有給休暇は労働法改正によって義務化となる!パートタイマー・アルバイトでも取得できる条件について

「有給休暇」という制度は働く者にはとてもありがたいのですが、自分の「有給休暇」が何日あるのかを知っている人がどれくらいいるのでしょうか。また、いつからもらえるのか、正社員でないともらえないのかなど、細かいことを知らない人も多くいるでしょう。ここでは詳しく解説していきます。

有給休暇とは

有給休暇とは、労働基準法によって決められている従業員のためにある休暇制度です。会社の規則で決められているのではなく、法律で定められている必ず取得できる休暇です。有給休暇は「有給」で「休暇」が取れるということなので、休んでも給料が減るということはありません。

仕事を休んでも給料がもらえる、というのが有給休暇の特徴です。その目的は「心身の疲れを回復してゆとりのある生活が送れるように」というものです。

有給休暇はいつからもらえるの?

有給休暇は雇用が始まった日から継続して6か月間勤務し、その全労働日の8割以上を出勤した労働者に与えられます。

有給休暇はパートタイマー・アルバイトでももらえるの?

有給休暇は正社員だけでなく、パートタイマー・アルバイトにも付与されます。パートタイマー・アルバイトとは正社員ではなく、週に30時間未満で週4日以内または年間216日以内での勤務をしている労働者のことです。

パートタイマー・アルバイトでも、週30時間以上、1日4時間でも週5日勤務している、217日以上の勤務をしている、という場合は正社員と同じ有給休暇が付与されます。

有給化の日数について

取得できる日数

有給休暇は勤続年数と週に何日、または年間勤務日数によって、取得できる有給休暇の日数が変わります。そして有給休暇の上限日数は、法律で20日と決まっています。

有給休暇の取得時効

有給休暇は6年6ヶ月以上継続して勤務した場合は、1年で最大20日の有給休暇が発生します。この休暇の時効は2年間です(労働基準法115条)。もしも、20日分全部取得しなかった場合は翌年に繰越ができるので、次の年の有給休暇は40日になります。

2年間で消化できなかった場合は、翌年度に消滅します。万が一、会社側が「繰越のルールはうちの会社にはない」と言ってきたら、それは労働基準法の違反です。労働基準局に相談しましょう。

有給休暇を取る時

有給休暇はいつとってもいいの?

有給休暇は会社が時期を決めたり、取得することを拒否する権利はありません労働者が希望すればいつでも取れるというものです。有給休暇の日数や取得する日を会社が勝手に決めてはいけないのです。

ただ、業種によっては決算の時期などで従業員に休まれたら困るということもあるでしょう。そんな場合、労働基準法第39条5項において「時季変更権」というものがあり、会社にはその権利が認められています。労働者が申請した有給休暇の日にちが「正常な事業の運営を妨げる」場合、労働者に有給休暇の取得日を変更してもらうというものです。有給休暇を取得することを拒否するのではなく、違う日にしてもらうというものです。

時季変更の理由として、ただ忙しいからという理由ではなく、一度に大勢の従業員が休むためやその人にしかできない業務がその日にどうしても完了しなければならない、代わりの従業員の確保が困難なためなどの特別なことがないといけません。

理由は必ず伝えるべき?

理由は伝えるべき?

有給休暇を取る時、労働者は会社に理由を伝えるべきなのでしょうか。法律的には理由を無理に聞くことは違反になるとしています。有給休暇は労働者が自由に取れるもので、いつとるかどんな理由で取るかは労働者の自由なのです。

ただし前に書いたように、会社には「時季変更権」があるので、違う日にしてもらえないかと会社側が打診することはできます。

会社が理由を聞くのはどうして?

理由については強制的に聞き出すことはできませんが、会社が知っておきたいのは有事の時のためです。会社からどうしても連絡を取りたい時や、労働者が休暇中に災害に遭ったりというときのために知っておこうとしているのです。

しかし、会社が理由を聞いて「その理由だったら休みを与えられない」と有給休暇を取ることを拒否することは労基違反です。

有給休暇を取る時に注意すること

労働者には「有給休暇は自分の好きな時に取得してもいい」という権利があります。しかし、会社で仕事をしていれば忙しい時期はわかると思います。自分が休んだらまわりの人が大変な思いをするということもわかるでしょう。

お互いに円滑に仕事を続けていくためにも、どうしても休まなければならない時には、一緒に働いている人に理由を伝えるべきです。そして、休みを取るタイミングを見極めて取得することも、思いやりなのではないでしょうか。

