臨床心理士は心の問題を解決に導いてくれる仕事!なるための必須資格と7つの活躍の場とは

うつ病などの精神疾患から不登校問題まで、幅広い人の悩みを聞きサポートしていく専門職、臨床心理士という仕事があります。人と向き合う臨床心理士とは、どのような仕事内容なのでしょうか?またカウンセラー、心理士、2017年にできた公認心理士との違い、給与のことなど気になることについて探っていきたいと思います。

臨床心理士とはどんな仕事なの?

臨床心理士は、人の心の中がわかり、悩みの答えをズバリ言い当てる仕事ではありません。人の心をわかるようになるのは、専門的に勉強し研究してきた専門家でも難しいことです。臨床心理士は、精神疾患の人たちや心に問題を抱えている人が、どのようにしたら日常生活が送れるようになるのか一緒に考えたり、問題行動が起こらないようにするために援助したりする仕事です。臨床心理士は精神科医とは違うため、治療に必要な投薬や処置を行うことはありません。

臨床心理士・カウンセラー・心理士の違い

心理専門の仕事には、いろいろな呼び名がありますが違いはなんでしょうか?心理専門職にはさまざまな民間資格があるため、呼び名が変わってきます。ただ、たくさんの呼び名がありますが、この資格を取得していないとできないという業務はありません。民間資格の中で最も信頼がおかれているのは、臨床心理士です。臨床心理士は臨床心理士資格認定試験に合格して、はじめて臨床心理士と名乗れるのです。

  • カウンセラー
  • 心理療法の一つである「カウンセリング」を行います。資格はありません。

  • 心理士
  • カウンセリングだけでなく多くの心理療法や心理テストも行います。資格はありません。

  • 臨床心理士
  • 基本的に心理士と同じことをします。民間の資格である臨床心理士資格認定試験に合格しているので、臨床心理士を名乗ることができます。民間の資格の中では、最も信頼がおける資格となっています。スクールカウンセラーは、臨床心理士の資格をもっている人が任用されます。

臨床心理士の年収はどのぐらい?

平均約300万~400万円ぐらいです。非常勤のアルバイトの場合は、高額なものもあります。例えば、スクールカウンセラーは週に1~2回ほどしか入れませんが、東京都だと時給は5,500円程です。

臨床心理士になるにはどうしたらいいの?

臨床心理士になるには、民間の資格である臨床心理士認定試験に合格する必要があります。その試験の受験資格や試験内容を紹介します。

必要な資格はどんなもの?

公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する資格試験に合格することが必要です。5年ごとの資格更新制度が定められています。

臨床心理士資格認定試験

臨床心理士資格試験の合格率は、毎年6割ほどです。本試験はマークシート試験、論述記述試験の一次試験、そして面接を行う二次試験の2つに分かれています。

受験資格を得るための7つの方法を知ろう

受験資格は、協会が定めた受験資格基準のいずれかに該当することが必要です。また、これらに関する所定の必要書類を提出することが条件になっています。以下7つの受験資格基準を示します。

1.本協会が認可する第1種指定大学院(修了後の心理臨床経験不要)を修了し、受験資格取得のための所定条件を充足している者
(「新1種指定校」という)

2.本協会が認可する第1種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している者
(「旧1種指定校」という)

3.本協会が認可する第2種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している者
(「新2種指定校」という)

4.本協会が認可する第2種指定大学院を修了し、修了後2年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している者
(「旧2種指定校」という)

5.学校教育法に基づく大学院において、臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床に関する分野を専攻する専門職学位課程を修了した者
(「専門職大学院」という)

6.諸外国で上記1. または3. のいずれかと同等以上の教育歴および日本国内における2年以上の心理臨床経験を有する者

7.医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を有する者
引用:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会

臨床心理士の7つの活躍の場とは

医療・保健分野で働く

精神神経科・心療内科・小児科などでは、医師の依頼を受けて患者様やクライエントの心理的支援行います。保健分野では、精神保健福祉センターや保健所などがあり、地域住民の健康管理や相談に携わります。

教育分野で働く

公立の小学校、中学校、高等学校には、スクールカウンセラーとして配置されています。不登校の生徒、集団行動が苦手な子どもの面談、保護者の相談などに対応します。教室ではどのように友達や教師が関わればよいのか、支援員をどのように配置するのか等相談して決めていきます。

