「ブラック企業」あなたが働いている会社は大丈夫?その特徴や見分け方、企業リストなど解説

過労死やうつ病などが増加、働き方改造でも社会が変化していく節目を感じる時代。会社勤めの方は、労働時間や給料、勤務形態、人間関係など、何かしら不満を抱えているでしょう。今回は、気になるブラック企業についてまとめました。ブラック企業とは何か、また会社について、自分について、再認識してみましょう。

ブラック企業の特徴

まずはブラック企業の典型的な特徴をご紹介。1つの項目だけで判断はできませんが、参考にしてみましょう。

ブラック企業の特徴

過酷な労働時間

労働者と使用者間で結ぶ労使協定に、示されている「限度時間基準」(厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準」)によると、「月の残業は45時間以内」との基準時間が設けられています。この基準を超えるようであれば、ブラック企業の可能性が高まります。

さらに、労働災害認定で労働と過労死との因果関係の判定に用いられる「過労死ライン」月80時間の残業時間もあります。これは危険視です。休日に関しては、一年の平均的な休日が約120日。ブラック企業は人手が足りないため、年間80日以下の休日といった場合もあります。

つり合わない労働対価

高度経済成長期の企業は、労働に見合った賃金が支払われていました。同じやる気重視の労働スタイルでも、ブラック企業はそれと違い、残業代が払われません。「残業代は給料に含む」などといい、人件費を削減するのです。労働基準法を無視するような企業は、福利厚生も怪しいものです。

入社・退職者の続出

ブラック企業は、従業員がすぐ離れます。企業も単に人材を切ります。円満退社はないという背景から、引き継ぎもなく人材急募となるわけです。また、採用基準は「会社に耐えられるか」です。入社する側も、「頑張ります」と意気込んで入社するため、過酷な環境で文句が言えない悪循環が生まれてしまうのです。

従業員の教育がパワハラ

ブラック企業は、離職率の高さから、在籍期間だけの判断で出世の道が用意される場合があります。上司となる裁量がなくても、教育係というポジションに就く。そうすると人は、権力を武器に理不尽なことを言い出します。さも会社の文化であるかのように、「終わらないなら残業してやれ」などと言われます。

社是などには「やればできる」「仲間」などのフレーズが出てくることでしょう。

従業員の教育がパワハラ

ブラック企業あるある

  • 長時間労働で、休日は寝るだけの日々。気付くと友達がいなくなります。
  • 残業があることは前提。だが定時にタイムカードを切らされる。タイムカードの無い企業も。
  • 朝の掃除で定時より早く出社。求人情報掲載の労働時間とは別、ということを入社して知ります。
  • 天候不順、電車の遅延、何であれ遅刻は認めない。それらも見込んで出社するのが当然とされます。
  • 月の正規勤務時間より残業時間が多い。「正規」とは何なのでしょうか。
  • 上司に相談しても、しなくても、怒られる。理不尽そのものです。
  • 飲み会が多すぎる。
  • 有給が取りづらい。自分の仕事を誰にも任せることができません。
  • 会社が家族経営。社内で怒号が飛び交います。
  • 3年で古社員の仲間入り。アルバイトで名刺がもらえる会社もあります。
  • 定年退職者がゼロ。大手企業でもあることです。
  • 飲み物が飲ませてもらえない。昭和の時代に、水を飲ませてもらえない運動部がありました。
  • 備品は自腹。ボールペンやファイルくらいならまだしも、共有部分の備品まで。
  • トイレは許可制。トイレでのスマホ利用にご注意あれ。
  • 〇日連勤を自慢げに語る社員。笑いで一蹴されます。
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ブラック企業リスト

2017年5月、厚生労働省が「ブラック企業リスト」なるものを発表しました。リストには、労働基準関係法に違反したという疑いで送検された企業が、公表から約1年間掲載されます。

