言語聴覚士は話す・聞く・食べるのリハビリをサポートする!国家試験の合格率と気になる給料について

医療の中で、リハビリを行う仕事は理学療法士や作業療法士が有名です。その他にも、人が生きていく上で必要な、話すこと・聞くこと・食べることのリハビリをサポートする「言語聴覚士」という仕事があります。今回は「言語聴覚士」についての仕事内容、なるために必要な資格取得のこと、学校や国家試験の合格率のことについて、お話したいと思います。

言語聴覚士の仕事

言語聴覚士の仕事内容

「話す」「聞く」「食べる」という行為は、私たちが普段何気なくしているものですが、生まれつきの障害や事故、病気でこれらのことが不自由になる場合があります。言語聴覚士はことばのコミュニケーションに不自由がある方、食べること飲み込むことに不自由がある方へリハビリテーションを行う仕事です。

言語聴覚士のことを、英語では「Speech-Language-Hearing Therapist」というので、それを略して「ST」とも呼ばれます。言語聴覚士の仕事は多岐に渡ります。それぞれの障害によってどのような対応をしているか、仕事内容をご紹介いたします。以下の仕事を理学療法士や医師とコミュニケーションを取りながら、進めていきます。

  • 【聞こえ】の障害
  • 聴覚障害がある方へ、検査・訓練・補聴器の使い方などのサポートを行います。まずは聞くことに不自由がある方の原因が病気によるものか、心因性の要因によるものかを探ります。原因によって、一人ひとりに合った訓練方法を考えて行います。

  • 【話す】の障害
  • ことばの障害については、流暢に話すことが難しい「吃音(きつおん)」や、舌や唇、声帯のどこかに障害があるためにうまく言葉を発音できない「構音障害」があります。このような患者さんには、舌や唇の動かし方の訓練や発音や呼吸の仕方を練習したりします。

    また、子どもの発達の過程で「ことばの遅れ」に対してサポートすることもあります。子どものことばの遅れは、対人関係によるものか知的発達の遅れなのか、または脳に損傷を受けたものなのか、によって対応の仕方を変えます。コミュニケーションをする楽しさに関心を持ってもらうなどしながら、ことばを獲得する手助けをします。成人の言語障害には「記憶障害」「失語症」「認知症」によるものがあります。事故や病気によって、ことばが上手く出てこなくなってしまった方へ訓練をします。

  • 【食べて飲み込む】障害
  • 人はものを食べる時に、食べ物を噛んで舌を使って喉の中に飲み込みます。しかし、障害によって食べ物を上手く飲み込めない方がいます。これを「摂食・嚥下(えんげ)障害」と言います。この障害の原因を突き止め、食べ物を噛んで飲み込むために必要な期間の訓練を行います。

言語聴覚士の1日の流れ

時間帯主な業務内容
ミーティングに参加します。このミーティングはとても重要なものです。その日の患者さんの情報を理学療法士や作業療法士とともに共有します。
午前中の治療・訓練事前準備をして、リハビリ・訓練を始めます。失語症の患者さんには、カードに描かれた絵の名前を言う訓練などをします。摂食・嚥下障害のある方には水やゼリーなどを使用して、ものを上手く飲み込めるよう訓練をします。
昼休み午前中のリハビリ・訓練が終了したら昼休みです。しっかり食事を摂って午後の訓練に備えます。リハビリや訓練は体力も精神も使います。昼休みは心身共に休憩を取ります。
午後の治療・訓練午後のリハビリ・訓練を開始します。構音障害がある人には、言語聴覚士の口の形を真似して発音練習や、声を出す訓練をします。このように、障害やその人に合わせた訓練をします。終わった後は、その日に訓練した患者さんについて記録をつけます。訓練方法とその日の効果など、次に訓練をする人が分かりやすいように記録します。週に1日ほど、勉強会が開催される病院もあります。

言語聴覚士の給料

言語聴覚士の給料は勤務先によりますが、平均は月収28万5千円、年収は456万円です。就職に関しては、言語聴覚士が足りない病院が多いため、比較的求人が多い仕事です。

言語聴覚士に向いている人とはどんな人?