福祉分野で働く

子育てでの悩み、子どもの発達相談や子育てについての相談に応じます。DVや虐待などの相談、支援にも携わります。

大学・研究機関で働く

臨床心理学の講義、研究活動を行います。臨床心理職の養成も行います。

司法・矯正・警察分野で働く

家庭裁判所、鑑別所、刑務所などで公務員として働きます。警察では犯罪被害者への支援や、非行に関する相談に応じます。

産業・労働分野で働く

臨床心理士は、メンタルヘルス支援専門家として企業に対し助言・指導をし、労働している人の心のケアをしています。

私設心理相談で働く

臨床心理士が、個人や組織で運営している機関です。いろいろな心理的悩みについて相談に対応し、援助していきます。

気になる仕事内容とは?臨床心理士の専門性4分野の紹介

クライエントの特徴や特性を見定める心理査定

心理査定とは、その人の特徴や特性にはどのようなものがあるのか、ということを見定めていきます。心理テストを使って発達の特徴をみたり、パーソナリティーテストを用いて性格的特徴を見ることがあります。心理テストをするだけでなく、どのようなことがあって今の状態になっているのかを見定めることでもあります。

クライエントと対話して向きあう心理面接・心理療法

心理療法とは、カウンセリングだけを指すのではなく、認知行動療法や心理教育などの手法も入ってきます。医療分野・司法分野・産業分野では心理療法を行うことが多く、福祉分野・教育分野では心理療法を行うことは少なくなります。

所属しているコミュニティに対して援助する地域援助

この地域とは、人と人が集まるコミュニティのことを指します。例えば、学校、会社、居住地域、友達同士の集まりなどもすべて地域です。クライエントが所属している一つひとつの地域に対して、心理学的な知見を用いて援助することが地域援助です。

スクールカウンセラーがスクールカウンセリングを行うときに、最もよく行うのが地域援助になります。学校現場では、心理療法と同じくらい地域援助の考え方が重要になってきます。

心理臨床実施に関する研究

臨床心理士が実践の現場で学んだことの研究や調査、論文を発表します。臨床心理学は他の分野より新しい学問なので、研究をして発展させていくことが必要になってきます。

臨床心理士か公認心理士どちらを目指すのか?

2017年9月に公認心理士法が施行されました。日本で初めて、心理専門職の国家資格が制定されることになります。今まで心理専門職は、民間の資格しかありませんでした。一番信頼がおける民間の資格は、財団法人日本臨床心理士資格認定協会の臨床心理士資格認定試験でした。ここで、臨床心理士と公認心理士の違いを紹介します。

心理専門職が国家資格になった!

日本には、心理専門職の国家資格がありませんでした。心理的な支援が必要であると認識されるようになっていましたが、それでも民間の資格しかなく、さまざまな名称があり業務内容が一定していなかったのです。しかし、心理的な支援を必要とする人や、心理専門職が待ち望んだ国家資格が生まれようとしています。

国家試験が2017年9月に施行され、2018年9月には第1回目の試験が行われる予定です。その数ヶ月後には、公認心理師の第1号が誕生するでしょう。公認心理師は民間の団体や個人だけではなく、国の認定基準によって心理学に関する専門的知識や技術が保証された心理専門職であるといえます。

今後は、心理専門職の多くを公認心理師が占めることになると予想されます。国家資格なので、教育、保健医療、福祉の分野を中心として、非公認の心理士と比べて優先的に任用されるものと考えられます。