ブラック企業リスト

厚生労働省が発表!ブラック企業リスト

令和元年5月31日更新分、東京労働局の公表分に絞って見ていきましょう。

送検された会社名 違反内容
(株)イーエスピー 労働者8名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの
(株)不二興建 休業約2か月間の労働災害が発生したが、遅滞なく労働者死傷病報告書を提出しなかったもの
宿利工務店(株) 休業約3か月間の労働災害が発生したが、遅滞なく労働者死傷病報告書を提出しなかったもの
(株)リバイブ 車両系建設機械(ブレーカ)を用いて作業を行わせるに当たり、主たる用途以外の用途に使用させていたもの
(有)奥原工芸 木材加工用丸のこ盤を使用させるに当たり、歯の接触予防装置を設けないで使用させていたもの
ジャパンプロテクション(株) 労働者4名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの
(株)大和建設 高さ約3mの2階開口部で、手すり等を設けることなく労働者に作業を行わせたもの
(株)大実製作所 NC旋盤機を用いて作業を行わせるに当たり、回転部分に、覆い、囲い等を設けないで使用させていたもの
高田電設(株) 土止め支保工の構造について、地山に係る形状、地質等の状態に応じた堅固なものとしていなかったもの
(株)Ogawa Tec. 高さ約3mの作業床で、手すり等を設けることなく労働者に作業を行わせたもの
(有)新宿丸正野邊 労働者1名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの
タストン・リサイクル(株) 機械の運転を停止することなく労働者にコンクリート破砕機の歯の調整作業を行わせたもの
(株)栄伸建設 高さ約3mの作業床に手すり等を設けることなく請負人の労働者に使用させたもの
泉流通(株) 労働者2名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの
(株)大東運輸 ベルトコンベヤーのベルト及びプーリーに、覆いや囲いなどを設置することなく労働者に作業を行わせたもの
リペア(株) 高さ約6.5mの屋根上で、防網を張り又は安全帯を使用させることなく労働者に作業を行わせたもの
(有)チガセ工作所 今井工場 プレス機械に安全囲い等を設ける等の措置を講じなかったもの
村松機工運輸(株) 貨物自動車からの荷卸し作業を行わせるに当たり、当該作業を指揮する者を定めていなかったもの
(有)村石製作所 クレーンで鉄板を移動する作業を行わせるに当たり、つり上げられた荷の下に労働者を立ち入らせたもの
(株)アルファ防水工業 高さ約4mの高所作業車上で、安全帯等を使用させることなく労働者に作業を行わせたもの

引用元:労働基準関係法令違反に係る公表事案(掲載日:令和元年6月28日)|厚生労働省基準局監督課

リストだけでは分からない大手企業の例

長時間労働以外に、安全基準が守られていない違反も目立った上記のリスト。労働基準法を軸に判断されているものですが、ブラック企業の事例は他にもあります。「ブラック企業大賞」というサイトでは、毎年ブラック企業の投票を受け付けています。

例えば、労災死亡事故の他、労働組合員差別を行った(株)プリントパック。逮捕・略式起訴される元従業員の暴力行為やブラックバイトとされた、DWEJAPAN(株)(「しゃぶしゃぶ温野菜」FC企業)。日本郵便(株)は、パワハラによる従業員の自殺、理不尽に課されるノルマもあります。

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自分の会社はブラック企業?

あなたの働いている会社がブラック企業か、チェックリストで診断してみましょう。

自分の会社はブラック企業?

ブラック企業の見分け方

以下、1つや2つは当てはまる企業は多いはずです。5つ以上当てはまれば、ブラック企業でしょう。

チェック項目

  • 早朝出勤や深夜帰宅
  • 休憩時間ナシ
  • 上司が帰るまで帰れない
  • 年間休日が100日前後
  • 忌引きなどの理由問わず有給が使えない
  • 月60時間超の残業時間
  • 人により作業ボリュームが違う
  • 残業代込みのお給料
  • 残業時間は自己申告制
  • 人や世代別で昇給額がバラバラ
  • 基本給より時間外手当てが多い
  • 実費負担の勉強会や飲み会が強制的
  • 役職に就いて初めて給料が上がる
  • 役職手当ナシ
  • 教育期間ナシ
  • 30歳以上の従業員が少ない
  • 未婚者ばかり
  • パワハラ、セクハラがある
  • 資料などで叩かれたり平手打ちなどの暴力
  • プライベートを干渉される
  • 従業員の報告、連絡、相談がない
  • 福利厚生なし
  • ボーナスは何年もなし
  • 入社当初に聞いた話と違う業務内容
  • 社訓、社是の唱和を朝礼などで行う
  • 駐車場が自己負担
  • 毎日人材募集している
  • 役職名が付いている従業員が多い

自分の能力がないからと決めつけていない?