  • 観察力のある人
  • 言語聴覚士の仕事は、訓練の中で口や舌の繊細な動きを観察して分析します。問題の解決のために、どのようなことをしたら上手くできるかを観察して導き出さなければいけません。普段から細かい気遣いができ、観察力・分析力がある人は言語聴覚士に向いていると言えるでしょう。

  • 忍耐力と粘り強さがある人
  • 訓練・リハビリは全てがすぐに効果が出て上手くいくものではありません。数ヶ月、数年かけて少しずつ回復に向かっていく場合もあります。患者さんが諦めて投げ出そうとするのを、辛抱強く根気よく励ましながら、一緒に回復に向けて努力を重ねていきます。そのためには、忍耐強くて物事をすぐに諦めない粘り強さが必要です。

  • 向上心を持っている人
  • 医療の現場は日々進歩しています。言語聴覚士が関わるジャンルも同じです。向上心を持って学ぼうとする人ではないと言語聴覚士の仕事は勤まりません。また、言語を扱うためには「脳」についての知識を持っていないといけません。脳は身体の動きに非常に大きな関わりを持っています。

    話す、聞く、食べる、飲み込むなどの動作は脳の指令によるものです。そのため、言語聴覚士は口に関わることだけではなく、脳にも関心を持って学ぶことが重要です。患者さんのために常に学ぶ姿勢を持っている人は、言語聴覚士に向いていると言えるでしょう。

言語聴覚士になるには

文部科学省が定めるカリキュラムがある【大学】で学ぶ

言語聴覚士になるためには、国家試験を受けて合格しなければなりません。国家試験を受験するためには、文部科学省か都道府県知事が認定した学校で学ばなければなりません。その学校は4年制大学や専門学校があります。大学の特徴として、医学の知識の他に一般教養が身につけられるという点があります。

また、4年という学生生活で専門学校よりも長い時間をかけて勉強ができること、学生生活を通して色々な体験ができるという点も大学の特徴です。また、一般の大学を卒業している人は、指定された大学、大学院の専攻科、専修学校で2年学べば国家試験の受験資格を得ることができます。

文部科学省が定めるカリキュラムがある【専門学校】で学ぶ

専門学校でも言語聴覚士になるためのカリキュラムがある学校があります。専門学校の特徴として、専門学校は就職をすることを目的に、専門的に集中して言語聴覚士になるための勉強ができるところです。専門学校では3年間学びますが、大学よりも1年少ないことから、早く社会へ出たい人にはおすすめです。

国家試験を受ける

言語聴覚士の資格を得るためには、文部科学省か都道府県知事が指定した学校で学び、国家試験を受けて合格しなければなりません。合格すると、厚生労働大臣から免許がもらえます。国家試験は年に1回開催されます。試験は毎年2月に行われますので、学校を卒業する前に受験することになります。

国家試験の難易度・合格率は?

言語聴覚士の国家試験は決して簡単なものではありません。医療系の資格はどれもそうですが、在学中にしっかり勉強して国家試験に臨む必要があります。学校によっては、国家試験対策に力を入れているところもあります。合格率は平成28年度の試験では75.9%でした。その前の年は67.6%でした。例年、70%くらいの合格率です。

言語聴覚士のやりがいと大変さ

言語聴覚士のやりがいとは

  • 患者さんの助けができる
  • 言語聴覚士が関わる患者さんは、日常生活を送ることが困難な症状を抱えています。思うように話すことができない、ものを食べることができないのは辛いことです。言語聴覚士は、患者さんの悩みや苦しみを少しでも改善できるよう、手助けをします。患者さんが日常生活を円滑に送れるようにするため、持っている知識や技術を使えることはやりがいにつながります。人の助けになり、患者さんが笑顔を見せてくれたとき、喜びを感じる瞬間です。