退職が決まっている場合

退職が決まっている時の有給休暇消化

有給休暇は一定の条件が整っている場合、パートタイマー・アルバイト問わず、取得できる休暇です。有給休暇を消化しないまま退職を決めた場合ですが、残った有給休暇を取ってから退職することは可能です。この場合、会社側は休み日の変更を求めることはできませんし、有給休暇の取得を認めなければいけません。

退職の時に有給休暇が残っていたら残っていた分を消化して、消化した最終日の翌日を退職日にすればいいのです。

退職時に有休を消化する時に気をつけるべきポイント

有給休暇を取るのはその権利があるので、それ自体は違反ではありませんし、問題はありません。しかし、退職する時に会社へ「退職する前に有給休暇を消化します」と一方的に伝えて取るのではなく、仕事の引き継ぎをしっかりと行うことが必要です。

退職する意志を伝えてから会社と仕事の引き継ぎなど、退職までにやっておくべきことのスケジュールを相談し調整してから、有給休暇を取得するようにしましょう。

使っていない有給休暇を会社に買い取ってもらえるの?

有給休暇の買い取りは基本的に違法です。有給休暇は労働者の心身の疲労を回復させて、ゆとりのある生活を送るためのものです。労働者は有給休暇を取得できるのですが、どうしても消化できずにいるときがあります。その場合は例外として、会社は有給休暇を買い取りすることが認められています。

ただし、この買い取りに関しては例外が認められているといっても、法律で決められていることではありません。買い取りの価格については有給休暇と同額であることがよいとされていますが、これに関しても会社に決定権が委ねられています。以下がその事例です。

法定を上回る日数の年次有給休暇

労働基準法で定められている有給休暇の日数以上に、会社独自の有給休暇が定められているという場合があります。その法定日数を超えている部分の日数であれば買い取れます。

時効によって消滅してしまった有給休暇

有給休暇の時効は2年です。その2年を過ぎてしまって消滅してしまった分であれば買い上げができます。

退職により有給休暇が取得できずに消化できなかった場合

退職をすることが決まっている労働者に有給休暇の残りがある場合、労働者には退職前に有給休暇を消化してから退職をするという権利があります。会社はそれを認めなければなりません。時季変更権は退職が決まった労働者には適用しないからです。

しかし、引き継ぎ業務などのために退職までに有給休暇を消化できなかった場合、労働者の理解を得ていれば有給休暇の買い取りが可能です。

有給休暇は毎月取ってはいけないの?

前に書いているように有給休暇は労働者のための休暇であり、会社は取得を拒否してはいけません。しかし、業務に大きな支障をきたす場合は労働者へ他の日に変更してもらえないかと打診できます。なので、会社は労働者が毎月有給休暇を取ることを禁止することはできないのです。

有給休暇を取る時の注意点

有給休暇が労働者の権利とはいえ、周りが忙しいのに構わず休みを取るようなことは、社会人として褒められるようなことではありません。休みを取る時期を見極めることは大切です。その他に休む際は、周りの人に自分がいつからいつまで休むのかをしっかり伝えて、休んでいる間にやっておかなければならない業務についての引き継ぎをしっかりしておきましょう。自分が休んでも仕事に支障がないようにしておくことは大切なことです。

有給休暇の義務化

近年政府が力を入れている「働き方改革」の中に、会社は積極的に有給休暇を取るように働きかけるという内容が盛り込まれています。有給休暇は、労働者の権利で休んでも給料が発生する制度ですが、昔から日本人の勤勉さにより有給休暇を取得して休む人が少ないという現状があります。

なかには「有給休暇が取りづらい」という企業もあり、有給休暇があるのは知っているが取らないという人は多いのです。そういったことを政府が危惧し、働きやすい環境作りを企業に求め、有給休暇を会社側が指定して取るように進めるという内容の改正で提案しています。

これは、有給休暇が10日以上の労働者を対象に、年10日のうち5日は企業が1年以内に有給休暇の時季を定めることで与えようという内容です。しかし、この労働基準法の改正案は見送りとなり、いつから施行されるかは未定です。

有給休暇の周知

パートタイマー・アルバイトの中には有給休暇があること自体、知らないという人がいます。企業はパートタイマー・アルバイトにも、一定の基準を満たしたら有給休暇が付与するということを、もっとしっかり伝えるべきではないでしょうか。働く者の権利は雇う側にも守る義務があるのです。仕事を始める時に、税金のことや休暇のことなど知っておいた方が得なことはたくさんあります。働く前に色々と調べて、全ての人に損のない働き方をしていただきたいです。

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