができません。また、検査は1~2週間に1回ほどの少ない頻度でしか行われていないところも多く、定員も決められているため急いでいる場合には不向きです。保健所によっては土日に検査が行われているところもあります。

検査キット

プライバシーも守れて手軽に検査できるのは検査キットです。郵送してWEBにて検査結果が分かるものがほとんどです。クラミジアの検査においては、クラミジアだけを検査できるタイプとその他の感染症が調べられるものがあります。感染したと疑われる日から2~3日以降で男性の場合には尿を女性の場合は膣内分泌で検査することができます。

おすすめ検査キット

▼クラミジアのみ1項目
■STDチェッカー タイプG(男性用)
■STDチェッカー タイプG(女性用)

▼クラミジア、淋菌、HIV、梅毒、B型肝炎、クラミジア(のど)、淋菌(のど)を検査できます。尿や血液、のどから検査できるタイプです。
■STDチェッカー タイプR(男性用)
■STDチェッカー タイプR(女性用)

妊娠中のクラミジアの検査はどうするの?

妊婦検査にはクラミジア検査が含まれていて全員が対象となります。検査方法は、血液検査の場合もありますが、内寝台で麺棒のようなものを使い子宮頸管の表皮細胞をこすりとります。ほとんど痛みはなく、1週間ほどで結果が分かります。

クラミジアの治療と費用

クラミジアの治療方法は?

体内に侵入したクラミジアトラコマティスを死滅させます。クラミジアは性器やのどの場合がありますがいずれも抗生剤を服用し治療していきます。目に感染した場合には専用の目薬や軟膏が処方されます。卵巣と卵管を総称して子宮付属器と呼び、この子宮付属器に起こる炎症を子宮付属器炎といいますが、クラミジアが進行すると骨盤付属器炎などが起きることがあり点滴治療が行われることもあります。クラミジアの治療は初診料と検査料、薬代が必要です。病院によって多少差はありますが1回5,000~15,000円くらいです。5,000~15,000円ぐらいのところが多いでしょう。医師の判断で保険が適用になれば3割負担で済みますが、保険がきかない場合や自由診療の病院では自己負担になりますので注意しましょう。

妊婦さんの治療方法は?

妊婦さんの場合も処方された抗生剤を1~2週間服用し、再度検査を行います。

クラミジアの治療期間は?

抗生剤を服用すると薬が腸から血液へと入り、血流にのった抗生物質は1~2週間かけて全身を巡ってクラミジアに感染した細胞に作用する仕組みです。また、状態が良くなったから、恥ずかしいからと治療を中途半端で終わらせず薬は最後まで飲みきり、3~4週間後に再度検査をして先生にもう大丈夫ですといわれるまでは治療に専念するようにしてください。

クラミジアの薬はどんなものがあるの?

ジスロマック

1回服用すれば効果が7日間持続できます。忙しい方に向いています。下痢や腹痛の副作用はありますが、胎児への影響はなく妊娠中でも服用は可能とされています。

ビブラマイシン

7日間連続して服用しましょう。尿道炎やニキビの治療薬としても使用されています。副作用は、下痢や胃の不快感、めまい、頭痛などがあります。

クラリシッド

1日2回7日間多めの水で連続して服用しましょう。副作用は比較的少なく稀に下痢や腹痛があります。

クラリス

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の薬としても使用されます。1日2回服用します。

クラビット

皮膚の感染から肺の感染までかなり幅の広い感染症に対して効果があります。

タリビット

呼吸器感染症、泌尿器感染症、婦人科感染症、耳鼻科感染症、歯科感染症など広い範囲の感染症の治療に使用されます。

エリスロシン

幼児がかかるマイコプラズマ肺炎もこの薬が用いられます。

グレースビット

妊婦や妊娠している可能性のある人、小児は服用できません。

ミノマイシン

ニキビの治療薬としても用いられます。牛乳やヨーグルトなどの乳製品と飲み合わせてはいけません。ジスロマックとクラリスの2種類はマクロライド系といって、妊婦さんに対しても副作用がなく安心して飲むことができる薬です。胎児への影響が1番気になるところですが、きちんと治療すれば赤ちゃんにうつる心配はまずありません。

クラミジアは完治する?再発するの?

クラミジアは処方された薬をきちんと飲み、再検査でクラミジアトラコマティス菌がなくなっていることが分かれば完治したことになります。その感染から再発することもありません。きちんと治療するためにも医師の指示にしっかり従うようにしましょう。

最近多い咽頭クラミジアとは?