  • ものを食べられたときの喜びを与えることができる
  • 人が食事をすることは当たり前のように思いますが、食事ができるのはありがたいことです。食事をすることが困難な人にとっては、自分の口で普通に食事ができることを望んでいるのです。食事支援には補助具を使用して食べ方の練習をしたりします。補助具の使い方や、スムーズに食べられるようになるためのコツは、専門的な知識が必要です。そんな患者さんの思いを叶えるために、患者さんが「食べることの喜び」を感じられるように手助けができることは、やりがいになります。

  • 患者さんの前向きになった姿を見た時
  • 患者さんは突然の病気やケガなどで言葉が不自由になったり、ものが食べられなくなって悲しい思いをしています。リハビリを開始するときは落ち込んで暗い顔をしていた患者さんが、訓練を続けていくうちに少しずつ前向きな気持ちになっていく姿を観た時は、嬉しくなってやりがいを感じます。

言語聴覚士の大変さとは

  • 患者さんとの信頼関係が築けるまで大変
  • 患者さんの中には、自分の状況を受け入れられないため、訓練に前向きになれない人もいます。リハビリ・訓練は本人がやる気を起こさないと前に進めません。患者さんの気持ちを思いやり、寄り添い励ましても、それを受け入れてくれない人もいます。性格も環境も違う人たちに向き合い、信頼関係を築くことはそう簡単ではありません。患者さんが前向きになれるよう働きかけるのは大変なことです。

  • 日々が勉強
  • 医療は日々進化しています。言語聴覚士の知識は幅広く、医療に関することやリハビリに関すること、介護福祉などにも渡る知識が必要です。病院によっては勉強会を定期的に行うところがあるほど、学ぶことはとても多いのです。仕事をしながら勉強もしなければならず、家に帰ってからも本を読むこともあります。

  • 医療の知識だけではなくコミュニケーション能力も必要
  • 言語聴覚士だけではありませんが、リハビリや訓練を通して患者さんとコミュニケーションをとることは大切です。病気やケガで落ち込みがちな患者さんの気持ちをほぐすように優しく話しかけることや、リハビリに前向きになれない患者さんに無理強いすることなく気持ちを前向きにほぐすなど、コミュニケーション能力が必要です。

    また、言語聴覚士の仕事は理学療法士や作業療法士との連携が必須です。医師や看護師たちとも情報交換をして、患者さんの治療方針を決めることが大事なのです。言語聴覚士には医療の知識だけではなく、コミュニケーションも必要です。

言語聴覚士の活躍の場とは

言語聴覚士はどんなところで働いているの?

言語聴覚士の多くは、病院で働いています。大学病院や総合病院、リハビリテーションセンターやリハビリテーション専門の病院で働いている人が多くいます。病院内では検査やリハビリを担当します。他には老人保健施設や特別老人施設、福祉施設で働く人もいます。高齢化に伴い、食べ物を飲み込むのが困難になってくる高齢者へのリハビリを担当することが仕事です。

福祉施設の中では、特別にリハビリの時間を設けていないところもあります。普段の生活の中で言語聴覚士がそばについて、食事の時間に訓練をします。老人施設や福祉施設で働く場合は、リハビリの仕事だけではなく、福祉に関する知識も必要になります。また、発達障害のある子どもをサポートする仕事もあります。この場合は身体の発達に関する知識も必要になります。

言語聴覚士の求人について

言語聴覚士の求人は、理学療法士や作業療法士に比べると多くはありません。しかし、言語聴覚士を必要としている患者さんが多くいます。病院のサイトの求人欄や、インターネットで「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の求人サイト」などの専門サイトがありますので、そこを利用するのもいいのではないでしょうか。

言語聴覚士の将来

高齢化社会が進む日本では、言語聴覚士がますます必要になってくるでしょう。話す、聞く、食べることに関わるリハビリを専門的に行う言語聴覚士は、病院はもちろん、高齢者施設や養護学校などで必要とされます。口腔を扱う分野は、命を守る分野とも言えます。今後、幅広い知識と確かな技術を持つ言語聴覚士が増えることが期待されます。

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