【医師監修】妊娠・出産期における生理痛の原因や対処法、予防法について

女性の悩みの一つである生理痛は人によって痛みの度合いが異なったり、様々な症状が出ます。我慢すれば良くなるかもしれませんが、生理が来るたびに耐えがたい痛みを我慢するのは気疲れしてしまいますよね。ここでは生理痛のメカニズムから妊娠・出産との関係までを詳しく解説しますので参考にしてください。

生理痛が起こる本当の理由とは?

なぜ生理痛が起こるかご存知でしょうか?生理の期間に起こる生理痛という女性特有の生理現象として認識している人が多いかもしれません。
それではなぜ生理は生理痛という痛みとして現れるのでしょうか?意外と知らなかった生理痛が起こるメカニズムや症状を詳しく見ていきましょう。

生理痛のメカニズム

 生理が始まる年齢は早くても10歳頃から始まり、生理が始まるのが遅い子は16歳頃に始まると言われています。10歳の子は小学5年生で16歳の子は高校1年生であるためと個人差が非常にある生理現象です。

生理のリズムは月に約1回であり、生理が終わって次の生理が来るまで約30日なので、ある程度規則があります。それでも生理が始まって最初のころは、2ヶ月に1回だったり半年に1回だったりとまちまちなこともあります。大人になってもストレスなどで生理不順になり2ヶ月に1回だったり逆に20日に1回と少し早くなることもあります。
長い間付き合うことになる生理現象なので、正しく詳しく知っておきましょう。

 それではなぜ痛みを感じるのでしょうか?
実はこの痛みは重要なもので「プロスタグランジン」という生理活性物質が関係しているのです。プロスタグランジンという物質はとても強い生理活性を持つ化学物質で、体内で作られて体内の特定の場所で作用するホルモンの一種です。
このプロスタグランジンは生理の時に分泌されて、子宮を収縮させる作用のほかに生理によって作られた子宮内膜をスムーズに体外へ押し出してくれる作用を持っています。
潤滑剤のように子宮内膜を体外へ押し出す作用や子宮を収縮させる作用を持っているので妊婦さんにも使われる陣痛促進剤としても有名な薬です。

 実はこのプロスタグランジンは良いところばかりではなく、陣痛促進剤としても使用されているため、過剰分泌されると陣痛に似た痛みが生理痛でも押し寄せてきます。プロスタグランジンは子宮内膜を押し出す作用などのほかに血管収縮作用を持ち合わせているため(血管収縮・腰痛・肩こり・だるさ・冷え・胃痛・吐き気・頭痛)の原因となります。
一般的には生理期の初期頃に強い痛みや体調不良が起こることが多いようです。

生理痛の痛み方や原因と症状について

 プロスタグランジンの作用による生理痛のほかにも痛みを及ぼす理由がいくつかあります。これから挙げる痛みの原因は特に個人差があるのでだれもが当てはまるとは限りません。
自覚症状がある場合は一人で抱え込まず、我慢をせずに産婦人科や婦人科の医師に相談し指示を仰ぐことをおすすめします。

子宮口が狭い事による生理痛
 年齢が若い女性の場合は子宮の発達が十分でなく、生理による経血の出口である子宮口が狭く、また硬いためプロスタグランジンが過剰分泌されます。この作用によって痛みを発するのです。
年齢とともに子宮口が発達すると痛みは自然に弱くなるでしょう。妊娠および出産を経験すると生理が軽くなったように感じるのは、子宮が成熟し子宮口が広がり経血が出やすくなったためです。

ストレスによる生理痛
 誰もが感じるストレスも生理痛の原因です。
例えば、家庭の事情・進学・就職など環境が変わった場合やプレッシャーを感じやすい人などストレスを受ける場面は数多くあります。このストレスは感じ方に個人差はあるものの、長期間にわたる高ストレスで、ホルモンバランスが崩れたり、自律神経のバランスが大きく乱れて生理痛の原因となるでしょう。

ストレスが原因と分かっているのならば、難しい事ではありますが環境を変えたり、気分転換をすることで楽になる可能性があります。ひとりで抱え込まずに相談することでストレス発散につながりますのであまり考えすぎないようにしましょう。

血行不良による生理痛
 女性は冷え症の方が多く、これが生理痛の原因となる場合があります。
ではなぜ女性の冷え症が多いのでしょうか?

理由はいくつかありますが男性と女性で異なる点において原因を探ると、薄着ファッション・女性ホルモン・筋肉の量・月経があり子宮と卵巣があることが主な要因と言えます。
薄着ファッションにおいては長時間薄着で冷房に当たったり外出をしていると血行が悪くなります。血行が悪くなると血管の収縮が起こりプロスタグランジンの時の症状と同じように(血管収縮・腰痛・肩こり・だるさ・冷え・胃痛・吐き気・頭痛)の原因となります。
また、喫煙も一時的とはいえ血管を収縮させますので、生理痛に悩んでいて喫煙をされている方は禁煙を目標に頑張りましょう。