会社の方針が社会一般のルールと思い込み、それに対応できない自分を、能力が足りないのだと決めつけてはいませんか。会社がブラック企業だと気づいていないだけかもしれません。

例えば、通勤時に災害発生を望んだり、帰宅時も明日の仕事について考える。自己啓発本に手を出したり、意味なく泣きたくなる、求人サイト名などの名前を聞くと心が揺れるなどの場合は、勤めている会社がブラック企業の可能性があります。

ブラック企業を訴える?

ブラック企業を許せなくなった場合、またどうしていいか分からなくなった時は、どう対応をしたらよいのでしょうか。

ブラック企業を訴える?

まずはハローワークなどに相談

ハローワークや警察などに相談しましょう。税金関係は税務署に。給料が払われない場合は、労働基準監督署に申告しましょう。申告は告訴ではないので、対応を依頼することになります。

ブラック企業を告訴する前の心構え

告訴は、犯罪があったことを報告するもの、かつ処罰を求めるものです。しかし、捜査機関はなかなか動きません。受理されても、被疑者の改善の余地を考慮して、起訴猶予になることもありえます。労働に関する問題は、あまり重要視してもらえないのです。

それでも告訴するならば、ブラックな扱いを受けた日時や内容を記録しておきましょう。写真や録音、日記も有効なので、退職前に証拠を確実に揃えましょう。

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ブラック企業の辞め方

ブラック企業の辞め方と、ブラック企業に転職しないためにはどうすればいいのでしょうか。

ブラック企業の辞め方

引き止められても絶対戻らないか冷静になって考えよう

ブラック企業に勤めていると、ストレスフルの状態で難しいですが、できれば冷静になって、以下の項目を書き出してみましょう。頭の中が整理されます。また、辞める理由は断定しておきましょう。会社にその問題を改善され、「やっぱり続けます」と言うのもよりギクシャクします。引き止められても揺れ動かない決意をしてから、退職願を出しましょう。

  • 今の職場で改善できることは絶対ないか
    気になることは上司に相談。自分の提案が上司に受け入れられない、そうして初めて退社を決断しましょう。
  • 会社を辞めようと思う理由
    給料のことなのか、労働環境か、はたまた人間関係か。
  • 自分ができることは何か
    得意分野、資格、職歴など、自分の能力がどう発揮できるかわかっていますか。
  • 次の職場のイメージ
    現実的に通勤から待遇、社風、仕事内容、自分の能力に合うかなどを考えましょう。
  • 辞めた後のイメージ
    辞めたら生活費はどうするのか、再就職までの期間についてなど。

我慢して退職日を1ヶ月以上先に設定しよう

我慢して退職日を1ヶ月以上先に設定しよう

ブラック企業でも、即日退社するのは人としてNG。会社の就労規則に従って退職願を提出しましょう。一般的に、引き継ぎ有給消化、転職活動の余裕を持って、1ヶ月以上先に退職日を設定したいものです。退職届を提出する際に、有給消化の希望も伝えましょう。

有給休暇の取得は、労働基準法でも定められています。会社をすぐ辞めたいという方は、民法を携えておきましょう。民法627条によると、退職希望日の2週間前に退職願をつきつけても、問題がないことがわかります。

民法627条

  1. 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
  2. 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
  3. 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

引用:電子政府の総合窓口e-Gov

求人で見るブラック企業

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労働時間は、やんわりと質問してみましょう。「英会話に通っていて」「子どもの送迎で」などと理由をつけると聞きやすくなります。会社のアピールができないブラック企業は、「勢いがある」「アットホーム」「情熱」などの言葉が使われることがあります。「年齢不問・未経験歓迎」などは体力を要するなどの意味になるでしょう。

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どこの企業でも、創設間もない頃の苦労があって今があります。労働時間だけではブラック企業とは判断できません。労働基準法によって社員が守られているのであれば、辞めさせたくても辞めさせられない現象も起こりえます。それが能力評価ではない年功序列です。

今回、労働基準法を元に考えていきましたが、それに頼りすぎるモンスター社員が増えても困ります。これからは、一人ひとりが大切にしたいものを見極め、多様性を尊重することが大事になるでしょう。

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