  • いつから施行される?
  • 2017年9月15日に、公認心理師法(平成29年法律第68号)が全面施行されました。

公認心理師と臨床心理士の違い

公認心理師は、臨床心理士が国家資格になったものではありません。以下は主な違い4つと比較表です。

  1. 公認心理師は名称独占が認められた心理専門職の国家資格です。
  2. 公認心理師は実務家としての性質が強いため、研究・調査の業務はありません。心の健康教育が業務に明記されています。
  3. 公認心理師は、1度取得すれば生涯保証される資格となっています。臨床心理士は5年ごとの更新が必要で、維持コスト(職能団体や学会の会費等)もかかります。
  4. 公認心理師は、文部科学省と厚生労働省の共管による国家資格なので、臨床心理士に比べて就職では優先的に採用されるかもしれません。
 公認心理師臨床心理士
資格種類国家資格 
(文部科学省・厚生労働省)
民間資格
(公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会)
名用使用名称独占(公認心理師法)実質的な名称独占(商標登録)
職種心理専門職心理専門職
認定開始年2018年1988年
登録者数29,482名(2016年4月1日時点)
受講費用受験手数料28,700円
登録手数料7,200円
審査料30,000円
資格証明書の交付手続き料50,000円
基本となる学歴大学及び大学院(もしくは実務経験)臨床心理士指定大学院
養成カリキュラム心理学全般から医学まで医療機関での実習が必須臨床心理学が中心
試験内容筆記試験(マークシート)筆記試験(マークシート・論述)及び口述面接試験
業務1.心理アセスメント
2.心理相談
3.心理コンサルーション
4.心理教育
1.臨床心理査定
2.臨床心理面接
3.臨床心理的地域援助
4.臨床心理的研究・調査
主な職域1.保健医療
2. 福祉
3.教育
4.司法・犯罪
5.産業・労働
1.医療・保険
2.教育
3.福祉
4.大学・研究所
5.司法・法務・警察
6.産業・労働
7.私設心理相談
責務法的義務
(秘密保持や連携等)
倫理綱領
資格更新なし
(終身保障)
5年ごとの資格更新制
(更新費用20,000円)

出典:高校生にもわかる「公認心理師」入門講座 長江信和 2017年一般社団法人日本遠隔カウンセリング協会 No.146

経過措置はあるの?3つの特例紹介

  1. 公認心理師法の施行日時点で、大学院に在籍している人、または、すでに大学院を修了した人(公認心理師附則第2条第1号・第2号)
  2. 既存科目の読み替えが大学院の裁量によって行われます。従来の開講科目名は大学院によって異なるので、公認心理師カリキュラムを満たせるかどうか大学院の事務に相談してみてください。

  3. 公認心理師法の施工日時点で、大学に在籍中の人、またはすでに大学を卒業した人(公認心理師附則第2条第3号・第4号)
  4. こちらも1同様、既存科目の読み替えが大学の裁量によって行われます。従来の開講科目名は大学によって異なるので、公認心理師カリキュラムを満たせるかどうか大学の事務に相談してみてください。

    その上で、公認心理師カリキュラムを整えた大学院に進学して必要な科目をすべて修めるか、文部科学省・厚生労働省のプログラム認定施設で2年以上の実務経験を積めば、受験資格を得ることができます。

  5. 公認心理師法施工前から心理業務に就いていた場合(公認心理士法附則第2条第2項)
  6. 文部科学省と厚生労働大臣が指定する講習会の過程を修了すれば、受験資格を得ることができます。この特例は、公認心理師法の施行後5年限りの経過措置です。学歴や資格は問われず、2022年9月14日までに実務経験が5年に達すれば、認められるようです。

参考:厚生労働省

資格創設時の不利益を抑えるために、学生や現任者には一定の経過措置がとられるのです。現在の自分に該当する受験資格ルートを調べるには、判定サイトがあります。ぜひ活用してみてくださいね。
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臨床心理士とは専門性4分野からの問題を援助する仕事

臨床心理士の仕事は、心の問題を抱えて助けを必要とする人を援助する仕事です。心の問題は多種多様で、はっきりと答えがあるものではありません。また、知識だけで解決できるものでもなく患者さんと向き合える強い精神力が求められます。「自分本位」では意味がなく、サポートを必要とする人達に寄り添い、助けたいという気持ちが大切です。

ただ、人の心と向き合うというのはとても難しく、辛くなってくることもあるかと思います。どうすれば患者さんの心を救うことができるのかを理解していくために、今後も臨床心理学の研究を続けていくことは重要になってくるでしょう。心理職の中でも信頼と実績のある臨床心理士は、専門性や経験から多くの分野から期待されることが多いと思います。臨床心理士は人のためだけではなく、自分のためにも成長し続けることができる仕事といえるでしょう。

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