病気が原因で起こる痛み
 例えば、女性特有の病気、婦人病に分類される子宮内膜症は一般的に生理通と同等の痛みを伴うことから見落とされがちです。その痛みは人によって異なりますが生理痛が強まる傾向があるようです。
人によりますが、病気が原因で生理痛が強まる可能性は否定できず、本人も見落としがちなのでいつもと違う痛みを感じたり、体調不良がある場合は他の病気を患っている可能性がありますので医師に相談した方がいいでしょう。

PMS(月経前症候群)も生理痛の原因

 月経がはじまる1週間前もしくは2週間前にイライラしたり便意が無いのに腹痛がしたり、症状が重くなると発熱や情緒不安定になったりします。
これらの症状は排卵後の黄体ホルモンの分泌が影響しており、PMS(月経前症候群)と呼ばれます。生理前にいつも月経前症候群のような症状が現れる方や軽い症状として出る方など人それぞれですが、これも生理痛の原因ですので気になったら医師に相談することをおすすめします。

辛い生理痛を少しでも和らげるために

 ここまで様々な生理痛の痛み方や原因と症状を挙げてきましたが、これらの症状を緩和する方法はあるのでしょうか?
人によっては我慢すればよくなると思っていたり、薬を使えばいいと考えますが、今回はそれ以外の方法で生理痛の症状が良くなる方法をお伝えします。
どの方法もお手軽に、簡単にできますので是非実践してみてください。

  • 使い捨てカイロで「仙骨」周辺を温める
  •  生理の期間は仙骨の周辺を温めることで生理痛の症状が緩和されることがあります。仙骨というのはおしりの割れ目から少し上に行った逆三角形の部分を指します。この部分を使い捨てカイロで温めると生理痛の症状が緩和されるでしょう。
    直接カイロを張るのは低温やけどの危険があるため衣服の上から貼ることをおすすめします。できれば腹巻で固定することで集中的に仙骨を温められるほか、お腹まわりもカバーできるので試してみてはどうでしょう。

  • 暖かい飲み物を飲んでお腹を温める
  •  生理中はお腹を冷やすと、より痛みが増す場合があるので暖かい飲み物でお腹を温めましょう。暖かい飲み物を飲むことでお腹を温める効果の他に、全身の血行を良くする働きをしてくれますので生理痛の痛みを和らげる期待ができるでしょう。

    おすすめの飲み物としてはハーブティー(ラズベリーリーフ・カモミール・ローズペタル)などがあります。これらは香りが良くリラックス効果も期待できるでしょう。ハーブティーが苦手ならばココアやショウガ湯などでもいいでしょう。

  • 足湯や入浴をして温まる
  •  入浴をすることにより全身が温まるので生理痛の緩和効果が期待できます。
    汗をかくほどの温度ではなく程よい温度で入浴することで体への負担も減らせますのでおすすめです。
    また、生理中で入浴に抵抗があったり、時間が無い場合は足湯も効果的でしょう。特に末端冷え症の方などは足湯がとても効果がありますので試してみてはいかがでしょうか。

生理痛を和らげる予防方法

 先ほどの生理痛を和らげる方法は痛みが起こってから対処するものでした。
こちらでは生理痛が現れる前に実行することで予防する方法をお伝えします。この予防方法は完全に予防できるわけではなく生理が来たとしても痛みが緩和されるように予防する方法です。あくまでも個人差がありますので、自分に合った方法を試してみることをおすすめします。

  • バランスのよい食事を心がける
  •  これは誰しもが共通していますが、バランスのよい食事を心がけることで生理痛をすこしでも緩和しようという方法です。生理痛だけでなく生活習慣病の予防や、より健康な体を作ることも期待できますのでバランスのよい食事を心がけましょう。
    具体的にはスナック菓子、ファストフード、コンビニ弁当、チョコレート、コーヒーなどの胃に悪いもの、乳製品などは生理痛の時には避けた方がよいと言われています。

  • 姿勢を正しくし、適度な運動をする
  •  オフィスワークが増えてきたせいか、姿勢に気を付けることが疎かになっていたり運動不足になりがちな方が増えてきました。これは女性と男性の両方に言われていることで、女性の場合(特に生理痛時)には影響が出ると言われていますので気を付けましょう。
    姿勢で気を付けべきことは、長時間の同じ姿勢、猫背、腹部を圧迫するような前かがみの姿勢、足組などです。最初は常に気を貼って注意することに慣れませんが、だんだんと正しい姿勢や席を立つなどしてみましょう。
     
    適度な運動に関してはウォーキングやジョギングがよいと言われています。体力に自信のある方は空いた時間にジョギングを、時間が無かったり体力に自信の無い方はウォーキングをしてみましょう。ウォーキングの場合は通勤で降りる駅を1駅分前倒して歩くのも良いでしょう。

薬は使いたくない…薬の作用はどんなもの?

 生理痛が辛いときにドラッグストアで簡単に買える生理痛薬を買って、痛みや腹痛を解消している方は現代の社会で多くなっています。ですがその反面、薬を使いたくないという方も少なからず居ます。
みなさんは痛みの解消につながる成分やその副作用はしっかりと確認していますか?しっかりと確認して理解した上で用法容量を守った薬の使い方をしたいですね。

また生理痛に効くといっても先ほど紹介したように、生理痛の症状は多岐に渡って現れ、個人差があることから自分自身の自覚症状をしっかりと確認してから薬を選ぶいうにしましょう。

生理痛に効く成分とは?