咽頭クラミジアの症状

咽頭クラミジアとは、クラミジアが喉に感染したことを指します。軽い症状や無症状の人も多く気が付きにくいのが特徴です。症状としては、のどの痛み、扁桃腺の腫れ、咳がでやすい、痰がからむ、発熱などがあります。風邪の症状と似ているため風邪だと思い見逃しているースも多いようです。

咽頭クラミジアの感染経路と原因

フェラやクン二などのオーラルセックスが原因でのどにクラミジアを感染します。オーラルセックスの場合、コンドームをつけていない場合が多いので性器は感染していなくても咽頭に感染していることがあるのです。また咽頭クラミジアの人とディープキスをしても咽頭クラミジアに感染します。ただし性器に感染したクラミジアが喉にいくということは考えられません。

咽頭クラミジアの検査方法

咽頭クラミジアはその症状から風邪や、咽頭炎、扁桃腺炎、淋菌と似ているため判断がつきません。咽頭クラミジアは市販の風邪薬では良くなりませんのでなかなかスッキリしない場合には咽頭クラミジアの可能性があります。咽頭クラミジアと分からず耳鼻科に行くと風邪薬が処方されるケースが多いので、きちんと性病の検査をしてほしい旨を伝えなければいけません。検査をしなければ咽頭クラミジアの判断はできません。

咽頭クラミジアの治療方法

咽頭クラミジアの場合もクラミジアトラコマチス菌を死滅させる必要があります。こちらも抗生物質を服用して治療していきます。上記でも説明したように、ジスロマックやクラリス、ビブラマイシン、ミノマイシン、クラビット、タリビットなどの薬を使用します。

大人も子どももかかる?クラミジア肺炎とは?

新生児・幼児の感染経路と症状

新生児や乳幼児がかかるクラミジア肺炎は、ほぼクラミジアトラコマティスによるものと限られています。新生児や幼児の場合は産道感染によるものが原因です。
母親がクラミジアに感染していてクラミジア子宮頸管炎を持っていると、分娩時に赤ちゃんが産道を通ることで感染するといわれています。分娩時に感染するとその3ヶ月以内に結膜炎や肺炎を発症します。症状としては、発熱はほとんどなく、鼻炎や結膜炎が先に現れます。多呼吸やゼーゼーと雑音を含む喘鳴、痰を伴った激しい咳や呼吸困難を起こすことがあります。酸素の投与や人工呼吸などは必要ありませんが、低体重児は重症化する場合もあります。

小児~成人の感染経路と症状

小児から成人がかかるクラミジア肺炎はクラミジアニューモニアという病原菌が原因で、咳やくしゃみによる飛沫感染によって発症します。発症まで潜伏期間は3~4週間です。0~14歳までの子どもと65歳以上の高齢者に多くみられ男性によくみられます。家庭内や施設などで集団発生するケースもあり1度だけでなく何度でも感染します。症状は、38℃以下の微熱、鼻水やのどの痛み、肺炎、乾いた咳が長期間続く他に感染しても症状が出ない人もいます。また、急性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患の悪化、関節炎、リンパ節の腫れや赤い発疹、血液感染し、動脈硬化などの合併症も報告されています。

クラミジア肺炎の治療方法

クラミジア肺炎にも抗生物質での薬物治療を行います。治療薬は上記のようなエリスロシン、クラリシッド、クラリス、グレースビット、クラビット、ミノマイシンが使用されます。抗生物質は10日~14日間服用を続けます。8歳以下の場合、エリスロシン、クラリシッド、クラリス、ミノマイシンは歯が黄色くなったり骨の発育に影響が出たりする場合があります。咳やのどの痛み、鼻水や発熱には緩和する薬も一緒に処方するケースもあります。乳幼児や高齢者の場合には重症化することもありますので注意しましょう。

感染を防ぐためのポイント

クラミジアは性行為によって感染した粘膜や分泌物に触れることで起こります。オーラルセックスをする場合にも正しくコンドームを装着することが感染予防になります。さらには、再感染を防ぐため、おかしいなと思ったらパートナーと同時に治療を行うことも心がけましょう。1番大切なのは、検査を受けて自分がクラミジアに感染しているかどうかを知り、感染拡大を防ぐことです。特に不特定多数のパートナーがいて性行為が多い場合には、2ヶ月に1度は検査するようにしましょう。

0