 生理痛の時に最も多くの方が解消したいと思う症状は痛みや頭痛、発熱が挙げられます。
この症状に効く薬用成分はいくつか種類があります。市販の薬で痛みに効くとパッケージに書かれていても実は成分が異なったりするので成分表を良く確かめてから買うようにしましょう。それでは痛みや頭痛、発熱に効く成分を見てみましょう。

ロキソプロフェン
 日本で最も使用されている抗炎症薬の一つであり、その効果は炎症を抑えたり痛みを抑えることに特化しています。素早く痛みを抑えることからこの成分が含有されている市販薬は女性に人気があり、また頭痛を抱えている男性にも人気がある商品です。
 副作用は発疹、かゆみ、腹痛、肝障害などで、まれにアナフィラキシー様症状を起こす危険性があります。
禁忌事項(きんきじこう)としては消化性潰瘍、血液異常、肝障害、腎障害、心機能障害、妊娠末期の婦人に投薬することは極めて危険とされています。

無水カフェイン
 無水カフェインとはカフェイン系に分類される強心剤です。

効能としては倦怠感ねむけ血管拡張性及び脳圧亢進性頭痛(片頭痛、高血圧性頭痛、カフェイン禁断性頭痛など)に効くとされています。
これはコーヒーに含まれるカフェインと同じ効果であり、無水カフェインはコーヒーに含まれているカフェインを乾燥させたものと考えて良いでしょう。要するにカフェインが水に溶けているか溶けていないかの違いです。
 副作用は手のふるえ、動悸、不整脈、頻脈、不安、不眠、瞳孔散大、吐き気となっていますが、これは多く服用すると現れる症状でありカフェインを含むドリンクを大量に飲むと同じような症状(カフェイン中毒)が現れることで有名です。

アセトアミノフェン
 解熱鎮痛薬の一つであり効能は、発熱、頭痛、悪寒などを抑える鎮痛薬です。
この成分の特徴はイブプロフェンなどの抗炎症薬とは異なり、抗炎症作用をほとんど持っていないことが挙げられ、胃を刺激しないことから他の解熱鎮痛薬と区別して使われます。そのため胃が弱い人にも投与することができるので生理痛薬にも使われ、副作用が少ないとされています。
 主な副作用としては血小板の減少、悪心、嘔吐などがあり、アルコールとの同時摂取は肝臓障害を起こしやすくするため気を付けましょう。

イブプロフェン
 日本では商標名をブルフェンとして知られ、市販薬としてはイブプロフェンと明記されている場合が非常に多いです。

イブプロフェンの効能として関節痛、生理痛、発熱に効く消炎鎮痛剤があり、痛みから熱までを解消します。
また胃腸障害が少ないことで良く知られており、日本を含む世界中で市販薬として購入が可能です。
 副作用の発生率は低いとされていますが1,200mg以上の過剰摂取などした場合や、個人差により吐き気、消化不良、下痢、高血圧、その他症状がみられる場合があるため、安全だからといって常用的に摂取を続けたり過剰摂取はやめましょう。

ルイソプロピルアセチル尿素
 少し聞きなれない名前かもしれませんが、市販薬にはこの成分が含まれていることがあります。
尿素と名前がついている理由は、アリルイソプロピルアセチル尿素の化学式を見てみると尿素の化学構造があるためで、決して老廃物が含まれているということはありませんのでご安心ください。

 効能としては鎮静作用が主な効能であり、緊張、興奮、いらいらなどを抑える働きがあり一般医療目的としては痛みを抑える目的として頭痛、歯痛、生理痛などの解熱鎮痛薬に配合され市販薬にも含まれています。
 副作用は主に眠気が現れることから過剰摂取を避けて、昼間に使用するなら外出や車の運転を避ける必要があります。
また、長期の服用は依存を引き起こす恐れがあるため避けましょう。

 日本で販売されているほとんどの生理痛に効く薬の主成分について説明をしてきましたが、どの成分も過剰摂取や使用条件、さらには眠気を及ぼすものまでありましたね。今後市販薬を買う機会がありましたら成分をよく確かめて疑問に思うことは薬剤師や医師に相談することをおすすめします。

生理痛の原因と症状、痛みの緩和と薬の関係

 生理痛がおこるメカニズムや症状の種類、痛みが起こる前にしておきたい予防方法などを挙げてきましたが、この記事を読んでいただき少しでも生理痛に関して理解を示していただければ幸いです。お薬に関しても効能だけでなく成分をみるように普段から気にしていないことを気にする癖をつけておくことをおすすめします。

 生理痛は痛みや不快感、ひどくなると吐き気や頭痛を発症し歩けなくなることがあります。そのままにしておくとさらに悪化してしまうほか、子宮内膜症などの病気を見逃してしまう恐れがありますので、薬を飲まなければならないようなひどい症状が出た場合病院へ行き医師に相談することを推奨します。

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